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第148話「ちゃんと泣けるのは」
卒業式が終わってから、校門前は人の波とシャッター音でいっぱいだった。
友達と笑って、後輩と写真を撮って、先生に呼び止められて――ずっと笑顔を作っていた。
でも、ふと視線の先に、空っぽになった教室の窓が見えた瞬間。
喉の奥が熱くなって、こらえる間もなく、涙がぽろりとこぼれた。
(……あれ、やばい。化粧崩れる)
慌てて袖で拭いながら、心の中でふっと思った。
――ちゃんと泣けるのは、ちゃんとやってきたからだ。
そんな当たり前のことに、今さら気づくなんて。
でも、それでいいのかもしれない。
花束を抱えたまま校門を出ると、律とさゆりが待っていた。
「……行こっか」
「うん」
三人で並んで歩き出す前に、一度だけ振り返る。
青空の下にそびえる校舎が、少し遠くに見えた。
それでも――あの場所で過ごした時間は、ずっと胸の中で近いままだ。




