蒼の魔剣と深紅の子供達よ 2
私の場合、歌は歌詞を見ながら聴くと涙が出るほど共感したりします。
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「ほう? 学園にもカルトの人間が?」
黒岳豊久は部下の報告を聴くと捕まった犯人の顔を確認する。
「ん? 剣術の世界では名のある人間だな。世界に挑戦する資格を持つとか、なんだとか」
「先ほどの者とも関係が?」
「あるだろうが、口を割らんだろう。自分を聖戦士とか何とか言っていたしな・・・・・・殺す必要はない。ただの雑魚だ」
魔具への細工や操魔学園への侵入を考えると素人の犯行では一切ない事は明確だ。だが、やる事が一直線過ぎるのだ。
小細工は中々に効果的な事を行う癖に、実際の襲撃はどうだ? 一対一で戦いを挑んで来た。最初の襲撃で殺された人間は狂信敵ではあるが一般人だった。そんな連中にオーダーの隊員達がああも一方的にダメージを負うだろうか。負ったとしても不意打ちを喰らった一人ぐらいだろう。
そんな事を三神翔太郎は必死に考えている所であろう。
「ふふっ、このネタバラシは取っておくつもりか?」
「は?」
「お前ではない、俺の兄弟達だ」
黒岳は笑うと部屋に入って来た人間に腰の銃を発砲する。魔力弾は空中で刀に絡めとられると、軌道をコントロールされ黒岳へと帰って来る。
その時だった。
弾丸は黒岳の手前で形をシールドに変えて、次の斬撃を防ぐが突破され、黒岳のスタンロッドにぶつかる。
「貴様のスキルか! これまた面妖な!」
「お前の荒げずりなスキルよりは常識的だ」
部下は腰を抜かしている。それもそうだ、目の前で一瞬の内に攻防が繰り広げられて紅い瞳の刀を持ったパワードスーツが突進してきたのだ。黒岳もパワードスーツをいつの間にか装着してスタンロッドで日本刀を受け止めている。
「く、黒岳さま!」
部下がパワードスーツをまとう動きを見せるが、黒岳が右手で部下を制す。
「問題ない、彼女なりのあいさつだ」
「兄弟よ、あの事は聴いたのか?」
「まぁ、聴いた。三神翔太郎には?」
「言う訳が無かろう? 奴は某の中でもかなりの強敵、しかし、奴の動きを見るに聞かされているとは考えにくいな」
「なら、少し泳がせるか。お前が行動を共にしていた紫の瞳の男が一枚噛んでいたか」
「その手下が動いているのだ。奴は別件だ・・・・・・何を考えているのかは解らん」
「親父には会った事は?」
「クズだ。しかし、今は頭を下げて様子を見るのが賢いであろう」
「ふん、予想通りだ。しかし、飼い猫側についた兄弟は」
「賢い女である。某も、殺せるなら殺しているが、奴のスキルは三神翔太郎よりも厄介であるだが、奴は抗っていたな。精神汚染を畏れているのだろう」
「無駄だ。代償は巡る・・・・・・一人だけ、跳ね除けた女はいたが。奴は何かがおかしい、三神は進んでいるが酷くのんびりだ。まぁ、関係ない」
黒岳はそう言うとソファに座ると椿を睨み付けて一言付け足す。
「飼い猫は殺せない」
「なに? 臆したか、兄弟」
「違う・・・・・・奴とはこのステージではぶつかることは無いだろう。いずれ、そうだな・・・・・・我々が何かに突き当たった時に、奴は我々の前に立つだろう。感じただろう? アイツの顔が脳裏に浮かんだ時に、奴の心の一端に」
椿はパワードスーツを解除するとその顔を不快な色に染めると叫ぶ。
「あぁ、そうだとも! 思い出したくも無い、あの感情は!」
「そう、アレは・・・・・・途方もない無力感と悲しみ、そして、静かだが紅色よりも熱く燃える蒼い炎の様な憤怒だ」
