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第一話 ふと、横の道には

続きです!

一万PV 突破!ありがとうございます!

何か意見やダメ出しなどあれば感想を頂けるとありがたいです!

1


 のどかな一週間だった。

 大きな事件は起きてないし、死神の飼い猫達も現れてない。毎夜の様に姿を表していた連中が一週間も出てこないと不気味ではあるが、俺にとっては都合の良いことだ。

 美樹が俺の休日を吹き飛ばして作り上げたヴァルキュリアは正直に言うととんでもない出来だった。なんだよ、風を取り込んでエネルギーに変換して魔力の代わりにするって発送がヤバい。

 俺は学校の午後の時間帯で、パトロールの途中だ。

 歩きでパトロールってのもあれだが、俺がセフィラになってから街の人々が俺に必ずあいさつするようになった。


「あら? セフィラの三神さん? 応援してるわ、飼い猫を捕まえるって警察の部隊に入ったとか。私の息子は飼い猫を応援してるんたけどね、私はあんな強力な魔法使いが殺人犯なのが怖いわ」


 主婦らしき女性が話しかけて来るのも日常的になったな。

 飼い猫か、奴の影響力も凄まじいな。あのデモ隊の事件の煽りで変な宗教も出来たって聴く。


「安心してくれ、仲間たちと戦う。俺の力なんかで何処まで奴と渡り合えるか解らないけど」

「謙虚なのね、頑張って下さい」

「ありがとう」


 俺は笑顔で敬礼を返して主婦の女性と別れたが、その時だった。古い喫茶店、そこに白い影が入って行くのを見た。

 普通の人間があんな光を、そもそもあれは光だったのか? ベールと言うか、何かの魔法であることには変わらない。


「見てみるか、あの影。怪しい」


 俺は手甲を召喚して喫茶店のドアをゆっくりと開いた。


「いらっしゃい。おぉ!? セフィラのお一人か! 珍しい、お客様ですな!」


 年期の入ったオーナーがカップを磨きながら俺に普通にあいさつしてきた。店内はレトロで落ち着きのある美しさ造りだ。

 さっきの白い影は見えない。


「あ、すまない。今、この店に何か入って来なかったか? 白い影みたいな」

「白い、影? 白い子猫ちゃんなら来たけどね。ほら、角の席にいるあの子だよ」


 俺はオーナーが指差した席を見ると、そこには白い猫耳パーカーに蒼い右目に小さな身体。忘れるはずもない、正明の妹、真紀だ。


「真紀?」

「ん? 翔太郎君か、どうしたの?」

「どうもないよ、なんで白い影なんかまとって歩いていたんだ? あ、座っていいか?」

「良いよ。って、白い影? 私は知らないよ、夢でも見たんじゃないかな。白昼夢とか」


 なんだかぼーっとしているみたいだが、よく見ると身体の至るところに傷がある。


「その傷、どうしたんだ? もしかして、優等クラスの連中か?」

「ん? あぁ、お兄ちゃ。じゃない、お姉ちゃんが強くならないとって」

「なに? 正明にやられたのか?」

「半分そう。でも、楽しいよ? 疲れるけど、少しずつ色んな事が出来る様になって来たからね」


 それって、戦闘訓練か?

 素人がやって良い事じゃないぞ!


「そんな事はやめるべきだ。この前、君のお姉さんは力を使えないと嘘をついた! でも、これじゃ本末転倒だぞ。戦いを避けるために君を俺達から遠ざけたんだろ!?」

「んー、私ね、魔力の調節が下手くそなの」


 魔力の、調節?


「小さな魔法でも、身体の魔力が過剰に溢れてね。それに、身体が弱いから魔力が尽きると危ないんだ。お姉ちゃんは、そんな私をずっと守ってくれてたの・・・・・・自分はもっと身体が弱いクセに」


 それって、結構深刻な問題じゃないか?

