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白い飼い猫とナイト&パニッシャー! 1

ナイト&パニッシャー!

語呂で選びました。


 教会にたどり着いた俺達は既にド派手な戦闘音が鳴り響いている事にかなりの焦りを覚えた。この音は一対一の戦いで響く音じゃない。

 すでに多くの魔法使いと双葉が戦っているんだろう。


「いくぞ! 2人とも!」

「行くか!」

「遅れると承知しないわよ!?」


 俺は教会の扉を殴り飛ばして潜入する。やけにデカい教会だな、まるで体育館みたいだ。だが、その内装は正気な人間が集まっているとは思えない。壁には何かの皮と写真? が張りつけられて、神聖な祈りの場と言うよりも悪魔を呼び出しているかのような物々しさがある。

 それに奇妙な匂いがするが、パワードスーツのマスクがこのにおいの成分を麻薬と判定した。飼い猫への信仰とは名ばかりのアヘン窟みたいなものだ! 

 入ると直ぐにナイフを持った信者が襲い掛かって来た。


「雑魚は、引っ込んでな。鋼夜の鬼が使う技だが」


 俺は信者に一度に六発のパンチを喰らわせる。すると簡単に連中は吹き飛んで行った。


「ショットガンブロー? パンチ? 名前は統一してないんだ」


 俺は雑魚どもを蹴散らしていく、美樹も遠山も次々と蹴散らしている。


「双葉!」


 背中のブースターを噴射して飛び上がると、俺は双葉と戦う鞭を持つ男に着地と同時にパンチを喰らわせるが、そいつは妙に硬い手応えと共に吹き飛んで行った。

 双葉はまるで別人の様な風体の装備をしていた。

 胸部、前腕、下腿、腰回りに装甲。その他は動き易そうなインナーを着用しているが、そこはまるでハチの巣の様な薄い模様に蒼い光が波打っている。顔はマスクで覆われていて、彼女のトレードマークであるツインテールがマスクの後頭部から防御魔法でコーティングされて背中に垂れている。

 両手には彼女が愛用しているナイフが取り付けられた拳銃が握られていた。


「隊長、わかっちゃいました? げほっ、うえぇ・・・・・・吐き気する」

「休んでいろ、死にたいのか!? 百合も敵にさらわれて、お前まで失うなんて俺は嫌だ!」

「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・それ、誰にでも言っているなら気を付けた方が良いですよ?」


 どうやら、相手は幹部の様だな。一人は俺が殴り飛ばした鞭の男。そして、なんだか足に妙な魔具をした奴に、ゴツイパワードスーツがいるな。

 

「これは都合が良い。飼い猫さまに唾を吐く愚か者、猫狩りのトップツーの一人が来てくれるとは」


 パワードスーツの奴が両手を広げて大袈裟に芝居がかった台詞を吐きやがった。


「御託は良い。来いよ、ピザスーツ! 相手になってやる」


 その瞬間に俺の目の前に足に魔具を付けた男が迫っていた。


「教祖様にご無礼を、貴様!」

「隊長!」


 ドゴッ! 派手な音と一緒にその男の脚と双葉の脚が衝突した。


「コイツは速いです! コイツは私が沈めますから隊長は教祖を!」

「双葉! お前は下がれ!」

「引きません! こんなにわか信者に敗けていたら、飼い猫さまに笑わられてしまいます!」


 双葉は叫ぶと脚に魔力を集結させると、目にも止まらない速度で動き始めた。とんでもない速度だ! さっきレーダーに映っていたのはこの動きだったのか。


「それが本音だろ! さっさとピザスーツと、SM野郎をぶっ潰して双葉を病院に戻さねーと!」

「飼い猫さまよ、私に加護を」

「アイツなら、こう言うだろうな・・・・・・嫌だね!」


 俺は教祖に向かって走ると拳に魔力を集めて殴りつける。電撃系の魔法も絡めた強力な拳だ! そのデブな装甲打ち抜いてやる!


「愚かな。君は自分の立場、実力を理解していない」


 俺の拳は奴の鳩尾に直撃したが、奇妙な手ごたえがした。まるで柔らかいゴムに包まれた岩でも殴ったような、妙なものだ。だが、俺の攻撃が完全に無力化されたことは理解できた。俺は即座に顔面へと蹴りを撃ち放つが、それも同じ感触が帰って来て終わった。そして、俺が逃げる前に横から鞭の切っ先が俺のパワードスーツの装甲に直撃した。

 いつもなら何ともないが、奴の鞭は装甲の一部を焼き切っていた。

 なんつー威力してんだ! 普通のパワードスーツなら真っ二つだ!


