拉ぐ色
君は毛虫で僕は雨
するとアイツは湿った涙腺
君が月なら僕は赤血球
差し詰めアイツは神か虫けら
血中の酸素が溶けていくのを
体温が教えてくれた
身体が保ってきた熱よりも
その歪な冷たさが変に心地好かったんだ
膨大な時間を前にしても
今ならどうにでもなる気がした
誰もが可笑しいと言うけれど
雲を間近に感じたのは
砂の上を泳いだ時の話
頭のあらゆる隙間を
不必要なガスが埋めていく
訃報を伝えるアナウンサーの声が
鼓膜の内側で何度も反響した
そいつの声と
外を走る車輪の音がうるさくて
気づけば涎を啜ることを忘れてる
誰もが遠くで蔑むけれど
それを僕だと知ったのは
寒い夜の急な階段、
冷たいコンクリートの上だった
病的に繰り返すんだ
その時の僕に重い酸素は必要ない
自我を喪失する寸前
そこでは奴が笑ってる
甲高い笑い声で僕を促す
「おい、垂れてるぞ」
あ、
涎を啜るの忘れてたよ
何度だって言うよ
君は君で僕は僕
するとアイツはふざけてこう言う
あの子が白血球ならお前は赤血球
そして俺は例えば人間
瞼の下
瞳の淵
黒眼か白眼
毛細血管
空を仰いで
何をみてる?
ただ冷たいだけの
灰色の地面に
おぼれて。