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第8話 - シタケ村長

息を切らしながら地面に座り込んだカイ、ユウリ、タカシの三人。ソラとの戦いで見せつけられた圧倒的な実力差に、ただ悔しさだけが胸に込み上げていた。カイは剣を握ったまま、自分の手を睨みつけながら歯を食いしばる。


「全然駄目だった……俺たち、何もできなかったじゃないか。」

カイの言葉にユウリが薙刀を肩にかけながら顔をしかめた。「悔しいけど、それが現実よね。あいつ、やっぱり別次元にいるわ。」


「どうやったらあそこまで強くなれるんだろう。」タカシが小さな声で呟き、双剣を握りしめたまま肩を落とす。


その時、三人の元へ足音が近づいてきた。顔を上げると、さっきソラと一緒にいたルナがこちらに駆けてくるのが見えた。


「ルナ?」ユウリが眉をひそめながら言うと、ルナは小走りで近づいてきて、三人の前で止まった。


「お兄ちゃんからの伝言!絶対読んでね!」ルナが明るく言いながら手に持った紙を差し出す。「これ、ルナとの約束!」


ユウリが驚きながら手紙を受け取ると、ルナは笑顔を浮かべたまま「頑張ってね!」と言い残して、右手に持った小ぶりの肉まんを口に頬張りながら森の中へ走り去っていった。


「伝言……?」カイがその紙を受け取ると、そこには短いメッセージが記されていた。


「シタケ村長の元へ行け。」


カイはその名前を口に出してみたが、三人とも聞いたことのない名だった。ユウリが腕を組んで首をひねる。「シタケ村長……?一体誰よ?」


「でも……あいつが行けって言うなら、何か理由があるんだと思う。」タカシが少しだけ前を向きながら言った。「僕たち、強くなれるならどんな手も試すべきだよね。」


カイは静かに立ち上がり、手紙を握りしめた。「そうだな。強くなるためには、まず動かなきゃ始まらない。シタケ村長の元へ行ってみよう。」


ユウリは少し考えた後、大きく息をついて頷いた。「分かったわ。行くしかないのね。」


三人は気を取り直して剣や薙刀を背負い、ソラが伝えた目的地へ向かうことを決意した。悔しさを糧に、さらなる力を求めて歩き出す。その背中には、次こそ挫けないという新たな決意が刻まれていた。


ソラの手紙に記されていた村の名を頼りに、カイ、ユウリ、タカシの三人は道を進んでいた。荒れた山道や深い森を抜ける中、時折野良の造物が姿を現した。崩れた人型や奇妙な四足の影など、道中で遭遇するそれらは一見厄介に思えたが、彼らにとってはさほどの脅威ではなかった。


「動きが単純だ。ソラと比べたら、これくらいなら問題ないな。」カイが前を行きながら剣を収め、短く言い放つ。


ユウリも同意するように薙刀を振り下ろし、造物を振り払った。「予測できる動きなら、これくらい楽勝よね。……でも、それにしてもこの道、本当に村に通じてるの?」


「手紙の村の名前、道中の村人たちに確認しながら進めばいいんじゃない?」タカシが双剣を軽く構えながら提案する。


三人は周囲を警戒しながら、時折見つけた小さな集落や人家に立ち寄り、シタケ村長について尋ねた。しかし、返ってくる答えはどれも同じようなものだった。


「ああ、シタケ村長ね。あの人は変わってるわよ。」

「妙な人だよ。あまり村を出てこないし、何を考えてるのか分からない。」

「変わり者って言葉がぴったりの人だね。まあ、村の中ではそれなりに評判はいいんだけど。」


どの村人も一様に「変わり者」という評価を口にする。具体的にどんな人物かを聞こうとしても、誰も詳しいことを語る者はいなかった。これでは、シタケ村長がどんな人間なのか全く見当もつかない。