「硬いな、ギルド武器クラスのこの魔具が撃ち抜けないとは」

「ギルド武器!? この教団はギルドにも繋がっているのか!?」

「おっと、話し過ぎた。だが、関係ない・・・・・・ここで死に、貴様は飼い猫さまへの懺悔の旅に出かけるのだからな!」


 鞭の男は更に鞭を俺に伸ばしてくる。

 どうする? 鞭を掴むか? いや、掴もうとも腕に巻き付けても手甲に守られていない装甲はこそぎ取られてダメージしか負わないぞ!?

 俺は必死に動き回るが、奴の攻撃は正確だ。狼に似たあの女の子に似た速い動きは出来るが、俺にスピードを制して自由に動く技術は無い。

 そうこうしている間に、教祖のピザスーツは何やらゴッツイ大砲の様な銃を構えている。


「飛び散りなさい、セフィラの少年!」


 大砲から教祖の叫びと共に放たれたのは純白の光の帯だ。俺は背中から魔力を噴射しながら防御魔法を大量の魔力でガチガチに固めて正面から受けるが、逸らすのがやっとの威力してやがる。光線は壁を打ち抜いて消えた。

 そうしている内にまた鞭が俺の顔面に飛んで来た。

 俺はそれを受けながらも魔法陣から炎を放つが、教祖が前に出るとそれも防御される。結構マジに撃ったんだけどな。規模は小さいが、熱を上げたのに奴は意にも介してないのか?


「弱いですね。セフィラとはこんなものでしたか?」

「うるせぇ! 俺はお前達を殺せないんだ。手加減しねーとな」

「その余裕は君の大切な彼女の死で消せますかな?」

「なにっ!?」


 教祖の言葉の後に十字架に双葉の身体が叩き付けられて、教壇に落ちてそれを粉々にする。彼女はマスクを解除してゲホッと血を吐き出した。

 最悪だ! やっぱり負担が強い!

 美樹と遠山は、案外多い雑魚の相手で彼女を救い出して戦線離脱なんて余裕は無い。


「てめぇら怪我人を相手にして、そいつを人質にするのが飼い猫の教えなのか!? 死神の飼い猫はそれを教えにしていやがるか?」

「飼い猫さまは人間如きに理解できぬ次元の存在。死の神が遣わした者、この教団はその彼の足元に死と共に集い、罪人には許しと癒しの死をあたえる。この女は卑しくも飼い猫さまに心酔し、間違った理念を振りかざしながらもあの方を殺す集団に属した」


 イカれていやがる。

 教祖のその言葉を聴いているだけで怒りが俺の心臓をエンジンの様に動かす。爆発が体の中で起こっている様な感覚に、俺は背中から無限の形の翼を広げる。


「お、おぉ・・・・・・何と言う。悪魔の力か!」

「死神よりは、地味だけどな!!!」


 魔力の波動を撒き散らして俺は教祖と鞭の男と脚に魔具を付けた男を怯ませるが、それがやっとだ。俺の魔法だと双葉も巻き込む。

 くそ、俺の武器は間に合わなかったか!


「ふ、ふふふ! 動かない事ですね、この女を死なせたくないでしょう? 生きたまま、この可愛らしい顔を切り刻みますよ?」

「外道が! そんな事して見ろ、二度と歩けない身体にしてやる!」


 意識も絶え絶えの双葉の顔を掴むと、教祖はピザスーツのマスクを外すと下賤な笑みを浮かべる。


「かい、ねこさま」


 双葉の声が微かに聞こえる。

 その時に俺のパワードスーツに通信が入った。


(やあ、翔太郎きゅん? 御堂だ。完成したブツを渡すからそこで足を肩幅に開いて動くなよ?)

「御堂!? それ所じゃない! 双葉が人質に!」

(ならなおさらだな。逆転できるぞ! この最・新・作!!! パワードスーツオプションパーツプロジェクトの記念すべき第一歩!!! その名も)


 御堂の声を遮るように教会の屋根をぶち抜いて何か、脱出ポッド? みたいな形の魔具が現れると分解されて俺の周りに突き刺さるように着地する。その内側には様々な魔具が収納されている。

 中からその装備達が飛び出して来て俺の身体に装着されて行く。追加装甲、手甲には桜子が作ってくれた装置とカバー状の魔具が装着され、目の前には一本の剣が浮かび、背中には紅いマントにランスが背負われ左前腕部には丸い形をした何かの発生装置が取り付けられている。マスクは形状を変化してまるで中世の騎士の様な見た目へと変貌した。

 

(三神翔太郎専用パワードスーツオプションパーツシステムNO.1ナイトフォーム! 対魔法戦特化型魔力アクセラレーションシステム導入外部装甲兼武装! 敵の攻撃を防ぎながら剣で叩き切るもよし、シールドを駆使してランスで重い突きをぶち込むのも良し、魔法を強化して広範囲をまとめて焼き尽くすも善しなイカす武装だ!)


