1話:勇者と魔王、転生す
去年に言っていた新しいチャレンジです。もうすぐ11月になりますよ。というツッコミは置いておいて下さい。
VRとは違うジャンルを書いてみました。
よろしくお願いします(^^)
1000年前、人間と魔族の間で歴史上最も大きな戦争、そして沢山の死者が出た争いがあった。
結果的に魔族をその領地に追い込んで魔王は勇者によって倒され人間側が勝利を収めた。
だがこの大きな戦争には歴史に語られていない事があった。魔族領地の手前、広大な荒野。そこに一人の女と一人の男が居た。一人は勇者で一人は魔王。これから壮絶な闘いが始まると思うかも知れないが・・・
「我々の兵は魔族領の奥地に撤退させた。後は俺を殺せば戦争は終わる。この戦争では人が死に過ぎた。兵の中には人間側に勝とうとしている者もいるが、俺の直属の兵達が押さえている。このまま闘い続けても魔族の負けだ」
「だめ。貴方を殺せない」
勇者は涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。魔王を殺したくない。それがひしひしと伝わってくる。
「いずれこうなる覚悟は出来ていただろう?」
「嫌だ!私は・・・貴方の事が好きだから」
歴史上語られなかった事、勇者と魔王はお互いに恋をしていた。
「さぁ、早く」
「貴方が死ぬなら私も・・・」
「それはだめだ。君には生きて欲しい」
「っ!」
勇者は俯き、そして顔を上げ魔王を見つめ少しずつ歩きだす。
「ごめんね。ごめんね」
「謝ることはない。君に会えて良かった」
魔王は笑い、勇者との思い出が脳裏に浮かぶ。
そして勇者の剣が魔王の心臓を貫いた。
しばらくして冷たくなった魔王を抱きしめている勇者が言った。
「貴方は死なないでって言ったけど、ごめんなさい。全て終わったら私も後を追うから」
その後、人間側が戦争に勝利し勇者は讃えられた。だが少しして勇者は行方不明になった。歴史に残っているのはここまで。
ある湖畔に勇者は佇んでいた。ここは勇者と魔王の思い出がある場所。勇者はゆっくりと湖の中心へと進む。片手にはナイフが握られていた。
「もし生まれ変われたならその時はまた一緒に・・・」
勇者は自分の心臓にナイフを突き立て湖の底に沈んでいき死んだ。
1000年後・・・
とある平凡な村。
「精が出るなアレス」
「おはようございます。ダリルおじさん」
俺はダリルおじさんに挨拶をし畑を耕すのを再開する。
ここは何の変哲もない平凡な村、オルダ。俺はこの場所で生まれ変わった。前世では魔王であった俺。1,000年前は争いばかりで苦しかったがこの村に生まれて平穏な暮らしをしている。
「おっとそう言えば、ダビのじいさんが木こりを手伝って欲しいってアレスに伝えてくれと頼まれてたな」
「いいですよ。こっちが終わったら向かいます」
「頼むな」
そう言って去っていくおじさんを見送りまた畑仕事を再開する。
昼前になりダビのお爺さんと共に森へと入っていく。
「すまんな、アレス。いつもいつも」
「いえいえ、大丈夫ですよ。このくらい」
俺はお爺さんについていき、
「今日はこの木を頼む」
「分かりました」
今回切る木の所まで着いた。それを運び、用途ごとに加工する事も手伝っている。その過程で薪も作る。
「そんな細い体なのによく力があるわい」
「別にそんなに細くないですよ。力があるのは事実だけど」
そんな会話をしつつ木を斧で切り込み付けて切っていく。
ドシンと大きな音を立てて木が倒れる。
「じゃがこんな太い丸太を一人で運ぶなんて事村の誰にも出来んぞ」
「ハハハ。まぁ、そうですね」
乾いた笑いをしつつ心の中で、
(だって前世が魔王だしな〜)
そう前世は魔王であったが今は人間として生まれ変わっている。魔族は元々人間よりも力が強い。だが今は人間なのにこの力が継承されているみたいだ。何故かは分からないがこのおかげで村の皆の役に立てているから良い。
村に帰りお爺さんの家まで丸太を持っていき少し休んでいる所に。
「こんにちは。アレス」
「こんにちは。ミーナ」
幼馴染のミーナがこちらにやって来た。
「おっと若い二人の邪魔をしてはいかんの〜ではな」
「お爺さん、ミーナとはそういうんじゃないですって」
幼馴染で親子共々仲が良いのもあり、俺達はそういう目で見られている。
「ただの幼馴染なのにね〜」
「そうだな」
俺は勇者の事を思い出す。俺が愛しているのはあの子だけだ。
「まぁ、いいや。それよりお昼ご飯持って来たよ。一緒に食べよ」
「そうだな。ありがとう。お腹空いてたんだ」
俺達はそこでミーナが作ったご飯を食べる。今日は野菜たっぷりのサンドイッチだ。
「美味しいよ」
「良かったよ〜」
その後たわいのない会話をしつつ解散して午後は時間があるので趣味の読書に勤しんだ。
夜、ミーナの部屋
(そう。私が愛しているのは魔王だけ)
私は勇者だった。前世の記憶があるのだ。この1000年後の平凡な村に生まれ変わった。
そしてずっと考えているどこかで魔王も生まれ変わっているのではないかと。だが手がかりもなくどうしようもなかった。私は祈るだけ。
(どうかあの人が生まれ変わっていたのなら平穏に暮らせますように)
窓の外の月を見ながらそう祈っていると・・・
ドンッという音と共に悲鳴が聞こえてきた。
急いで窓を開け外を見る。燃えている家が何軒か見えた。そして何かに襲われている村人も。
「あれってもしかして」
嫌な予感がして家を出る。両親が先に出ていた。他の村人も外に出て何事かと火が付いている方を見る。
「助けて〜〜」
私は助けを求める声を聞き、家から剣取って走る。
「ミーナ待ちなさい!」
親の静止を振り切り現場まで行くと。
「殺せ!殺せ!人間共は皆殺しだ!」
魔族だ。1000年前に闘った魔族がそこには居た。人間のように四肢があるが獣の顔に鋭い爪を持った化け物だ。目の前の魔族が一人の女性に目をつける。
「まずはお前からだ!」
「きゃあ!」
キィィン!
