表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/289

蒼の魔剣と深紅の子供達よ 4

10年前を思い出すと、未発展な時代ほど盛り上がったし、面白かったなーって。アニメとかもね


 俺はオーダーの隊長として防衛不足の責任を負わされると覚悟していたが、それは杞憂に終わり、逆に学校長に学園の不法侵入者を見つけ出し単身で勇敢に立ち向かったとして表彰された。国が注目するセフィラの一人である手前、校長も手出しは出来なかったんだろうか。

 今は全校生徒の前で賞状を手渡されている最中だ。

 だが、釈然としない。

 俺は百合を守る事が出来なかったんだ。こんな賞状に何の価値があるんだ。


「いやぁ、流石はセフィラ! 良く戦ってくれた!」


 校長の言葉に俺は受け取った賞状を全校生徒に向き直ると、ド派手に燃やした。それを見て全校生徒がどよめいた。そのどよめきに敗けない程の大声で俺は叫ぶ。


「俺はこんな名誉は欲しくない!!! 俺は、百合を救えなかった役立たずだ! 拍手も、喝采も俺は要らない! この場にいる力を、志を持つ魔法使い達へと俺は宣言する! 俺は、彼女をさらった犯罪者を倒して必ず学友である山吹 百合をこの学園に連れ戻す!!!!」


 俺は背中から魔力があふれ出しているのを感じた。

 それは美樹を救いだそうと奴の親父と対峙した時の様に、無限の様な形をしていた。そして、大津波の様な万雷の拍手が生徒から巻き起こった。

 劣等クラスのみんなも俺に拍手を送っている。だが、その中でやはり見えるのは正明の呆れ顔だった。

 遠目でもハッキリとわかる。


(ガ・ン・バ・レ・ヨ)


 と彼女の口元が動いた。

 俺は校長に向き直ると、一言。


「俺はただの、無力な子供ですよ」


 それだけ言って転移魔法でオーダーの隊長席に座った。

 百合を助ける。その為にはまず、カルト集団をどうにかしないといけないな。

 

 俺がオーダーの事務所についてから通知が飛んで来た。サイサリスの通信魔法による妨害が無くなったからな。

 その内容は、留守通信だった。


(双葉さんが病室にいないんです! 学園に戻っていませんか!? あの怪我じゃまた倒れます!)

「双葉!? 学園になんかいないぞ!」


 俺は嫌な予感がして御堂に通信魔法を飛ばす。


「御堂! 双葉が行っていないか!?」

(来たよ・・・・・・なぁ、百合君は何か)

「双葉は何をしていった!? 教えてくれ!」

(ん? 新装備を持って行ったよ。何やら元気そうだったね)

「くそ!! ヤバい! 御堂、彼女の位置は解るか!?」

(ん? 彼女は・・・・・・学園付近をうろついてるな。位置情報を渡す、それとお前の)


 俺は通信を切って受け取った位置情報を元に隊長室を飛び出した。


「翔太郎!? どうしたのよ!」

「美樹! 双葉が危ない! アイツ一人でカルト集団へ乗り込むつもりだ!」


 俺は走りながらパワードスーツをまとう。美樹もヴァルキュリアをまとって空を飛行する。


「何処に!? 乗り込むっても連中が何処にいるかもしれないのよ!? それに目的は猫狩り部隊で」

「そうだ! 彼女は自分を餌にしておびき出すつもりだ! くそっ、どんな装備を貰っても十分に戦える身体じゃないぞ!」


 俺は通信魔法を双葉に使う。


「双葉! 何処だ! バカな真似はよせ!」

(あぁ、隊長。その命令は聴けません、私の所為で猫狩り部隊にも影響が出ています・・・・・・それに、連中の信条は飼い猫さまの思考ではありません。汚名は、返上しなければなりませんよね)


 いやにあっさり通話に応じたな。

 だが、確実に独りで無茶しようって感じだ。


「ふざけるな! その身体で戦える訳あるか!」

(それでも、やります! 猫狩りから外されたら・・・・・・みんな、飼い猫様をただの人殺しって思いながら殺そうとするから!)