「まるで、殺されそうな負け犬のようだ」
「ふふっ、猫だろ?」
「ッチ! だが、なんで某や貴様、三神翔太郎に奴の感情の側面が見えたのだ!?」
黒岳もパワードスーツを解除して腕を組んで考える。
「この、血と関係あるのかもな」
彼は瞳を紅く染めてそう言うと、窓から街を眺める。
今は何処にいるのだろうか? あの、得体の知れない子猫は・・・・・・そして何処か引き込まれる何かを感じるのは何故なのか。
*
「真紀!」
「は?」
「っ! 正明か」
「間違っちゃったんだね? まぁ、よく間違えられるよ。気にしないで」
正明はニコッと俺に笑顔を見せる。そして、その横にいるのはこの前にテラスであった女の子だ。
「君は、あの時テラスにいた女の子か」
「ええ、あの時は連れの女の子を止めてくれてありがとうございます」
楯神志雄と言う名前だったな。優等クラスで話を聴いたが、やはり魔法以外の実力者だったようだな。現に優等クラスの連中が数名、彼女に殴り飛ばされている。噂では防御魔法を殴り砕いたって? 凄い力を持つ女の子なんだろう。
だが、見た目は普通? いや、むしろスレンダーだな。美樹もスラッとした身体つきだけど彼女はもっとスポーティな感じだ。
「見ていたのか?」
「いえ? 聴いていたんです。それに、彼女はもう少し殺気を隠す術を学んだ方が良いですね。戦い慣れた犯罪者には良い的にされますよ?」
「・・・・・・詳しそうだね?」
なんだ? この雰囲気。
彼女と始めて出会った時も感じた。普通じゃない人間が発するオーラ? 中にはその雰囲気を隠せる奴もいる様だが、彼女は隠してもいない。正明もそうだ、以前に優等クラスの奴をアイテムと機転で倒している。そして、普通の女の子が持たない様な。
結構年上の人間と話している感じが離れない。
「おかしいですか? 常日頃から下らないプライドの踏み台にされているんです。他人の悪意に敏感にならない方がおかしいです」
「志雄、彼は悪い人ではないよ。いけ好かないけどね」
正明が少しトゲのある言葉を放った。
「どういう事だ?」
「なんで真紀じゃないんだ? って思ったでしょ?」
「そんな事は思ってない」
「嘘だね。君の中でこの顔は真紀の顔だ・・・・・・でも、気に入らない。同じ顔の奴が彼女を傷つけている、許さないって考えている」
「ふざけるな。お前に人の気持ちが読めるか」
「でも、僕は嫌いになっただろ?」
「正直な。こんな態度を取られたらな」
「自分を正当化するのは良いけどさ、君はこの前の喫茶店で僕を嫌いになってるよ。俺の気に入った女を傷つけたって理由でね」
「うるさい! 違う! 調子に乗るなら相手になるぞ!」
正明はニッと笑うとベンチから立ち上がる。
女子生徒にこんな怒りを覚えたのは久しぶりだ。
「相手? 嫌だよ、勝てないからね。卑怯だね、そうやって自分の土俵に女でも引き込んで黙らせるんだね?」
「そ、それは違う! なんなんだ! 突然俺を挑発して、何が言いたいんだよ!」
「嫉妬だよ。僕の大好きな妹に、触手を伸ばそうとしている奴を気に入る姉がいるかな?」
正明の顔は本気で怒っている様な顔をしている。
「魔理と同棲しているんだって? 妹から聴いたよ。彼女とは友人だから・・・・・・ねぇ、真紀に少し特別な感情を持っているのは解るよ? でも、良い気はしないよね? 同棲している女性がいる男が妹に色目を使おうとしてるって」
「それは、成り行きだ! 彼女とはそんな関係じゃない! 真紀は特別だ!」
俺は自分の言葉が理解できなかった。
な、なにを言っているんだ!? 俺は!
