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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
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プロローグ

薄暗い犯罪者の終着駅。

歩く七つの影


 ラヴィリンス国立魔法使い収容施設は特に変哲の無い日常の始まりを向かえたのなら、私は妻と子を見ようとしなかった。と看守の一人である男性は記者に語った。

 彼は生き残ったのだが、あの時自分の隣を通り抜けて行った冷たい空気を彼は現場を離れた後も忘れられていない。

 朝の見回り、受刑者の様子に変化はなしそれを日誌に書けたら幸せだったのだろう。

 突然だった。天井にバカデカい穴が開いた。音はその後に来たのか、彼の脳が処理に時間をかけたのかは解らないが、その穴から入って来たのはドデカいビークル? カタログであんな感じの車やバイクを成金の連中が買っているんだろうなと思っていたモノと似ていた。それがモーターが何かを回転させているかのような音を撒き散らしながら侵入して来たんだ。

 デカい武装、見た事も無い銃の黒い銃口、そんな動く殺戮兵器が檻に囲まれた少し広いスペースに着地した。受刑者達は騒いでいた。その声は恐怖ではなく、退屈な日常に現れた物珍しい非日常に対する歓喜の声だったと彼は語っていた。目の前に降り立ったそれはコックピットに当たる部分を開いた。

 そこで、受刑者の声は歓喜の声ではなく阿鼻叫喚の声へと塗り替えられたのだ。

 全員が逃げ場のない牢屋の一番奥に引っ込んで行った。

 ビークルから奴が降りた瞬間にまるで夜に引き込まれたような感覚に襲われたと彼は震えながら答えていた。凄まじい孤独感に寒気、まるで自分の妻が死んだ真冬の夜に暖房も明かりもついていない部屋に1人で絶望しているかのような感じだったと。帰った後に妻を力一杯抱きしめて二度と放さないと何かに誓っていたらしい。

 漆黒の仮面に蒼く光を放つ左目、小ぶりな体格に猫耳フードをかぶり服装自体は動き易そうだったがまさしく闇の眷属とでも言うのだろうか? 腰には液体が詰まった非常に小さい瓶を入れていて彼女? だろうか? そう思った瞬間に


「おはよう、看守さん。夜勤明け? 眠そうだね」


 彼女だ、と看守は気付いたそうだ。

 普通のあいさつだ。それだけだ、それなのに彼は腰を抜かして手帳を落とした。それを見た彼女は辺りの囚人をひとしきり眺めていた。目が向いた牢屋からはいつもは強気で喧嘩っ早い連中が小さい悲鳴を上げていた。

 

「殺人・・・・・・フロアかな? ドンピシャだったようだね。さて、看守さんごめんね」


 やけに軽い調子でそう言うと彼女はのんきにビークルに戻るとゴッツイグレネードランチャーの様な銃を取り出すとそれにのんびりと弾丸を装填する。

 そして、身近な牢屋に向けて無造作に撃ち込んだらしい。牢屋の中に蒼い炎が充満して中の奴らは悲鳴すら上げられずにガタンガタンと鉄格子を鳴らす音と、床をのた打ち回る音に肉の焼ける匂いを撒き散らして直ぐに動かなくなった。

 死んだ。

 ストンと心の中でそう思うと同時だった。彼の頭上、天井の穴から誰かが降りて来た。

 ガギン! と重々しい音を立てて降りて来たのは鬼の仮面を着けた女性だった。その後も何も無い空間から狼の仮面をした少女がビークルに腰掛けた。

 更に鴉に似た仮面の男が羽を広げて着地し、西洋甲冑に羊の角が生えたようなマスクをした男、狐の面を被った小さな女の子、電子回路の様な仮面をしたうさ耳フードを目深にかぶった少女。

 彼は悟った、この街に、トレライ・ズ・ヒカイントに住んでいれば必ず耳にする名前。


「ス、スペクターズだ!! おい、看守! ここは安全なんだろ!? なんでコイツらが来てんだ! 助けてくれ、まだ死にたくない! 死にたくない!」


 焼き殺された奴の隣の囚人がそう叫んだその瞬間にその牢が壊れ、中の受刑者が引っ張り出され鬼の仮面をした女性に首を掴まれた。

 大の男を片腕で掴み上げる彼女は首を傾げると怯える男に呟いた。


「貴方が殺した女性には、家族がいました」


 男は投げられて床に叩き付けられたが、這って逃げようとしていた。看守は黙って見ているしかなかったが、鬼が指を鳴らすと男は叫び声を上げた。


「ゆるじで! 許して許して! じにだくな、い! うぎっ! やあああああああああ!」


 その断末魔と共に、彼の骨とナニカヤワラカイモノが潰れていく音と一緒に床には絞られた果汁の様に赤い血が滴ったそうだ。そこを看守は見る事が出来なかった。


「さて、悪趣味はここまでだ。まずはみんな殺して、奥に行こうか」


 猫耳フードの彼女がそう言うとビークルは小型のミサイルを一斉砲火して全ての牢を破壊する。我先にと逃げ出す受刑者は狐面の女の子が召喚した忍者の様な使い魔に次々と切り裂かれるか、鴉の男の弓で急所を射抜かれて行く。果敢にも戦おうとした連中は突然お互いを攻撃し始めてその隙を狼の仮面をした少女に喉笛を掻き切られていく。

 そうこうしている内にそのフロアは血と肉塊しか転がっていなかった。

 猫耳フードの彼女は落としていた手帳を看守の胸ポケットにしまって一言。


「奥さんと息子さんを大切にね?」


 それだけ言うと奥へと歩いて行く。その時に彼は後に残る冷たい空気と出会った。


 妻に寄り添われた元看守の彼は取材陣にそう話した。その凄惨な現場を見た彼は精神的に弱っていたが、時間の取れる仕事に転職し家族との時間を大切している。

 彼女は手帳に挟んでいた家族写真を見たのだろう。


 それがたった2~3分間の出来事、事件の始まりだった。

犯罪者が何をしたのか、殺した人間の顔を彼らはみんな覚えています。

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