 その言葉で通信が切れた。位置情報も気付かれたか、見えなくなってしまった。


「クソ! 双葉、バカ野郎。美樹、他の動ける隊員達を集めてくれ!」

「解ったわ、今号令を送ったから今に出撃するわよ」

「全く! 飛んだじゃじゃ馬姫だ!! 相棒、手を貸すぜ!」


 俺の後ろにいつの間にか遠山が飛んで来ていた。事務所から追ってきたとなればかなりパワードスーツの出力を上げているな。

 

「遠山! 私と翔太郎だけで十分よ!」


 美樹が遠山に噛みつくが、奴はパワードスーツの腕から立体映像を浮かべる。それは何かの見取り図の様だが、教会か? 

 そして、続いて街の地図を取り出して拡大すると、ある一点だけが赤く点滅している。


「なるほど、連中のアジトか」

「その通り! ボーっとしている訳じゃないぜ?」


 遠山はマスク越しでもわかる程にドヤッとすると地図の術式を俺達のスーツにも送って来た。視界の端に地図が表示された。その中に俺の持っている双葉の位置情報も入れるが、その時に双葉の位置を示す緑のマークが凄まじい速度で動き始めた。だが、建物を避けるような動きをしている所をみると地上を走っているのか!? なんて速度だよ、飛んでいる俺達ものんびりできないぞ?



「正明、少しいいかな?」

「どうしたの? 華音」


 正明はマフラーを通して、優等クラスにいる華音と話していた。


「どうして、双葉さんに魔装の技術を渡したの? 彼女の性格なら、1人でも戦おうとしちゃうのは正明ならすぐわかったでしょ?」

「わかってたよ? 彼女は絶対に1人で責任を取ろうとする」

「だったら! 危ないって事ぐらい」

「大丈夫、彼女の装備は完全な近接戦特化したスーツだよ。加々美のスピードを参考に作っているから捉える魔法使いは本気で強い奴だけ」

「でも怪我をしているんだよ!? 下手したら、死んじゃうかも」

「華音、君が彼女を追わない理由があるはずだよ?」

「それは、翔太郎君が追って行って・・・・・・それに、正明なら何か知っていると思って」

「言葉に起こせないけど、理解している様だね? その言葉にならない予感は正解だよ。僕は彼女には頑張ってもらいたいからね・・・・・・そう遠くない未来で、僕達と戦ってもらわないと」


 正明はマフラーを愛おしそうに撫でると優しい声色で話を続けていたが、途端に目つきを鋭くして街を眺める。

 左目は静かに街の魔力を診る。


「・・・・・・へぇ、この件は百合の離反でちょっと面倒になっているよ?」

「え? どういう事?」

「加々美と、京子・・・・・・人外化しているね」

「二人を向かわせていたの?」

「見殺しには出来ないからね。僕よりもこっそりできる力を持つ二人だし、京子には摸擬戦でいつも勝てないんだよね。それぐらい、信頼できる二人だから双葉の安全は保障するよ。華音、心配なら二人に協力してあげてよ」

「え!? いいの? 協力して」

「いつも助けられているのは僕の方だよ。今回は、2人と敵に立ち向かって欲しい。あくまで一時的な共闘を装ってね」

「う、うん! 任せて!」

「僕は、大事なお客さんのお相手をしないといけないからね」


 正明はマフラーを空間へと仕舞うと、静かに転移魔法でとあるビルの会議室に現れる。そこにいたスーツ姿の人々、会社員だろう人々は明らかな驚きの声をあげると反射的に防御魔法と攻撃魔法を展開して正明を睨み付けていた。流石は上流階級、それなりの戦闘能力と才能は持ち合わせているのだろう。

 会議室のスクリーンにはパワードスーツの資料が浮かんでいる。パワードスーツに付けるオプションパーツだろう。それに正明は見覚えがあった。


「な、何者だ! その奇妙な仮面は何かの冗談か!?」

「始めまして、僕は死神の飼い猫と呼ばれる魔法使いの天敵。そして、皆様のボスのクライアントでございます」


 そう答えると衝撃波で正明は吹き飛ばされて壁をぶち抜いて隣の部屋を転がった。

 身体に描いておいた魔法陣がオートで防御魔法を発動しなかったら正明は失神していただろう。いや、確実に死んでいた。

 不機嫌になった正明は自分が悪いのを理解しつつも、懐から蒼く光るガラス球を取り出す。それは、炎をそのまま閉じ込めた火炎瓶だ。正明は魔法で体制を立て直して自分が明けた穴から攻撃してきた奴に瓶を投げ付けると、彼は蒼い炎に一気に包まれる。叫ぶ名も無く正明は飛び上がると彼の顔面に靴の底を叩き付ける。靴も魔装の正明は衝撃波をぶつけて彼を気絶させる。


