表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糸と針と、わたしたち。  作者: 南蛇井
高校3年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/150

第140話「一緒にいると、見えるものがある」

 「ゆら、志望理由書。明日までに出してね」

 担任の一言が、教室にいたゆらの背中を押すように響いた。


 ──志望理由書、ねぇ……。

 頭の中は白紙のまま、放課後の帰り道へ。


 商店街の夕暮れは、もう冬の色だった。

 赤い提灯の下を通り過ぎ、ふと足が止まる。

 雑貨屋のショーウィンドウに、透明なケースに収められた裁縫道具セットが並んでいた。

 色とりどりの糸、ピカピカの針山、コンパクトなハサミ。

 ──これ、部室にあったら便利そう。


 迷わず手に取り、財布を開く。

 「卒業制作の仕上げに、ちょうどいいや」


 部室に戻ると、さゆりと律が机を挟んで何やら熱心に話していた。

 「この縫い目、もうちょっとこうしたらどう?」

 「いや、それもいいけど、この線は残したいな」


 持ってきた裁縫道具を机に置くと、「おおー!」と二人の声が重なる。

 「新品だ! めっちゃ切れ味よさそう」

 「糸もカラフル……どれ使おうかな」


 笑いながら針に糸を通し、三人で手を動かす。

 その空気は、あたたかくて、にぎやかで、なんだか胸がいっぱいになる。


(ああ……私、こういう時間が好きなんだ)

 一人で作るのも悪くないけど、誰かと一緒に、わいわいしながら作ると、もっと楽しい。

 完成品だけじゃなく、この時間ごと、大事にしたい。


 帰宅後、机に向かう。

 志望理由書の一行目に、迷わずペンを走らせた。


「人とつながるものを作りたい」


 それが、今の自分の、いちばん正直な理由だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