キッカケ
仕事ができない。会社がもう来るなといったから。学校で先生に教えてもらった。仕事をしないとお金がもらえない。食べ物が買えない。家にも住み続けることもできない。僕は知っている。お金が無くても、大丈夫だ。橋を渡れば広大な公園があるし、どんぐりの木とあきらくんと作った秘密基地もある。学校も今より近くなる。と家族にいった。そしたらお父さんとお母さんは笑っていて不安がなくなったみたい。
次の日の朝、僕はいつもより遅く起きて、時間がもう授業が2つやってるぐらい遅刻で急いでお母さんを呼ぶが、返事がない。家を探してもお母さんがいないから仕方ない。ランドセルに教科書を全部入れて学校にいった。先生はしかって、寝癖や目やにをしかった。肩も痛かった。いつもお母さんが時間割りをしてくれてたからどうすればいいのか分からなかった。時間割りのプリントという存在を初めて認識した。今まで時間割りのプリントなんて意識していなかった。お母さんは何で起こしてくれなかったんだろう。
帰りも重いから明日の時間割りで使うやつだけ置いてきた。それでも保険の教科書と道徳が重くて。それも置いてくればよかったと後悔した。肩も足も後ろの腰も痛い。引きずったらお母さん怒るかななんて思ったら橋を渡ってすぐに家に付いた。ドアに鍵がかかってなくて、一瞬どろぼうが潜んでいるのかと思ったら開けっ放しで学校にいったままのことを思い出してホッとした。でも身構える。恐る恐る、リビングえ向かう。家だからランドセルを引きずって。するとお父さんがテレビを観ていた。芸人に笑ってる。お父さん仕事は?と聞いた。そうかもう行かなくていいんだったねと聞きながら昨日の夜のことを思い出した。そうだ、とお父さんにお母さんを今日みたかと聞いた。そしたら、お父さんは笑いながら変なことをいった。お母さんはね、お姉ちゃんと二人で福岡県にいっちゃったんだ。え!、僕もいきたい。ずるい。キッザニアいきたい。だめだ。お母さんとお姉ちゃんとこには行けないよ。それにしばらく2人と会えないよ。なんで、なんで、本当にごめんね、全部俺が悪いんだ。会社が辞めさせたんじゃなくて、自分で辞めたんだ。どういうこと?だから!悪いのは全部俺なんだ!!だから!お母さんとお姉ちゃんはいっさい悪くないんだよ。お母さんはこれから大変なんだ。お前がいったらお母さんの負担になる。な?わかっただろ?お前はこれから俺と二人で暮らして行くんだ。わがまま言うんじゃないぞ。僕は涙いた。もう三年生なのに。溢れて止めようとすればしゃっくりが出て、苦しくて、お父さんは泣くなよとしかった。
僕は毎晩寝床でお母さんが僕を選ばなかったわけを考えていた。もしかしたらトイレが原因なんかもしれない。お母さんはきれい好きで、僕と一緒だと、公園のトイレを使うことになる。公園のトイレは虫が湧いてて、すっぱい匂いがする安心してうんこも出来ない場所。でも外ですればいい。そう思ったけど、お母さんに前、イケメンに裸をみられるのは恥ずかしいか聞くといくらイケメンでも恥ずかしい。といってた。でも僕とお母さんは毎日一緒にお風呂入っているよ?と聞いたらお母さんは大笑いながら、あんたに緊張しないわよ。もしかしたらイケメンだから緊張するのかもね。分かりにくい。どうしていたらお母さんが僕を選んでくれたのか。寝る前にいっぱい考えてもなかなか。それでも僕は答えを作った。何をしても僕を選ばないと思う。お母さんとの記憶を思い返すと僕よりお姉ちゃんとばっかり話してた。江頭くんがはしこを嫌っている話しとか、やよえと一緒に校外に遊びに行った話しを楽しそうにやってたから僕も割って入っていったが2人は、はいはいと言うと面倒くさそうに追い払う。昔は僕の話がつまらないから追い払われるんだと勘違いしていた。そうじゃない僕よりお姉ちゃんなんだ。涙がたくさん出て、でもリビングでお父さんが寝てるからティシュを取りに行けなくて、だから涙も鼻水も垂れて顔にベタベタがついたま目を閉じた。「しね」が頭に浮かんだから言葉にした。言いにくくて「ちね」と言ってしまったから、次はゆっくりと言うとちゃんと「しね」になった。続けて「しね」といったら「しねしねしね」と「ねしねしねしね」に聞こえるまで言い続けていた。
それから起きた朝、僕は洗面台の鏡に写った自分の顔をみて「ブサイクだな」と気がついた。
親が会社をクビになると、いろんなことに気づけるようになりますね!