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糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校1年生

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第36話「クリスマス交換会」

年末の午後、寒さが一段と増した放課後の部室。

カーテン越しの冬の日差しが、柔らかく机の上に落ちている。


今日は、年内最後の活動日。

手芸部の三人だけの、ささやかな「クリスマス交換会」。


条件はひとつ。

「自分で作った、小さな手芸品をひとつ持ち寄ること」


「じゃあ……開けてみようか」


少し照れたように、まどかが言った。


まず、いとが取り出したのは、淡い糸で草花模様を刺繍した布のブックマーク。

さゆりの好きなクラシック小説のタイトルが、そっと刺されている。


「……これ、あのとき言った本だよね?」

「うん。さゆり、よく読んでるから」

「ありがとう。大事にする」


次は、さゆりの番。

差し出したのは、フェルトで作られた手のひらサイズの針山。

上には小さなビーズがちりばめられ、まどかの好きな空色がアクセントに使われていた。


「かわいい……! しかも実用的!」

「まどか、すぐ針転がすから、これ使って」

「むっ……でも、嬉しい!」


最後に、まどかが手渡したのは、手縫いの小さなポーチ。

外布にはいとの好きな刺繍糸が入るサイズにぴったりな工夫がされていた。


「これ……中、仕切りまである……」

「いとの針、よく迷子になるからね」

「……うう、優しい……ありがとう」


三人とも、渡したものも、受け取ったものも、どこか照れくさそうにしながら、でもずっと手を離さずにいた。

まるで、それぞれの“想い”が、目に見えるかたちでそこにあるようで。


帰り道、雪がちらつく中庭。


「また来年も、刺そうね」

まどかのその一言に、二人はうなずいた。


いとは、真っ白な空を見上げる。

糸みたいに細く降り続ける雪を見ながら、心の奥で静かに誓った。


「うん。もっと上手になって、もっと誰かに届けたい」


部室の棚には、そっと三つの手芸品が飾られていた。

色も、形も、つくった人の個性がにじみ出ている。


それらはただのプレゼントじゃなかった。

三人の手で縫い取られた、温かな絆のしるしだった。


モノローグ:


あのときの小さな交換会。

手のひらに収まる作品たちが、私たちの心をつないでいた。

きっとまた、来年も縫い続けられる。

わたしたちの“ことば”を、糸にのせて。

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