「な、なんてことだ! こんな事をして、ただで済むと思っているのか!?」

「僕はボスに招待されて来たんだよ! まぁ、殺人鬼がいたら普通かもだけど・・・・・・安心してよ、僕は人殺し以外は極力殺さないからさ。ほら、火を消してあげるよ」


 正明は炎を魔法陣に吸い取って魔力にすると小瓶に移してから、希釈したポーションを伸びている男に振りかける。鼻が曲がっていたから魔法でまっすぐにして治す。少し鼻が高くなってしまったが問題はないだろう。

 唖然とする社員たちは会議室に入って来たもう1人の顔を見ると、一斉に頭を下げる。だが、その声には狼狽の色がある事を正明は聴き逃さなかった。


「会長!」

「止めて下さいよ! 俺はそんな、会長なんてガラじゃないですって! 席は譲ったから会長は違うでしょ? 好きでパワードスーツ作っている二ー活大学生ってね。おっ! 飼い猫ちゃん、いつもメールか猫の姿だから人間の身体は新鮮だね」

「御堂衛。壁ぶっ壊したけどいい?」

「え? マジ? いいよ、隣の部屋と繋げよう。ここ狭くてさ」


 御堂衛、竜王の剣部隊副隊長兼メカニックの姿がそこにあった。


「この会議は?」

「材料ありがとう! でも、そこのスクリーンの奴は知らないよ?」

「僕がサービスで入れておいた新兵器。ロゴを入れておいたからミスではないよね?」

「なるほど、横取りして解析して僕に迫ろうとしたんだね」


 その言葉に会社員達は急いで床に顔面を擦り付ける。


「すみませんでしたぁ!」

「いいよ。返してくれれば」


 御堂はそう言うとサングラスを少し操作すると、空間に腕を突っ込んでその魔装を引きずり出した。


「地下の金庫にぶち込んで何重にも転移魔法の妨害術式。余程気に入っていたんだね? でも、まだ甘いよ? 解読は簡単だった」


 そう言うと、御堂は嬉しそうな顔をする。


「良い! これは良い! 魔力ブレード! 凄い、スゲェよ! いいの!? 貰うよ!? 飼い猫!」

「良いよ。それを元に良いの作ってね?」

「あぁ、もう・・・・・・君を抱きたい」

「冗談でもやめてね?」

「むぎゅ」


 御堂は正明の小さい身体をギュッと抱きしめた。


「あぁ、抱くってそう言う・・・・・・でも、匂いはしないでしょ?」

「ホントだ。可愛い女の子ならいい匂いすると思ったけどね」

「匂いが欲しいなら上げようか? 二日は目を覚まさないけど」

「それは御免だ」


 正明は御堂と会議室を出ると、カバー状の魔装を指差して一言。


「出来ているよね? 他のは全部」

「完璧! でも、君はすぐに逃げた方が良いかも」


 正明は察して耳を塞ぐ。その直後に、


「飼い猫ぉおおお!!!」


 大気が揺れると思うほどの怒号と共にで黒と金のパワードスーツが矢のように呼び込んで来た。由希子だ。

 正明は魔力の障壁でその突進を迎え入れるが、力強い大剣の一振りで障壁は粉々になってその奥から冷気で作られた斬撃が飛んでくる。


「えぇ・・・・・・なにあれ」


 正明は引き気味にその斬撃を左手で受け止める。正確にはタイミングを合わせて魔力に分解したのだ。攻撃の無力化を期待できるが、かなりタイミングがシビアなのだ。


「ハメたね?」

「俺のお得意様はサプライズが好きだってね?」

「まぁ、良いけどさ」


 正明は小瓶を数本引き抜いて空間に浮かべてそこから魔法陣を開き、火炎弾をマシンガンの様に放つが由希子は大剣の冷気でかき消してしまう。その隙に正明は術式を組み立てる。今は鎧を装備していない彼は召喚して纏うことが出来ない。