「へぇ? そうなんだ・・・・・・なら、僕は君を好きになれそうにないな」
正明は右手をゆっくりと俺へと向ける。その時、俺は無意識に攻撃魔法を放っていた。
その一撃は志雄が正明を蹴飛ばした事で不発に終わったが、後ろのベンチが粉々になって空中に舞い上がる程の威力を見せた。
「危ないですね。正明も自分で避けて下さい?」
「あっ、いや! 違う、誤射だ!」
「ふふっ、指差しただけで・・・・・・僕を撃つなんてね。志雄、割と本気で痛い」
正明はそう言うと、睨み付けて来た。
その時だった俺は周りに大勢の人の気配を感じた。
「おっ? プールであったね! 元気!?」
塀の上にはあの狼の様な女の子。
「ん? お前、優等クラスだな? なんでここに居るんだよ」
「宗次郎、知らないの? オーダーの隊長さんだよ。凄く強いって、セフィラだってさ!」
長身で涼し気な目元の男子生徒に、正明よりも小さな体に腰までも伸びた綺麗な黒髪の女の子だ。どうやら俺の事を知っているらしい。
「ん? あー、この前のパワードスーツの人か。喧嘩してごめんね?」
「また、喧嘩する、かも。一色触発」
「ん? いいよ? 殴って解り合うのもいいよね」
次は以前に俺とここで戦ったクセ毛に眼鏡の男子生徒が、兎の耳が付いたパーカーを来た丸眼鏡の女の子と現れた。これで俺の周囲には六人の劣等クラスの生徒が集まった。
なんだか、罠の中に引きずり込まれたような感覚だな。
「・・・・・・正明、真紀を傷つけるのは許せない」
「それが本音だな。お前が彼女の救世主になるか? 僕と彼女は普通とは少し違う。お前も普通じゃないが、価値観を勝手に押しはめて救世主面する程偉くはない。セフィラだろうと僕は怯まないぞ? 僕も一人の人間としてのプライドがあるからな」
「俺はそんなつもりは無い。だが、彼女を不要に痛めつけるは絶対に間違ってる」
「なら僕も言うよ。結果だけで全てを否定するのは絶対に間違ってる。君が見たのは、ほんの一欠けらだし彼女の言葉の後ろに潜む気持ちも、君は理解しようとすらしていない」
正明はそう言うと左足で強く地面を踏む。
すると彼女の左側だけにサファイアブルーの結晶が砕けた破片にも似た輝きが浮遊する。それは簡単なエフェクト魔法だが、彼女がするとまるでその結晶が邪悪な物に感じられる。
更に彼女は言葉を続けた。
「自動的にすり寄る女みたいに、彼女が安いと思うなよ!? 僕の妹が欲しいなら、僕を倒してからにするんだな」
正明の声は俺の心に張り付くように迫って来た。
彼女はそれだけ言うと踵を返すと堂々とした足取りで去っていく。それに続いて、集まって来た仲間達も去っていく。それなのに誰一人、俺を邪険にするような表情をしていなかった。
それどころか。
「またね! あまり思いつめないくいいよ?」
「そうですよ、高校生の恋愛なんて貴重な経験です」
プールの女の子、加々美って言ったな、その子と志雄がそう言うと俺の肩を軽く叩いた。
「頑張れ少年! ハーレム構築なら頑張れ! 自動的はいかんぞ!?」
「宗次郎、おっさん?」
「アイリス、それはないんじゃない!? 見ろよ、この若々しいボディー!」
「死ね」
涼しい眼つきの宗次郎はそのクールな見た目と裏腹に喧しいくそう言うとアイリスと呼ばれた女の子にボディーブローを喰らいながら去って行った。その時にアイリスがこちらに軽く手を振ってくれた。
「ごめんね? 正明も妹が可愛いだけなの。あまり深く考えないで? 八雲もフォローいれてよ」
「京子ちゃんって結構お節介だね。そうだな、節度は大事だよ? 正明ってそう言う複数の人とそっちの関係とかは嫌いなタイプだから」
小さな京子と呼ばれた女の子は手に持っていた缶コーヒーを俺に渡して、八雲と呼ばれた男子生徒もニッコリと笑ってそう言うと俺に何かを持たせた。
その瞬間に奥から何かが投げ込まれた。
これは、爆弾!?