「変わり者っていうだけじゃ全然分からないよ。」タカシが困ったように言う。


ユウリは肩をすくめた。「まあ、行ってみれば分かるわよ。本当に変な人なら、その分面白いかもね。」


カイは二人のやり取りを聞き流しながら、手紙を再び確認した。「…とにかく、この村の名を目指すしかない。それであの村長がどういう人間か、自分たちの目で確かめる。」


造物の襲撃をくぐり抜け、村人たちの曖昧な噂話を頼りにしながら、三人はシタケ村長のいる村を目指してさらに道を進んでいった。


村に到着したカイたちは、まず村人たちにシタケ村長の居場所を尋ね歩いた。道端で野菜を洗う年配の女性に聞けば、村の外れに山沿いの古びた家があるという。その場所が村長の住まいだと教えられると、彼らは顔を見合わせた。


「そんなに離れてるのか。どうする?今晩泊まれる場所も探したいけど。」カイが不安げに言う。


「せっかくだし、村の様子を見ながら向かいましょう。」ユウリが提案した。「とにかくその古屋に行けばいいんでしょ?それに、泊まる場所もその途中で見つかるかもしれない。」


タカシは双剣を背負い直しながら「ボクも、まず村長さんに会ってみたいな」と呟いた。「せっかく来たんだし、早く話を聞きたいよ。」


三人は道沿いを歩きながら、古びた村の風景を目に留めた。朽ちかけた木の柵や、時折見かける古風な造りの家々。その多くは人の手が加わらなくなって久しいらしく、屋根瓦には苔がびっしりと生えていた。村の中央には井戸があり、そこから水を汲む人々の姿がちらほら見える。


「本当にここに村長なんているのか?」カイが村全体を見渡して少し疑わしげに呟いた。「村長って普通、もっと立派な屋敷とかに住んでるんじゃないか?」


「そんなの場所によるでしょ。」ユウリは肩をすくめた。「でも、村長なら少なくともそれなりに名のある人物なんじゃない?」


「ボクも、ちょっと想像と違うかもって思うけど……まあ行ってみないと分からないよ。」タカシは落ち着いた声で二人を宥めるように言った。


やがて、村の端に差し掛かると、そこから山の斜面が見えた。その手前に、噂通りの古屋がぽつんと建っている。ほかの村人たちの住居よりもさらに小さく、屋根はところどころ剥がれ落ち、壁も長年の風雨で色褪せていた。庭と呼べるほどの空間には枯れ草が広がり、どこかひっそりとした佇まいだった。


三人はその古屋の前に立つと、カイが「ここがシタケ村長の家?」と疑問を口にした。


「それ以外にないでしょ。」ユウリが淡々と言い、門戸を軽く叩いた。


しばらくして、戸が音もなく開いた。中から現れたのは、村長と呼ぶには多少若く見える50代くらいの男性だった。黒髪に白髪が混じり、背はあまり高くない。身に着けている服も決して立派なものではなく、どちらかと言えば見窄らしいと言えるほどだ。しかし、ただの村人とは異なる何かが彼の雰囲気に漂っていた。


「お前たちが噂の若者たちか。」男は鋭い眼光で三人を見据えながら言った。村長とは思えないほど簡素な服装だが、目の奥には知恵と経験を積み重ねたような荘厳さが感じられる。


「あなたがシタケ村長?」ユウリが半信半疑で尋ねる。


「確かに私がシタケ村長だが、村人たちはお前たちに何と言っていた?」


「えっと、変わり者とか……」タカシが正直に答えると、村長はくすりと笑った。


「まあ、そう言われても仕方がないかもしれんな。」村長はそう言いながら、彼らを中へ招いた。その態度は穏やかだが、どこか底知れぬものを感じさせた。


三人は互いに顔を見合わせ、ついに出会った村長がどのような試練を課してくるのかを思いながら、古屋の中へ足を踏み入れた。

ミナトとミライの姉弟の名前が迷走していました。兄をソラ 妹をルナにしました!よろしくお願いします

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