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糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校2年生

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74/150

第74話「待っている時間も、きっと物語」

 午後の陽が、部室の窓からやわらかく差し込む。


 学校生活は、いつものように続いていた。教室、廊下、チャイムの音。だけど、その合間にふと、誰かの指先が止まる。


「……届かないね、まだ」


 さゆりが糸を引きながら、ぽつりとつぶやく。


「うん。でも、もうちょっとかな」

 いとが答える。明るく返したつもりだったけど、その声に含まれる微かな緊張は、自分でも気づいていた。


 律は部誌の整理をしていて、ふと一枚の写真に手を止めた。そこには、合宿中の4人が写っていた。

「……なんか、夢だったみたい」

「でも、ちゃんと縫って残ってるじゃん」

 希音が笑って、少しだけ照れたように目をそらした。


 ──待っている時間。


 それはただの空白じゃない。

 部室に流れる空気も、交わされる何気ない会話も、刺繍の針を動かす手のリズムも。

 ぜんぶ、まだ続いている“わたしたちの物語”の一部だ。


 いとは心の中で、そう静かに思っていた。


 


 放課後。4人はいつもの道を歩く。


 沈む夕日が遠くの山影に落ちていく。街灯が灯り、空に星がひとつ、またひとつ浮かび始める。


「ねえ、明日も、部活やる?」

 律が聞いた。


「……やろっか」

 いとが言う。自然と、みんながうなずいた。


「針、持とう。いつも通りに」


 その言葉に、誰も特別な意味をつけなかった。ただ、それが必要だと、肌でわかっていたから。


 空を見上げると、星がひとつ、瞬いていた。


 待っている時間さえも、きっと未来につながっている。


 ――まだ終わっていない。

 むしろ、始まっている。

 物語の、次の章が。

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