 俺は背中の翼が装備に供給されて行く感覚と共に剣を握ると、紅い光が俺を包んだ。


「そ、その姿は!?」


 教祖が叫ぶ。

 俺は自己紹介でもさせてもらうとしようか?


「ナイトフォーム。俺の武装した姿だ!」


 俺は剣を構えると一歩前へと踏み出した。



「邪魔臭い化け物が!」

「化け物!? そんな事言うなんて私傷付いたよ! このアバズレ!」


 逆関節になった両脚、頭から突き出した狼の耳、伸びた尻尾と人間から離れた姿をした加々美はフードを深く被った女と、紫の瞳をした男である優と睨み合っていた。

 その隣には同じく耳を生やして大きな狐の尻尾、足も人間ではなく狐の物となっている京子が夏鬼と冬鬼の手に座って足を組んでいる。


「ねー、この二人どうする? 始末するならそうしたいけど」

「それは無理だよ。だってこの二人強いもん」


 加々美の言葉に京子はさらっとそう返す。事実、人外化してようやく押す事が出来ている状況だ。本気で戦うには装備不足だ。

 彼女達は教会の直ぐそばで戦っていた。辺りは戦闘の影響で大規模な範囲がボロボロに壊されて炎が上がっている。


「攻撃、に向けた力の伸ばし方をしていない。それなのにこんなに苦戦するか、運がいいな」

「優君さ、由希子さんが泣いてるよ? 大好きな女の子傷つけて楽しい?」


 加々美がそう言うが、優は鼻で笑うと手に持った大剣を背中に納める。答えるつもりは無いらしい。


「双葉ちゃんを刺したのってサイサリスでしょ? 教祖とあの幹部二人が鉄砲玉みたいな事するわけ無いからね」

「そうだが、それがなんだ? あの教団は利用されただけだとでも?」

「そんなこんなでも、あの椿と黒岳の方にも刺客が向かっているんでしょ?」

「そうだな、あの方々は早熟であらせられる。既に刺客など、死体になっているだろうな」


 加々美は口笛を吹くと身体をひねる。すると、さっきまで彼女の頭があった場所を高濃度の魔力弾が通り抜けて行った。

 毒々しい緑色の光を放つグローブ状の魔具を構える女はフードを取る。

 その顔は加々美と京子も見たことがある人間の顔だった。


「・・・・・・その瞳、彼女にもナニかしたんだね?」


 加々美は両目が紫の光を放つようになった百合を指差す。

 京子は大盾と槍を構えた兵隊を召喚して加々美と自分の前方に配置する。


「何も、私は私の意思でここに居る。貴様たちの様な義賊気取りのイカれた連中を殺すために、あの方の障害を砕く為に」

「素晴らしいね、昔の飼い猫の様な手口だね。客観的に見ると中々に下衆だけど」


 京子はため息を吐くが、優と百合は武器を納める。その動作に京子は少し意外だと首を傾げた。


「此処は引こうか、翔太郎様にも試練が必要と感じたが彼はまた1つ大きくなられた。彼は剣を引き抜いた勇者となった!」

「あの方にまた、一歩お近づきになられた」


 優と百合は満足そうにそう言うと転移魔法でその場から消えた。

 加々美と京子は人間の姿に戻ると大きく息を吐いた。攻撃が全く効かないのだ。心臓や頭を潰しても再生してしまう。

 それは百合も同じだった。


「うへぇ、貧乏くじ引いたよ! ジャンケンで決めるのはもう無し!」

「それは賛成かな。ふぅ、でもあれが人外化施術? 固有能力は人によって変わるんだけどな」

「心の形が同じだったとか? でも私も同じ人狼の使用人さんいるけど、その人は固有能力が斬撃を風に纏って飛ばすだし、同じく透明でも種族が違うとかだしね。被る事は」

「絶対に在り得ない」


 正明の受け売りの答えを京子が言う。

 そうだ、心の形が全く同じ人間なんか存在しない。

 心の形で能力と姿が変わる人外化は、被る事はすなわち全く同じ心の形を意味している。それは有り得ないのだ。正明と真紀ですら正反対の力が生まれたのだから。

 不気味な気分に見舞われながらも二人は霧の中へと沈んで行った。

空間を飛び交う銀の礫

少年の力は道を得たり

日差しが陰る影庭に、少年への非情が狂りと廻る

姿を消す陽炎の王よ、余多に座する群集よ

死の影より聞いた謎に目を向けよ


射てよ少年、撃てよ少年、行けよ少年

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