エピローグ
続きです!
*
「白い飼い猫?」
「そうです。彼女は人知れず飼い猫と戦っていた魔法使いです」
俺は目の前で椅子にふんぞり返る警視総監にそう言い放った。
それと同じ事を学園の理事長や校長にも話して来た。その連中は簡単に俺の言葉を信じてくれたがこの警視総監は連中とは違って欲が深かった。それに、情報通だ。
「情報では、全く未知のスキル? 魔法? を使ったようだね? それも、本人は力の正体が解らないとも言っていると?」
「はい、アレはスキルです。俺のスキルと同様、調べてみては?」
「とっくに調べたよ。だが、スキルはあるが何かまでは解らないと言う結果になった。これはどういうことかね?」
「は? 真紀の身体を調べたのですか!?」
「決まっている。飼い猫に似た姿で現れたのだ、そいつが本人である可能性もある。それに、素晴らしい能力じゃないか? それが味方であるならどれだけ」
俺は警視総監を殴り飛ばしたい衝動を必死で抑える。
コイツは人を物か何かの様に捉えていやがるのか!?
その時だった。
「警視総監殿、幼気な少女にその言い方は無いんじゃありませんか?」
「誰だね、勝手にってあああああ!? み、三神せ、誠海殿ぉ!?」
俺はその言葉に後ろを振り返ると、そこには見知った顔がいた。
中年だが、鍛えられた身体つきに優しげだが威厳のある顔立ち、俺よりも少し背の高いその姿は三神誠海、俺の父だった!
「よっ、翔太郎。セフィラになったんだって!? おいおい、そんなにデカくなるなんて! アメリカで腰を抜かしたぞ!? はははっ! で? お前のガールフレンドが妙なスキル持ちで大変だって?」
「ちょ!? 父さん! いきなりなんだよ! 真紀はそんな関係じゃない!」
「でも助けたいんだろ? 任せろ、たまには親父っぽくしないとな」
父さんは俺の肩を叩いて、前に出る。その背中は、相変わらず大きく見えた。
「誠海殿、いくら貴殿でもこの問題はどうします? そのスキルはどうみても」
「そうですな、どう見ても再生系のスキルでしょう? それに、スキルの詳細が検査で解らないなんて珍しくない。その分野なら自分の専門なので、その検査をしたのも自分の部下ですので」
「ぐっ」
「それに、この子は劣等クラスの生徒でしたね? どうでしょう? 自分の倅である翔太郎もそうですし、その彼女も劣等クラスからの大抜擢。はたして、この制度に何の意味があるのやら? となりませんか、そうなるとあなたの元に優秀な人材を供給している政府も考えるのでは?」
「私に不利益はない」
「そうですか? そちらの娘さんの為に劣等生となった人々の中に、何人の優秀な人材がいた事やら?」
「な、何処で!?」
「私も情報通なもので? この制度の廃止と共に貴方は良くても、娘さんの安否は・・・・・・保証しかねますよね?」
その言葉で警視総監は押し黙った。
父さんは良しっ、と手を叩くと俺の方に向き直った。
「翔太郎、恋人ぐらいはお前の力で守れよ? 制度や権力はどうにもならないが、なに、俺が実験動物なんかにはさせないさ」
「父さん、真紀は彼女じゃない! それに俺もモルモットにされかけだ」
「男は自分で何とかするもんだ。それに、セフィラをモルモット? ははははは! 自分の意思で動く核兵器で科学教室も無いだろ?」
それだけ言って父さんは俺を連れて警視庁から転移魔法で家に帰った。その場にいた美樹と魔理が驚いた事は簡単に想像がついただろう。
*
「三神誠海・・・・・・アイツの名前が出るだけで他国が戦争を踏みとどまった。それだけの魔法使いだが、それは実力もそうだがアイツが生きる重要文化財と言っても過言でないからな」
正明は三神誠海の画像を消してそう呟く。
話している相手は真紀だ。
「でもお兄ちゃん、その人が味方してくれるんなら頼もしいよね?」
