表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校3年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/150

第146話「言葉にして渡す」

卒業式の前夜。机の上には色とりどりのカードと封筒、それからお気に入りの黒いボールペン。

 後輩たちに残すメッセージカードを書こうと、私は椅子に腰を下ろした。


 カードの中央に一行目を書く。

「ありがとう」――書いて、ペン先が止まる。

 短すぎる。これでは、ただの形式的な言葉みたいだ。


 息を吐いて、ペンを置く。

 私が受け取ってきたものは、こんな一言じゃ収まりきらない。

 一年のとき、先輩がくれたノート。作業の手順や展示の準備の仕方が、びっしりと書かれていた。二年になって、先輩たちがいなくなった部室で、あのノートに何度も助けられた。

 自分のためだけじゃなく、誰かのために残された“形”――それを手にしたときの心強さを、私は知っている。


 なら、私も同じことをすればいい。

 受け取ったものを、形にして渡す。それが、このカードになる。


 もう一度ペンを取る。今度は、頭の中で後輩の顔を思い浮かべながら、一文字ずつ丁寧に。

 展示の工夫、失敗したときのリカバリー方法、作業を楽しく続けるコツ――思いつく限り全部、短い文にして詰め込んでいく。


 書き上げたカードを並べ、封筒にそっと入れる。

 その動作ひとつひとつが、まるで自分の中に積もった時間を包み込む儀式のようだった。


 明日、渡す瞬間の後輩たちの表情を想像すると、胸の奥が少しだけ熱くなる。

 きっと上手く笑える。きっとちゃんと、届く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