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第142話「引き継ぐって、作品だけじゃない」
展示当日の午前。
部室では、後輩たちがあわただしく段ボールを運び出し、説明パネルを梱包していた。
私はその横で、部の記録用バインダーを机に広げる。
「えっと、展示のときはね、まず順番を決めてから配置図を描くと早いよ」
「へぇ、そんなやり方あるんですね」
後輩たちの目が、思ったより真剣で、ちょっと背筋が伸びる。
私は去年自分たちが試行錯誤したメモや図を見せながら、一つずつ説明していった。
どうしてその配置にしたのか、来場者の動線の工夫、説明文の置き方……。
「律先輩って、説明すごくわかりやすいですね」
ふいにそう言われて、言葉が詰まった。
別に特別なことをしてるつもりはなかった。
ただ、自分たちが苦労して覚えたことを、残しておきたいだけで。
でも――。
(ああ、形に残るってこういうことか)
作品だけじゃなくて、やり方や考え方も、こうして次の人に渡せる。
バインダーを閉じる音が、ちょっと誇らしげに響いた。




