エクスカリバーかついだカードデュエラー2
すこし歩くと、第一デュエル広場なる場所に出た。
そこには大量のテーブルが並べられ、カードデュエラー達が熱戦をくり広げていた。
カードゲームショップで目にするような光景だけど、彼らの顔つきは真剣そのもの。
やはり、生活がかかっているからだろうか。
とてもゲームという雰囲気には見えない。
広場のはしに並べられたベンチに腰を下ろす。
荷物からガイドブックを取り出し、それを広げる。
まずはカードゲームのルールを確認だ。
エクスカリバーは股にはさんで抱きかかえる。
これがページをめくる時に邪魔だ。
昔の人はどうしていたのだろう。
これだと、立ったり座ったりするたびに、持ち直したり、置き場所を探さなければならない。
腰にさげるにしても、背負うにしても、面倒くささは変わらない。
その上、結構重いから、持ち運ぶだけでもひと苦労だ。
明日は部屋に置いてこよう。
「健吾はカードゲームに詳しいにゃご?」
「すこしかじった程度で、未経験者も同然です。漫画とかアニメで見たことあるので、どういうことをやっているかぐらいは把握しています」
ガイドブックをパラパラとめくる。
先に手持ちのカードを確認しよう。
ケースには10枚のカードが入っていた。
右上にユニットと記されたカードが8枚。
そして、アイテムと記されたカードが2枚ある。
左上に大きくアルファベットが印字されている。
これはカードのランクをあらわすようだ。
また、右下にポイントが記されているので一目で価値がわかる。
ユニットよりもアイテムのほうが全体的に高い。
10枚分を合計すると、だいたい3千ポイントあった。
ザッとだけど、一時間近くかけて、ガイドブックに目を通した。
デュエルを開始するまでの流れはこうなっている。
1.ユニットとアイテムのカードを各5枚選んでデッキを構築
2.対戦相手にデッキを開示。その後、2枚だけカード交換が可能
3.3×3マスのフィールドに全てのユニットをふせた状態で配置
アイテムカードが不足してる分にはかまわない。
デッキはデュエル開始前に開示する必要があるものの、その後の交換で、戦略をねり直す余地が、若干残されている。
デュエル開始後の流れはこうだ。
各ターンの最初に手札からアイテムをドローする。
アイテムは使用しなければ手札の最後に戻る。
また、破棄して手札に戻さないことも可能だ。
各ターンに行える行動は1回。
ユニットの攻撃・移動か、アイテムの使用だ。
3ターンを1フェイズと呼び、フェイズごとに先攻後攻が入れかわる。
ユニットの交換や復活は基本的にできない。
フェイズ1の手番は経験値の量で決まり、少ないほうが先攻だ。
ちなみに、経験値はデュエルによってたまるらしい。
あと、デュエルの勝者は、相手のデッキから一枚奪うことができる。
初級ユニットは五種類しかなく、各ステータスは以下の通り。
なお、カードごとにプラスやマイナスが付いている場合がある。
HPは各ユニット共通で10。特殊スキルを一つずつ持っている。
剣兵:攻撃3 防御0 突撃
槍兵:攻撃3 防御0 カウンター
騎兵:攻撃3 防御0 突撃
弓兵:攻撃2 防御0 遠距離射撃
盾兵:攻撃0 防御2 身代わり
〈突撃〉は攻撃力が二倍になる。
その代わり、次ターンでプレイヤーが行動不能になるので、攻撃を1ターン先取りしているだけのように思える。
ただ、盾兵に対しては効果的な攻撃になる。
普通に攻撃すれば、ダメージは1ターンで1だけど、〈突撃〉なら2ターンで4だ。
槍兵の〈カウンター〉は〈突撃〉に対してのみ発動し、攻撃相手に反撃する。
盾兵の〈身代わり〉は、左右か後方のユニットに対するダメージを、代わりに受け止める。
弓兵の〈遠距離射撃〉はその名の通り。
裏を返せば、他のユニットは遠距離攻撃ができない。
手持ちのカードはこんな感じだった。
剣兵2枚
槍兵2枚(1枚はマイナス付き)
騎兵1枚(プラス付き)
弓兵2枚
盾兵1枚(マイナス付き)
〈木の盾〉:防御+1
〈牽制〉:相手のドローを3ターン停止
中でも〈牽制〉のカードはCランクで8百ポイントもの価値があった。
ただ、正直使いづらそうなアイテムだと思った。
初級はユニットとアイテムの種類にかなりの制限が加えられ、フィールドもせまい。
どうやら、ユーザーフレンドリーに設計されているようだ。
これなら、今すぐ実戦にのぞんでも問題ないかもしれない。
「ニャゴ様、わかりましたか?」
「カードゲームのことは健吾にまかせるにゃご」
そんな人まかせな。一応、ガイドとしてついて来たんですよね?
こっちの世界にもすっかりなれたようで、のん気に毛づくろいをしている。
「中級になるとユニットが倍以上に増えて、フィールドも広くなって、連携攻撃なんかもできるようになるみたいです」
「理解できそうにゃご?」
「まあ、何とかなりそうですけど。でも、冥王ならぬカードマスターを倒すまで、地道にやっていくんですか?」
「相手の土俵に上がる必要はないにゃご。ニャゴは実力行使でもかまわないにゃご」
「エクスカリバーで勝てますか? レーザー銃とか持ってそうな雰囲気ですけど」
外への出入口と思われるゲートが遠目に見える。
そこで、ヘルメットをかぶった警備員が目を光らせている。
銃は携帯していないようだけど、警備は物々しい。
「エクスカリバー的な最強デッキを用意できないんですか?」
「最強デッキが何なのかわからないと用意のしようがないにゃご。カード自体がどう作られているかも知る必要があるにゃご」
フィールドに置くと立体映像が表示されるらしいし、カードに特殊な加工がほどこされていてもおかしくない。
そうすると、簡単には偽造できないか。
とりあえず、現状でどれだけ通用するか、確かめてみよう。
今日中に、必ず一戦こなさなければならないノルマもある。
負けても一枚失うだけだ。