「そうだな。だが、アイツ自体が魔法戦闘、魔具、魔法医学、魔化による建築物の魔具化、果てには芸術の分野にも精通している。そのどれでも革命的な発見や発明をしているまさに万能の天才」
「だから、その人が」
「そいつが、僕の殺すべき敵なのかもしれない・・・・・・君と僕の呪縛。この船が対決するべき最古の敵」
正明は静かにそう呟く。
その声は少し強張っているようにも聞こえる。
「え? でも、その人ってすっごく昔の人なんだよね!?」
「僕達は何だ? そう、かなり昔の技術が僕と君の遺伝子の中にあるのは明らかでしょ?」
「もしかして」
「今の奴は、何代目何だろうな? だが、確証がない。奴である可能性を捨てはしないが・・・・・・いつかは殺し合いになる。奴じゃなくても、いい練習台にはなってくれるだろうが」
正明は邪悪な笑みを浮かべる。真紀はその笑顔を必死に真似しようとしているが、どうもうまくいっていない様だ。
「なんて顔してるの? 真紀」
「お兄ちゃん、どうやってそんな悪い顔しているの? 私には難しいよ」
「真紀はこんな顔しなくてもいいよ。君は自分と、傷ついた人を守る自由を手にしているんだから。でも、悪にならないと君は自由にはなれないと思う。いつか、まっさらにしないとね」
正明は笑顔でそう言っていたが、真紀はその言葉に違和感を覚えていた。
まるで何かを予約でもしているかのように聞こえたのだ。
「さて、どう動くかな・・・・・・僕は一手を打つよ? どう出る? 政府要人と犬共」
正明はそう言うと仮面を取り付けると霧の中へと突き進む。
真紀はその背中を見届けて、自分も霧で別の場所に向かう。そこはオーダーの事務所、その扉を潜るとそこにいる女子隊員たちが彼女を睨み付けた。
「アレが飼い猫の格好してたっていう劣等生?」
「なんか、特殊なスキルで翔太郎隊長に取り入ったんだって」
「可愛い顔して、とんだクズね」
真紀はその言葉に猫耳フードを目深にかぶる。その時、正面からの声で彼女は足を止めた。
「真紀ちゃん」
ハッとして真紀は顔を上げた。
そこには兄や仲間達と仲が良く、彼女が姉と慕う女性の一人だ。
「華音お姉ちゃん」
「よろしくね! 今日から一緒に頑張ろう、私も協力するね!」
華音は真紀を抱きしめて来る。余程嬉しかったのだろう、真紀は彼女の背中に手を回して抱きしめ返す。相変わらず彼女の近くにいると落ち着いてしまう。
それと殆ど同時だった。
警報が鳴り響いた。
(オーダー出動命令! スペクターズが刑務施設を襲撃! 警察、軍と協力して事態の解決に当たられたし!)
辺りの隊員達はヴァルキュリアを装着して転位魔法で移動していく。真紀は華音に手を引かれて転移魔法で現場の前まで一緒に飛んだ。
目の前には目が眩むような威圧感のある高い壁に、慌ただしく装備の確認や施設内への通信手段の確保、ルートの確認を行う軍部関係者や警察の機動隊。オーダーも同じように最低限の情報が手首の魔具に転送されてくる。
「真紀ちゃん」
華音が小声で真紀の耳元で囁く来る。
「正明が来ているけど、気を引き締めてね? 使い魔達は容赦してくれないよ?」
「うん、解ってる。でも、この人数大丈夫かな?」
「大丈夫、正明なら」
「違うの、この数でお兄ちゃん達を止める事は出来ないよ。でも、此処には兄弟達が三人以上いる。下手すれば巻き込まれて何十人も死ぬかも」
「それは正明も覚悟の上。私達の仕事に集中だよ」
真紀はうなずくと支給された拳銃のマガジンを取り出す。そこに持っていた弾丸を装填していく。普通は魔力を流すのだが、真紀はそんな余分な負担を自分に課すわけには行けない。だから、一発づつ魔法術式でチューンされた実弾を使うのだ。これなら非殺傷で、魔法への対抗も可能だ。
出来レースとは言え、現場で出会う仲間達と兄の脅威を真紀は肌で感じていた。
力は人には余る




