表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校1年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/150

第25話「文化祭に向けて始動」

十月、風の匂いが変わった。


校舎を吹き抜ける秋の風が、掲示板のポスターをパタパタと揺らしている。そこに、新しく貼り出された一枚の手描きポスターが加わった。


「手芸部出展決定! テーマ:秋と手仕事の温もり」


どこか温かみのある文字と、色鉛筆で描かれた紅葉とどんぐりのイラストが目を引く。見上げる生徒たちの視線に、いとは少しだけ背中をそらした。


「……貼っちゃったね」


「貼ったねー。これでもう、後戻りはできません」と、まどかがにっこり笑う。


「ま、元から引き返す気なんてなかったけど」と、さゆりが腕を組む。


場所は校内掲示板前。手芸部三人の目の前には、文化祭に向けて動き出した証が、しっかりと残されていた。


「じゃあ、タペストリーの図案は私が担当するね。ワークショップの進行はさゆりで、告知関係は……いと、お願いできる?」


放課後の部室、まどかがホワイトボードの前に立って、手際よく役割分担を決めていく。頼れる部長としての姿がそこにあった。


「……うん。やってみる」と、いとは緊張しながらもうなずいた。


文化祭は、彼女たちにとって初の本格的な“対外イベント”。しかも今回は、展示だけでなく体験型のワークショップも開くことになっている。


テーマは「秋と手仕事の温もり」。秋の景色をモチーフにしたタペストリーと、来場者向けのミニ刺繍体験。準備することは山ほどあった。


「いと、企画書の書き方わかる?」


「ううん、初めて……でも、まどかに教えてもらえたら……!」


「もちろん! 放課後に一緒にやろう。ちゃんとサポートするよ」


「私もポスター用の素材とか、絵の具出しとくね」とさゆり。


三人の声が部室に重なって、まるで柔らかな布地のように織りあがっていく。目の前には、まだ白紙のキャンバス。でも、それが怖くなかった。みんなと一緒なら、少しずつ色を重ねていける気がした。


そして今朝、掲示板にポスターを貼り終えた。


けれど、いとの胸にはひとつ、言葉にならない感情が残っていた。


「……ちゃんと、できるかな。わたし」


「できるよ」と、隣からまどかの声。「いとは一番まっすぐだから、そのままで大丈夫」


さゆりも横目で見ながら、「プレッシャーを感じるのは、それだけ本気ってこと」と静かに言った。


いとは深呼吸して、頷く。


──絶対、成功させたい。


その想いが、小さな不安を押しのけて、胸の真ん中に残った。


ポスターが風に揺れる。秋が、始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