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渦巻事件

作者: 湯雨都
掲載日:2025/08/14

小学校にはプールの授業がある。

その日は三時間目、四時間目の時間を使い6年生のプールの授業があった。


「おーい!早く並べ!」


僕は着替えるのが遅く、先生に急かされる。急いで着替え、更衣室を飛び出した。

皆はすでにプールサイドに整列していた。僕も列に加わり、全員で準備運動をする。

準備運動をした後はシャワーで体を清める。そして腰洗い槽に入る。


「よおーし!それじゃあプールに入る前にいつもの点呼するぞー!バディーを組め!」


この学校では点呼をするときに二人一組で人数を数えていた。僕は隣にいたやつの手を握る。もちろん並ぶ列は男女で左右に分かれているので隣は男子生徒である。先頭の二人から順に番号を数えていく。僕と隣のやつは先頭から18列目であった。


「じゅうはち!」

「じゅうきゅう!」

「にじゅう!」

「にじゅういち!」


最後尾の21列目の生徒がが先生に報告に行く。


「男子42名全員います!」


「よーし!女子も男子も問題ないな!これから今日の授業の説明をするので南側に集まれ!」


今日はあいにくの曇天で、少し肌寒いくらいだった。説明によると今日の目標はクロールと平泳ぎをマスターすることだ。以前もクロールはやったが未だ25mでさえ泳ぎ切ることができない程、僕はこの授業が苦手だ。

隣に友達の吉田がやってきた。


「お前クロールくらい泳げるようになれよ!」

「しょうがないじゃん。吉田とは体の出来が違うんだよ。」

「おまえ将棋部だもんな。」


そんなことを話してるうちに順番が回ってきた。


「ガンバレよっ。」


吉田のエールをもらい、僕はプールに飛び込んだ。




「ハァ、ハァ、ハァ」


あれから何周しただろう。結局一度もクロールは成功せず練習は終わった。全員が集まり先生の話を聴く。

「えー皆よく頑張った。あと少し時間が余っているから、今日は流れるプールを作ってみよう。みんなプールに入れ!」


「いまから作り方を説明する。まず全員均等にプールの内側に立て。それからできるだけ速くプールの中を壁に沿って時計回りに進むんだ!」


僕たちは先生のいうとおりに動いた。しばらくするとプール全体に時計回りの流れができた。僕は一切動かなくても前へと進む力が働くことに感動し、その力の大きさに少しだけ恐怖を覚えた。


「よーし、もう動かなくていいだろう。」


みんながゆったりと漂っている。


しかし、異変に気が付いたのは僕の近くにいた男子生徒だった。


「なんかはやくなってない?」

「ほんとだ。速くなってる。」


誰も動いていないのにも関わらず、プールは次第に時計回りに速くなっていった。


「おい!誰か動いてるだろ!動くな!」


先生の注意にもかまわずプールはさらに加速する。なにか異常が起きていることに気づいた先生は他の先生も呼び僕達にすぐにプールサイドに上がるように呼び掛けた。その頃にはもう、プールの中心には渦のようなものが出来上がっていた。曇っているせいか水が真っ黒な濁流のようだった。


「はやく上がれ!神田先生は西側をお願いします!」


僕はまだプールの中にいた。流れが速すぎて壁につかまることができなかったからだ。周りを見ると生徒たちが先生によってプールから引き上げられていた。僕の体はさらに壁際からとうのいていく。腕をのばしても壁をつかめない距離まで来てしまった。


「誰か!!」


そのとき太い手が僕の腕をつかんだ。神田先生だ。先生に引きずられてプールサイドまで引き上げられる。ふいに、後ろからだれかの声が聞こえた気がした。


「ハァ、ハァ、ハァ」


僕は荒い息使いをしながら、お礼を言おうと思い神田先生を見た。しかし、先生はなにか恐ろしいものでも見たように目を大きく開いて、プールの中を凝視していた。

幸い僕が最後だったようで、一旦点呼をしてから情況を確認するようだ。

渦は今も回り続けていた。


「素早くバディーを組め!」


僕は今回前から3列目だ。前から順に数え始める。しかし、なにやら後ろの方が騒がしい。


「じゅうはち!」

「じゅうきゅう!」

「にじゅう!」


そこで声が途切れた。おかしい。男子は42人。21組のバディーができるはずだ。先生は慌てて最後尾に走っていった。


「おい木村!バディーはどうした!」

「みつからないんです…先生、一人足りません。」


先生は焦った様子で生徒全員に問いかけた。


「おい!皆!友達や知ってる子でいないやつはいないか!」


僕はまっさきに吉田を思い浮かべた。

そうだ吉田。吉田はどこだ?

僕は周りを見渡した。でも、いない。吉田だけがいなかった。


「先生!吉田がいません!」

「本当か!おい!吉田―!!」


吉田から返事はなく、先生たちは吉田を探した。しかし、日が暮れるまで結局、見つからなかった。


その事件はニュースにも取り上げられ話題になった。小学生男児失踪事件として。

声のでかい先生はこう話したそうだ。


プールの中を何回も探したが、みつけられなかった。授業中に抜け出して外に出た可能性が高いのではないか、と。


しかし、僕はあの事件の直後、神田先生に話を聞きに行っていた。


「先生、プールの中でなにか見たんですか?」

「君は、吉田君の友達か…。じゃあ、話さないとね…。今でも信じられないが、実はあの時、二つ恐ろしいことがあったんだ。

一つはプールの底に足がつかなかったことだ。私の身長は180cmだ。普通は足がつかないなんてこと、ありえないんだよ。もう一つは、プールの底に黒い人型のようなものが生徒と一緒にいるのが見えたんだ。

それを見た時、パニックになってしまってね。君を引き上げるので精一杯だった。吉田君を助けることができなくて、本当にごめんなさい!」


それ以降先生たちがどうなったかは知らない。


吉田が何処へ行き、僕たちがいったいナニを呼び出してしまったかは今もわからないままだ。




午後のニュースです

今日午前10時ごろ○○県の○○町で男児の白骨化した遺体が発見されました

遺体は○○水神社近くの川に遺棄され、現在警察の調査が進んでいます














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