第1話 魔法(2)
やっぱり高原で寝るのは気持ちいなあ。それに今日は雲1つもない天気だし、大地からは暖かい風もたなびいている。最高の日だわ。私の趣味は昼寝ですし、このままじゃ寝落ちしそうだなぁ、このまま怠惰に生きていたいな、
そんな感じで高原の上で気持ちよくくつろいでいる時だった。師匠様がいつもとは違く、改まった格好で私に話しかけてきた。
「休んでるところ悪いのじゃが、お前さんに話しておきたいことがある。」
私は目をこすりながら重い体を起こし、胡坐をかきながら言った。せっかく気持ちよく寝ていたのに台無しだ。
「なんですか?」
「お前さんもポラリスアカデミーに行ってみないか?お前さんならきっと良い経験になると思うぞい」
「えーあのかの有名な学園ですか?めんどくさいですよ。魔導書読んでたいし。」
私は綺麗な星座を眺めがら流れるように返事した。
「そう言わずに!それに、あそこに三等以上がたくさんあるぞ!それに国王様が直々に推薦してくれたんだから返事は1つしかないじゃろ?」
師匠様はにこやかにいってきた。顔は笑っているようだが内心では絶対に笑っていない。逆に恐怖すらも感じてしまう。
「はいはい、いけばいいんでしょ?」
私は不貞腐れたように了承した。内心めんどくさくて行きたくないという思いが大半だ。そもそもこの世の知識をほぼ知り尽くした私からしたら学園で学ぶことなどないのだから。はぁーめんどくさいったらありゃしない
「お主ならそういうとおもったわい!それじゃ教授としてよろしくね。それにもう返事は出しておる」
ん?え?え?え?ええええ!私の聞き間違いじゃないよね?いま教授って言ったような。それに返事はもうだした??あれぇ??
自分の耳を疑った。どう考えても教授として教える立場だなんて予想外すぎる。てっきり転入生としてまた新しいことを学んでこいと、思っていたのに。
「何をおどろいておるのじゃ?」
「そりゃーもちろんおどろきますよ!私の年齢だと普通教わる側ですよ?なのに蓋を開けてみればまさかのまさかの教授としていくだなんて驚くのも当然ですよ!」
「そうなのか?」
(そうだよ!!!!)
一発だけ殴っても許されるかな?ね??
だんだんとムカついてきた私は師匠めがけて氷柱を飛ばした。年老いていても実力は衰えおらず、そんな攻撃はやすやすと避けられてしまう。
「さすが師匠様と言ったところですね」
「ははは!見た目は老いぼれても実力は衰えてはおらぬ」
思いっきり前歯を見せながら言う。
「それじゃお前さんも教授として頑張るのじゃぞ」
そう言われた私はため息を吐きながら
「はい、がんばりまーす」
そう返事をするのだった。ポラリスアカデミーあそこには行きたくもない。なんせあそこは、この国トップの学園なのだから。
勇者様や聖女、賢者などを数々の偉人たちを輩出してきた歴史古き学園だ。それに学力、魔術、技術どれを取ってもこの国トップレベルの環境が整っている。そのためか王位の家系や貴族様、財閥のお嬢様など、平民では無い人間も数多く在校している。
そんなところの教授なんてとてもじゃないが荷が重い。そんな感じにソワソワしている中、師匠様は立て続けで言った。
「ひとまずこれを渡さんとな!はいこれ」
そう言って師匠様は白く分厚い四角形の箱を渡してきた。天面は赤オレンジのリボンで綺麗に結ばれている、側面は金箔やダイヤモンド、トパーズなどの宝石で装飾されている。私の名前と契約星座が大きく刻まれている。無駄に凝った箱だ。
「この箱はなんでしょか?」
「開けてみたらわかるぞ」
私は言われるがまま恐る恐る箱を開けた。そこに入ってたのは……
「なんですかこれ!!」
中に入っていたのは豪華な服だった。おそらくは学園で着るための服だろう。
「は、は、は!お前さんの服じゃ。国王様や貴族の皆さん方がいる前で今の格好ははしたないからの。知り合いに頼んで作ってもらったわい!」
遠回しにダサいと言われた気が……。しかし師匠の言い分も一理ある。今着ている服は機動性に特化した短パンと、Tシャツととてもだらしない格好だ。国王様や貴族様がいる前でこんな格好をしていたら確実に白い目で見られる。
「それにしてもとても豪華ですね。このローブいつにも増して質感が良いですし。師匠様一体誰に作ってもらったんですか?」
「ははは、それは秘密じゃよ、ともかく着てみるんじゃ」
師匠に促された私はまず、ローブを羽織った。普段使ってるものよりも毛の質感が良く、とても重みがある。特製なのか、内側は赤オレンジで普通だが、外側には紺色の背景で牡羊座が描かれておりとても綺麗だ。それはまるで夜空に輝く牡羊座を表現している。とてもかっこいいローブだ。ボタンや細部は金で装飾されている。しかも留め具は前に来るのかダイヤの装飾が施されており、更に牡羊マークが彫られている。更に箱には白いシャツと私の嫌いなフリフリのスカートがはいっていた。絶対師匠様の趣味だとわかるスカートだ。あとで一発殴っておこう。絶対殴っておかないと。、そんなことを呟きながら嫌々着替えた。
「服は着られたか?」
「はい。着れました。どうですかね?」
俺は師匠様にローブを見せながらくるりと1回転をした。遠心力でか、スカートとローブは宙を舞う。
「とても似合っておる。かわいいぞ」
「そうですか?」
「うむ、特にそのスカートが。念には念を入れていっておいて正解じゃったわい」
「エロジジイが!」
私は露出した足を見る師匠様に一発殴りをかましてやった。やはりこのスカートは師匠様の趣味で作られていた。
「では今からいくぞ」
「どこへ?」
「それはもちろんポラリスアカデミーじゃ」
そうい、私と師匠様は学園に向けて出発をした。
そして、また別の最強が現れるとはこの時は知る由もなかった。
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