 俺は考えもしなかった。魔力を持っていても体質が実力を殺している、そんな人間がいるなんて。


「でも、守りきれなくなるかもって。だから、強くなって欲しいって私を鍛えてるの。不安だよ、お姉ちゃんは怖い所もあるけど凄く優しいから」

「正明は、どんな奴なんだ? 正直掴み所がないんだ」

「猫のような人」

「ん?」

「気まぐれで、寝ぼすけで、少しわがままで、甘えん坊。でも、怒るとライオンより怖くて過激な人。私よりも気持ちが優しいから、背負い込んじゃうんだよね」

「でも、傷だらけの君をほっとけない。正明に合わせてくれ、強くなるならオーダーでもいいだろ?」


 俺がそう言うと、真紀はあからさまに困った顔をした。

 それはそうだ。この前に険悪になったばかりだからな。


「翔太郎君と、お姉ちゃんはコインの裏表って感じがする。私は疲れているだけで、辛いって思ってないよ? それに、私はそんなに弱くない」


 そう言う真紀の瞳には気丈な光が宿っていた。蒼い瞳、悪や憂いの象徴の色。それなのに、こんなにも優しくて美しいものだったのか。

 彼女の何かに俺は惹かれていく。


「ねぇ、翔太郎君」

「えっ、なんだ?」

「何か飲む? 私はココアかな。翔太郎君は?」

「コーヒーでいい、なぁ、もう少し色々話していいか?」


 俺の言葉に真紀は笑顔で答えた。


「良いよ。何を話す?」


 俺は少しの間、彼女と共に過ごした。何故だか、いつもより懐かしい様な感覚が強い。

 もしかしたら、彼女とは昔何処かであっていたのかもしれない。



 真紀は授業を抜け出したのだそうだ。諸事情あって抜け出すこともあったが今回は姉と、つまりは正明と待ち合わせをしているらしい。

 ココアをまったりと飲んでいる真紀は子猫の様に愛らしいく見える。

 そんな彼女を堪能していると、店に正明が入って来た。

 真紀と同じ顔だが、左目の蒼は何処か真紀の色と比べて冷たく感じる。色合いも同じなのに、何故か正明の気配は冷たい感じがする。

 冬の夜風に冷やされたアスファルトの様だ。


「ん? 翔太郎君も一緒か。何か言いたげだね、妹の傷に関してかな? それともやっぱり彼女がオーダーに欲しい。それは薄そうだけどね、それとも妹に惚れた?」

「ぐっ!? げほっ! な、何を言っているんだ!?」

「男がそんなに興奮と安らぎを持ち合わせた表情をする時は大概、好きな女の子の前。で、僕を見て表情を曇らせたね? この前の事を引きずる君じゃない、つまりはケンカした僕を煙たがった訳じゃなくて、妹の側にいる厄介な僕が嫌なんだろ? それに加えてその怪我は僕のせいだって」


 な、なんつー推理してんだよ!

 だが、俺が真紀をどうこうはともかく、奴は俺の考えを顔を見て読み取りやがった。こいつ、何者だ? 真紀はのんびりした普通の女の子だけど、正明だけは何もかもが特異だ。

 正明の顔に怒りや焦りはない。むしろ友達にあったとしか考えていなさそうだ。


「マスター、コーヒーちょうだい。苦いの」

「ふふっ、かしこまりました」


 常連なんだな。マスターも正明の様子を見て微笑んでいるし、真紀は何かを悟った顔をしていやがる。


「真紀、怪我ならすぐ治せるのに」

「すぐに治せたら生きてるって感じしないもん。それに、危機感が薄くなっちゃうよ。みんなは治した方が良いっていうけど」

「大丈夫、危機感は自然と身に付くよ。みんなは治さないと死ぬレベルでやってたからね、僕なんて肋骨が砕けて痛みで気絶してさ」

「おい! な、なんつー訓練してんだ!? それ、習い事じゃないだろ!」


 肋骨が砕ける? こんな女の子がそんな怪我をする訓練って拷問だろ!


「冗談だよ? ははは、翔太郎君は真面目だなぁ」


 冗談に、聞こえるわけない。

 こいつの顔は全く笑って無かったぞ。


「お姉ちゃん、翔太郎君と話してたんだけどスキルの起源ってわかる?」

「スキルの起源? そんなの学者でも解らないよ。スキルの特定はできるけど、起源か」


 正明は注文したブラックコーヒーを涼しい顔で飲むと少し考えるような仕草をすると、俺の左胸を指差した。


「心臓がエンジンだったりして? 魔具の核見たいにさ。君のスキルは有名だよ、魔力の無限増殖なんだって? 何処から発生しているんだろうね? そんなもの」 


 正明はそう言うが、ある意味そうだ。俺の魔力は心臓から放出されている。

 起源なんて、普通わからないよな。


「翔太郎君、真紀の心配はしなくていいよ? この子は強いから、すぐにでもこの傷は消えるさ」


 正明は呟くと、真紀と同じ顔で苦いコーヒーをまた一口飲んだ。

 不思議だ。

 真紀と正明は間違いなく同い年だし、顔も老けてない。それなのに、なんでだ? 正明が真紀や俺よりも、いや、由希子よりも長い時間を生きてる様な。

 存在の密度? 謎の威圧感? 解らないがそんな気がしてならなかった。

哀しみに包まれた出会い

彼はすれ違う、数多の人に

彼は出会う、数多の愛に

不幸である


通り過ぎしは、夜より暗き暗闇に冷たい雨に浸りし安穏

白い影を踏むべからず

夜が明けぬその時は人ならざる者の時也

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