魔族の鋭い爪が振り下ろされる瞬間、私は間に入り剣で弾く。
「ミーナ!」
「早く逃げて!」
「で、でもミーナを・・・」
「早く!!」
急いで走り去り、そこには私と魔族だけが残った。
「何だ〜お前。能力者か?」
「だとしたら何?」
「能力者は厄介だがな関係ねー!」
再び鋭い爪が振り下ろされたが、それを上回る速さで腕を切り落とした。
「な、何だと?」
驚いて硬直している魔族を私は剣を横に振って真っ二つにした。
「人間如きに魔族が・・・」
そう言い残して倒れる魔族。
まだ終わっていない。村にはまだ魔族が残っているはずだ。
私はそちらに向かって走り、三人の魔族を確認した。
「た、助けて・・・」
「おい。こいついい女じゃないか。殺すのは勿体無い」
「そうだな。連れて帰って遊ぶか」
「そうしようぜ」
「この下衆が!!」
手前に居た魔族を切り捨て、次の魔族を斬り捨てた。だがその隙に。
「おっと。動くなよ」
女性を人質にされてしまった。
「いきなりで驚いたな。お前能力者か?」
「くっ!」
「危ない、危ない。もう少しでやられる所だったな」
「ミーナ、逃げて」
「お前は黙ってろ」
「止めて!!」
首を絞められ気絶したがこの状況どうすればいいか分からない。
(また目の前で人が死ぬの?」
「おーー良く見たらお前も中々だな。こいつを殺されたくなければ武器を捨てて俺と一緒に来い。可愛がってやるよ」
(どうすれば)
「1,000年前、俺は人間をそんな風に扱うなと言ったはずだ」
後ろから声が聞こえた。そして鎖が魔族の周りの空間から現れ拘束した。
「何だこれ?魔法?何故人間のお前が」
「ミーナ。無事か?」
「アレ・・ス」
そこにはアレスが居た。でもこの懐かしい感じは何だろう?
「ミーナ。彼女を」
「あっ、うん。」
私は人質に取られていた女性をこちらに運ぶ。
「お前達、誰かに命令されて来たのか?」
「はっ!答えると思っているのか?」
「同族にこんなことはしたくないが、村の人達を傷付けたのは許さない」
パチンッと指をならす。すると空間から炎が出て鎖を伝って魔族の体を蝕む。
「があああーー。お前は一体・・・」
そう言い残し魔族は跡形もなく燃え去った。
「アレス、えっと・・・」
「ミーナ。話は後で。今は皆を助けないと」
「っ!そうだね」
翌朝
幸いにも死人は出ず、怪我人が何人か出ただけですんだ。アレスの事は秘密にして私が魔族を倒したという事になった。急いでこの事をこの地の領主に伝えに行った。魔族が現れた。この1000年何も無かったのに突然現れた。村の皆は不安でいっぱいだったと思う。でも領主の所から戻って来た村人からこちらに兵を送るという事を伝えられて少しは安心したようだ。
その夜
村の近くの湖畔にアレスと来ていた。
「やっと見つけた勇者」
「やっぱりアレンが魔王なんだね」
私は涙が止まらなかった。
「ミーナが魔族と戦っているのを見て、あの剣技に見覚えがあったからもしかしてと思って」
「ごめんね。貴方との約束を守れなかった。貴方が居ない世界で生きていくのは辛いから」
そっとアレンは抱きしめてくれた。
「大丈夫。こうして生まれ変わって会えたんだから」
「うん。そうだね」
私達は空が白けてくるまで抱きしめあった。
どうでしたか?アレスとミーナの物語。
次回も楽しみにしてて下さい(^^)




