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ドラゴンと少年

「シエル様。どういたしました?」


私の目の前にいる目に包帯を巻いているのはクロノと言う少年。


「いや。なんでもない。」


私はドラゴンだ。人間に恐れられる存在である

何故こいつは私を恐れない。

何故こうなったのだ。

私はこの生活が始まった頃を思い出す。


____________________________



私とクロエが出会ったのは三か月程前だった。

とある迷宮の番人であり、主である私は要りもしない生贄を捧げられていた。

ほとんどが少年や少女であり、奴隷や捨て子など、様々な子が生贄としてここに来た。

大体が途中でモンスターに食べられたり、トラップで死んだりする為、地上の者共は私が生贄を食べていると勘違いする。

愚かな事に事に生贄のお陰で私が暴れないと思ってる様だ。

だが、私は正直人間などどうでも良いと思っている。

稀にここまで来る生贄が居るが、私は一方通行の出口から外に出すだけだ。


私が生まれて二百程経った頃か。勇者と言う存在がこの世に召喚されたらしい。

人化の術を使い外に出た時に聞いた話だった。

正直私には関係ない話だと思っていた。

だが、違ったんだ。

私の迷宮は王都の中にあり、冒険者が来る。

上級冒険者とやらは私の所までやってくる。うっとおしいったらありゃしない。

私は生物の頂点に立つドラゴン。歯牙もかけずに追い払えるがな。

そんな時だ。勇者一行とやらが来たのは。

三十人位だろうか。金ぴかな鎧を着て聖剣を持った勇者を先頭に私に挑んできた。

流石に私も多勢に無勢でボロボロとなった。

何とか追い払う事が出来たが私は動けなくなった。

こんな状態で先ほどの勇者一行が来たら私は死ぬ。

そんな事を考えていた時、クロエが生贄としてここに来た。


____________________________



「大丈夫ですか?」


そうボロボロになったドラゴンに少年は問いかけた。

黒い髪の毛で目を閉じた顔の整った少年。

恐れる事無く話しかけた少年にドラゴンは興味を持った。


「人間よ。我はドラゴンであるぞ。何故恐れぬ?」


威圧をかけ、そう問いかけた。

だが少年は気にする事もなく。


「僕は目が見えないんです。」


そう少年は瞼に触れながら言った。

どうやって此処に来たと問うと、気配を感じ取りながら隠れて来たと言う。


「何度もすみませんが、大丈夫ですか?」


「大丈夫では無い。これが大丈夫に見えるなら…いや、貴様には見えないのであったな。」


今まで目が見えない相手とは話して来なかった為、中々話しづらいドラゴン。

傍から見れば中々滑稽だろう。


「そう…ですか…すみません。」


少年は何故か謝る。


「何故謝る?貴様のせいでは無かろう。それに、貴様ら人間にとって我は敵であろうに。」


「いえ、僕の同級生…いえ、これじゃ分からないですね。元仲間の彼らが貴方を傷つけた。だから謝るんです。所謂自己満足ですよ。」


ドラゴンはその言葉に驚いた。敵に謝る理由もそうだが、勇者一行の仲間。それも彼自身が元と付けた事だ。

勇者一行と戦って思ったことは仲間を大切にしている事だ。そんな勇者一行が彼を一人で此処に来させる訳が無い。何かしらの理由があるのだとドラゴンは思い問いかけた。


「何故勇者の仲間が此処に居る。それに元とな?何かあったのか?」


そうドラゴンは興味本位で聞いてしまった。


「…そうですね。僕はあのパーティーの中で唯一の役立たずと言う存在でした。何をやってもダメ。特典と言われる物も、ただ物を作るだけのハズレでした。」


何故かドラゴンは納得していまった。そしてそこからの展開も予想できた。


「何人かの友達は僕を庇ってくれましたが、結局僕は役立たずのまま。王様も失望したのでしょうね。僕は生贄としてここに連れてこられました。」


少年はそう言った。そしてドラゴンは同情し、そして人間に対して失望した。

何故役立たずというだけで彼は生贄とされなければいけないのか。

そう思った。

ドラゴンは彼を匿った。何故匿ったかは分からないが。


「我の名前はシェルシエル。」


「僕の名前はクロノです。」


ドラゴンは少年に自分の名前を教え、少年もドラゴンに名前を教えた。



何日か経った頃、彼は一本の試験管に入った水を持ってきた。


「これ、飲んで下さい。」


ただの水だと思ったドラゴンはその水を飲んだ。

だが、水を飲んだ瞬間に体が回復し始め、数分後には傷一つない体へと戻った。

何を飲ませたと聞くと、


「創ったんです。瀕死に至る傷も、四肢の消失すらも治す治癒の力を持った水を。」


それにドラゴンは驚いた。

彼の特典で作った物だとは思っていなかった。

そして彼が何故自分に恐れないか分かった。

違うのだ。彼は役立たずでは決して無い。

下手すれば神をも超える力を持っている。

