第141話「最後の展示は、始まりの場所で」
冬の朝の冷たい空気の中、私たちは大きな袋や箱を抱えて校内ギャラリーへ向かっていた。
文化部共用の展示スペースは、窓から差し込む光で白く照らされていて、静かなのにちょっとだけ胸が高鳴る場所だ。
「よし……置くよ、せーの!」
ゆらが笑いながら、自分の卒業制作を机の中央に置く。
その横で、さゆりが丁寧に布を広げ、律が説明パネルを立てる。
それぞれの“未来への贈り物”が、少しずつ形を整えて並んでいく。
ふと、去年の同じ時期のことを思い出す。
初めてこのギャラリーで文化部の合同展示を見た日。
あのときは「すごいな」「私たちも何か作れるかな」って、半分憧れ、半分不安で――。
気がつけば、その“憧れられる側”になっている自分たちがいた。
「去年の私たち、ここから始まったんだよね」
ゆらがぽつりと言うと、さゆりと律も笑った。
「そうだね。……今度は、誰かの始まりになるかも」
展示が始まると、後輩やクラスメイトが少しずつ見に来てくれた。
じっと作品に見入る子、説明文を声に出して読む子、写真を撮ってメモする子。
その一つひとつの反応が、静かな空間を少しずつ温めていく。
“終わり”じゃない。
きっとこれは、また新しい何かのための“はじまり”なんだ。




