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第147話「見送りと、見送られる」
体育館の空気は、いつもより少しだけ澄んでいる気がした。
卒業式。壇上から聞く在校生代表の送辞は、思っていた以上に胸に響いた。
「先輩方が残してくださった時間と場所を、大切にしていきます」
その声は震えていて、それでも真っ直ぐだった。
ああ、そうか――。
私もこうやって、何度も誰かを送り、送られてきたんだ。
一年生のときに泣きながら見送った先輩。二年生で、笑顔で送り出した友達。
そして今度は、私が“送られる”番。
式が終わり、体育館の外に出たところで、後輩たちが駆け寄ってくる。
両手いっぱいに抱えた花束。その中のひとりが、涙でくしゃくしゃになった顔で言った。
「さゆり先輩、本当にありがとうございました!」
その言葉の重さに、思わず返事が詰まる。
ぎゅっと花束を抱きしめると、かすかに春の匂いがした。
見送るときも、見送られるときも、やっぱり泣きたくなる。
でもその涙は、ちゃんと前に進むためのものだ――そう思えた。