 鎧をこの状態で使うなら小瓶の力をほとんど使って<無限を越えた充足>を発動するしかないが、この状況でそんな事をしたら彼の身体は真っ二つだ。


「由希子さん、怒らないでよ」

「優の事を知っている限り話してもらうぞ! 貴様、彼に何をした!?」

「何をしたって? それは・・・・・・そうか、これが目的かよ」

「はぁ!?」


 正明は御堂を見ると溜息を吐いた。

 そして、静かに語り始める。


「紫の瞳をした男、それが今の優だ。頭に銃弾をぶち込んでも、切り裂いても、焼いても死ぬことは無い謎のスキルを身に着け、右腕が戦闘用の義手になっている。あの方なんていう存在の従者気取りの人殺しになっていたよ」


 正明の言葉に、由希子はマスク越しでもわかる程にうろたえているのが理解できた。


「それは前に聴いた! それは真実なのか!? 証拠は!」

「証拠は会わないと解らない。でも、彼はもう由希子さんの愛していた男じゃないよ?」

「それも聴いたと言っている!」

「証拠なんてない。でも、いつかは出会う事になるよ」

「ふざけるな!!! お前は、彼と戦ったお前だけは! 嘘を吐かないと思ってた」

「嘘なんか吐いて無い。そのロケットをくれた男は、もう一度言うよ? 僕が殺したんだ」


 正明は毅然としてそう言うと彼女の振り上げた大剣を魔法も構えも無く傍観する。


「な、なら! ここで、仇だけでも!」

「よせ! 由希子!」


 御堂の声よりも早く大剣が明の顔に飛来する。

 その黒い刃は正明の額のギリギリでピタリと止まる。


「なぜ、避けない? おい、なぜいつもの小細工をしない! 答えろ! ふざけるな、ふざけるなぁ! お前が、貴様が、そんなことしたら・・・・・・本当の事になるじゃないか、嘘を吐いて無いみたいじゃないか! 何かあるんだろ? どこかに細工して身を守っているはずだ! ほら、不意打ちをして見ろ、いつもみたいに!」

「何もしてない。僕は嘘なんか吐いて無い・・・・・・優さんは殺人鬼になったんだ」


 由希子は大剣を床に落とすとパワードスーツを解除する。


「真実なんだな・・・・・・もう、お前を嘘つきに出来ない。優は、そうか、変わってしまったか」


 彼女の顔は情けなく泣く女の子の物じゃなかった。

 まるで、鍛え直され冷たい水と熟練の鍛冶職人に砥がれた剣の様に、美しくも強い悲しみと決意に満ちていた。


「飼い猫・・・・・・私とお前は、何なのだろうな? まるで、昔から生まれる前から友だったかのようだ。敵と思えなくなっている私がいる・・・・・・お前は人殺しなのに、なんで信じることが出来るんだ?」


 正明は小瓶をホルスターに戻すと、静かに一言。


「アンタが底なしに良い奴なだけだ」


 とだけ言ってポイッと丸められた餅の様な物を由希子に投げ付ける。

 それはピトッと彼女の胸に張り付くと、打撃や爆発は違う力で彼女を大きく吹き飛ばすと床に彼女を叩き付けた。


「ははは! 引っかかったな! バァーカ! あばよ、隊長さん!」


 正明はそう言うと霧の中に倒れるように消えて行った。

 廊下で大の字になった由希子は目を丸くしてしばらく放心すると、大声で笑い始めた。


「ははははは! アイツめ、ははははは! はぁ、なんだか正明と話している様だ。アイツほど可愛くないがな」

「気分は? 優とは、戦えそうか?」

「衛・・・・・・ふふっ、ああ! ぶん殴って、目を覚ましてやらないとな! 見捨てるものか、まだ愛しているんだ」


 彼女は剣を背中に背負うと頭を抑える。


「なぁ、衛。飼い猫は、捕まえないとな・・・・・・アイツは、殺人鬼にしては優し過ぎる」


 由希子はそういって廊下を引き返していく。御堂は手元のカバー状の武器を見て一言。


「何かの計画でもありそうだな」


 とだけ呟いた。飼い猫は優しいが、甘くはないと御堂は思っていたがそれは心の内に秘める事にした。

 完成した翔太郎の装備は既にスタンバイしている。この武装を組み込めばすぐにでも<出撃可能>だ。

剣から始まる物語

彼は風の歌にその詩編を灰にする

動き出したものは希望

戸惑うばかりの少年よ

埃が光の帯を造る部屋で


神よ、貴方は自分勝手過ぎる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