「くっ!」
破裂した瞬間に八雲が持たせた物が輝いて俺を何かの膜で包んで爆破の熱量から守った。だが、爆発の威力で無傷とはいえ俺はド派手に吹き飛ばされてベンチを木っ端微塵にしながら庭園を転がった。
「八雲に感謝しなよ。彼が助けないと二日は立てなかったよ?」
「っく! 仕返しってことか」
俺はそう言うと、正明を見るがその時には誰の姿も庭園から姿を消していた。
なんだよ・・・・・・アイツ、真紀とは全然違う!
「ん? これは・・・・・・メモ?」
俺は制服に張り付いていた紙を目の前にかざすと文字を読む。
(ラボに走れ、敵は増え続ける)
「これって!? 正明!!」
すっかり遠くなった彼女の背中は振り向きもしないで授業へと戻って行った。
アイツ、何を知っているんだ?
俺は正明とは逆のラボに向かって走り出した。今はこのメモを信じるしかない。どういうことなのかも解らないし、なぜアイツがこんな事を知っているのかもわからないが、今はこの情報以外の糸口が殆ど無いんだ。
*
「少し、やり過ぎでは?」
「ん? そうかな?」
「バレますよ?」
「呪いの効力は彼が一番薄いからね。決定的となればバレると思うよ」
正明は笑いながら軽い調子で志雄にそう言う。だが、彼自身も何処か面白くないと顔に書いてあった。
「真紀ちゃんの事で心配か?」
その表情を見て、宗次郎が話を振って来た。
「吐きそうなぐらいだよ。僕を気持ち悪いって罵るかい?」
「超きめぇ! 吐きそうだ! シスコン殺人鬼がいるぞ! 警察を呼べ!」
叫ぶ宗次郎の股間に正明の蹴りが炸裂した。
「ひゅっ!?」
「痛いかい? 解るよ、僕も経験あるからね? お前の凡ミスで取っ捕まってさ、敵のギルドに捕虜にされた時にね。しゃべれなくなるよね?」
「罵れって、言うから」
「限度があるわ! なんだ! シスコン殺人鬼って結構メジャーだろうが! ストレートにきめぇって言いやがって!」
「でも、きめぇよ。それは、真紀ちゃんの心次第だろ? お前がとやかく言うなよ。干渉し過ぎだ」
「くっ! し、知ってるよ! 僕だって色々考えているんだよ! でも、一番愛している妹を女ったらしに汚される可能性があると思うと・・・・・・どうしてもトゲトゲしくなるよ」
「俺も同じ意見だけど、お前はしっかり構えろよ。兄貴だろ?」
「え? ・・・・・・ふふふっ、ははははは! お兄ちゃんだろって? ははは! そうだね、僕はお兄ちゃんだよね」
「ぶっ壊れたか?」
突然笑い出した正明は仲間達から怪訝な表情で睨まれるが、内心は穏やかになって来ていた。
母親にも、父親にも言われた事なかったなと正明は考えていた。幼い頃に両親にそう言われていたら、真紀へ嫉妬なんかしていたのだろうか? それを仲間から言われたとなれば、正明には滑稽でしかなかった。それもそうだ。せめて真紀の前では堂々と構えようと彼は感じていた。
お兄ちゃんだからね。
響く雲を裂き月光が街に垂れる
薄い幕のレースのカーテン
先に立つのは過去か? 未来か
到底知ることは叶わんのだ
自虐的気付きを経て彼は瞳を鋭くした
昼の光が、夜の闇の深さなど知るものか




