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糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校1年生

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第33話「冬の光を縫う」

窓の外、木々の枝に朝日が淡くかかる。教室の空気が、いつもより静かに澄んでいる気がした。


「ねえ、いと。冬のアート週間、出るんだって。展示スペース、手芸部にも来たよ!」


まどかが部室のドアを開けて飛び込んでくる。手にはプリントと、ほんのり白い息。


「……展示って、校内のやつ?」


「うん。図書館の前の廊下に、小さな作品展。来週から設営なんだけど、希望団体に場所が割り振られるんだって」


いとは、まだ温もりの残るマグカップを手に、そっと頷く。


「せっかくなら出たいよね。なんていうか、秋の文化祭は“全力の展示”だったけど、今度は……“静かな光”って感じがするかも」


その言葉に、不思議といとの胸がきゅっと鳴った。


静かな光。冬の展示。

それって、どんなものを刺せばいいんだろう?


「冬の光、って……ねえ、まどか。光って、寒い?」


数日後の放課後、部室のテーブルには銀色の刺繍糸が巻かれていた。繊細な糸は、白い布の上で柔らかくきらめく。


「うーん……冷たいけど、優しいかな。しんとした朝に、窓辺で光る霜みたいな……そんな感じ?」


まどかの表現に、いとはふわりと笑った。


「そっか。……そういう光、刺してみるね」


図書館で借りた図鑑を開きながら、いとは雪の結晶や、薄明の街並みの写真を眺める。

刺繍枠を両手に持ち、少しずつ、銀糸で雪片の輪郭を縫い出す。


針を刺すたび、静けさが心に積もっていく。


「なんか……」

数日後、出来かけの作品を見つめながら、いとはぽつりとつぶやいた。


「作品づくりって、季節と気持ちが重なるんだね。寒い日に縫った光は、ちょっと寂しくて、でもあったかい」


まどかが、展示用のタイトルカードを作りながら言う。


「それ、すごくいい気づきだと思う。いとの針、ちゃんと今を刺してるんだね」


展示当日。小さな布地に刺された銀の模様が、蛍光灯の下でそっときらめいた。


その光は、誰かの心の片隅に、そっと降る雪のように触れるかもしれない。


モノローグ:


光って、ただ明るいだけじゃない。

寒くて、優しくて、静かで──それでも、そこにいてくれる。

わたし、そんな針を持てたらいいな。

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