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第5話 - スペクトリアの真実

風が砂を巻き上げる荒れ地の道を、カイたちは慎重に進んでいた。空は薄い雲に覆われ、足元には無数の小石が散らばっている。地平線の向こうには滝へと続く山道がかすかに見えていた。歩きながら、タカシはぽつりと疑問を口にした。

「スペクトリアって、どんな部隊なんだろう……。」


ユウリは歩調を緩め、少しだけ考え込んだ後、静かに言葉を継いだ。「造物に対抗するための精鋭部隊よ。もともと、造物との戦いが主な任務だったけど、今はその舞台が『領域の競宴』に変わっている。ただ、それだけで戦う相手が変わったわけじゃないわ。」


タカシは目を丸くして、「あ、相手は造物のままなんだ……」とつぶやいた。

ユウリが短く頷く。「そう。戦う相手は同じ。ただ、戦場の形が変わっただけ。造物相手に人類がどれだけ抗えるか、それを試される場所。それが競宴よ。」


「でも、造物ってどんどん進化してるんだよね?」タカシが小声で続ける。「そんな強い相手に人間側が勝てるのかな……。」

ユウリはため息をつき、眉を少しひそめた。「簡単にはいかないわ。スペクトリアでも厳しい戦いが続いているのは事実。それでも、今のところ人類が造物に直接対抗できるのは彼らしかいない。」


タカシは不安げな目をしながら「スペクトリアの人たちも、自信をなくしたりしてるのかな……」と漏らした。

「自信があるとかないとかじゃなくて、彼らはやらなきゃいけないことをやっているの。それだけ。」ユウリの声は落ち着いていたが、その瞳の奥には複雑な感情が宿っているようだった。


その時、カイが前を向いたまま、ぽつりとつぶやいた。「俺たちが造物相手にどう戦うかを考えるだけだ。競宴だって、結局は造物との戦いの場に過ぎないんだから。」

彼の声は小さかったが、どこか決意を感じさせるものだった。


タカシはしばらく黙っていたが、やがて肩を落としながら「そ、そうだよね……」としぶしぶ頷いた。


滝の音がかすかに耳に届く中、カイたちはその姿を目にした。切り立った岩壁の向こうから、轟々と流れ落ちる水流がまるで白い壁のように見える。水しぶきが陽光を受け、虹色にきらめいていた。


しかし、その美しい景色よりも、彼らの目を奪ったのは滝の前に立つ小柄な人影だった。まだ幼さが残る顔立ちの少年が、黒い装束を身にまとい、真っ直ぐな視線でこちらを見据えている。その小さな体に似つかわしくない巨大な武器が背後に立てかけられ、少年の存在をさらに際立たせていた。「……あれが、スペクトリアの一員か……?」タカシが思わず立ち止まり、低い声でつぶやいた。


ユウリは黙ったままその少年をじっと見つめ、やがて小さく言葉をこぼした。「これが……スペクトリア……。」

カイは肩を強ばらせながら、何か得体の知れないものに圧倒されるような感覚を覚えた。「ただの部隊じゃない、か……。」

1人の少年が立つだけで漂うこの威圧感。それがスペクトリアだった。



今回も読んでいただいてありがとうございます。

とうとうスペクトリアのメンバーが現れましたね。

最年少ということですが彼の実力はいかに!?

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