だから自分を恐れないのだ。


「シェルシエル様にはお世話になってますから。その傷を治せないかと思ってまして、僕の能力で何か作れないか頑張っていたんです。」


少年はそう、輝く笑顔で言った。



それから彼にドラゴンは稽古をつけるようにした。

いつでも外に出られるように。

だが彼はドラゴンからは離れない。

そればかりかドラゴンの周りの世話をやり始める始末。

例えば料理を作り、鱗を磨き、部屋を掃除する。

まるで使用人の様になった。

戦闘面でも彼は強くなった。

元々の才能なのか気配を掴むのが上手く、今に至っては人化の状態での攻撃は容易く避けられる。

武器は様々な物を使っている。片手剣、両手剣、盾など、普通の人でも扱える武器だけだが、オールラウンダーとなった。


「なあクロノ。何時までここに居るのだ?お前は一人でも生きていけるだろう。」


そうドラゴンが言った。

だが少年は


「いえ、僕はシェルシエル様に命を救って貰ったのです。僕は貴方に一生ついて行き、何でもするつもりです。」


そう言った。

つい冗談で「伽でもか?」と言ったのだが、彼は「はい」と真顔で返されてしまった。


そしてドラゴンは忘れてしまって居る。勇者一行が来ないと言う事を



____________________________



初めまして。僕の名前は八幡 黒乃。シエル様にはクロノと呼ばれています。

はい?なんでドラゴンと一緒に住んでるか。ですか?

それはですね。シエル様に生きる理由を貰ったからです。

実は僕、この世界に来る前から虐められてまして。生きる理由を紛失していまっていました。

そんな中でシエル様は私に力を授けてくれました。

だから僕はシエル様について行くんです。

勇者?…ああ、良くここに来る不届きな屑共ですか。

シエル様の敵は私の敵です。

教会に異端扱いされているらしいですが、どうでも良いです。と言うか、僕を捨てたのは教会と国であって、僕が勝手に出て行った訳では無いんです。

全くどいつもこいつも身勝手です。「今までは悪かった。だから一緒にあのドラゴンを倒そう。」とか「何故人なのに魔物に付く」とか、反吐が出ますよ。


「そうでしょ?勇者御一行様。」


「何の…話だ…」


僕の足元に転がるのは勇者達。元仲間で元同級生。数少ない友達も居たが、シエル様の敵だから倒す。


「ん~。分からないか。いや、分かる筈がないよね。」


「だから何の話だ!!!」


立ち上がったのは勇者でありクラスの中心であった天宮 光輝。


「あはは。やっぱりすごいね。流石勇者。立ち上がるか。」


「ぐっ…何故お前が敵になる!!!」


「この前言ったはずだよね。シエル様の敵は僕の敵だって。」


「あいつはドラゴンだ!!!魔物なんだぞ!!!」


「だから?やっぱり薄々気づいていたけど、光輝君って頭足りてないね。」


この前も説明したんだけどなぁ…


「僕はシエル様に救って貰い、生きる理由を教えて貰った。命を救って貰ったが故にその恩義の為仕えて居たのだけど、次第に敬愛が芽生えてね。だから僕はシエル様に仕えてるんだ。」


「俺らを裏切ってまで…」


「裏切って?アハハ!!!面白い事を言うね。先に裏切ったのはそっち側だよ。」


そう裏切ったのはそっち。

元々王様と教会は召喚された者の安全を保障していた。

まあ、戦いに出る時点で安全も何もないんだけどね。

そして魔王を倒したら返してもらえるらしいけど、どう考えてもそんなのはあり得ない。

僕は虐められてたが故に人の感情に対して敏感だ。

王様に対して感じたのは欲望。教会の人達は見下してるね。

まあ、それだけだったら彼らをここまでボコボコにはしないけどね。

一番の理由は勇者ですら僕を助けに来なかった事かな。

二週間。これが彼らが来なかった期間。

ダンジョンにすら来なかった。

それに僕がどんなに悲しんだかこいつらは知らない。

僕を満たしてくれたのはシエル様しか居ない。


「まあ、どうでも良いや。」


今に至ってはどうでも良いのだ。


「じゃあね。どうせその腕輪で帰れるんでしょ?僕はこれでも忙しいの。シエル様のお世話とか魔王と面会しなくちゃいけないんだから。」


そう。僕は完全に魔王側に付いた。

まあシエル様が魔王の親友だったから仕方なく付いただけだけどね。

ああ、シエル様…貴方の為だったら僕は何でもします。

人を殺せと言うのならば何人でも殺して参りましょう。

伽をしろと言うのならば不肖ながら幾らでもお相手になります。

死ねと申されるならば貴方様の好きなような死に方で死にましょう。

おっと。しまった。トリップしてしまったよ。

それじゃ、みなさんさようなら。

どうだったでしょうか。

ノリと勢いだけで書いた作品ですが、楽しめたでしょうか?

楽しめたのならばうれしいです。

それではまた。

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