エピローグ
逃げろ。
まずは生きる為の基本を
1
奴らは手強い上に、頭が良い。
魔法の強さではない、連中にとっては殆どが遊びなのかも知れない。まるで何でも入った玩具箱を与えられた子供の様に色々な戦術や武装、魔法を使いやがる。
俺は警視庁の応接室で向かい合って座る黒岳豊久の顔を睨み付ける。
切れ長のまぶたに光の無い瞳が収まり、身体は細いが鍛えこまれているのが一目でわかるほど引き締まっている。言葉は少ないが実力者と解る雰囲気は隠しきれていない。黒い髪に黒い瞳、服装も黒系の色で統一している。
なんだか、闇を人間の姿に落とし込んだようだ。
「お前は、いつもそうか。成る程、子供じゃないか」
「口を開いたかと思えばそれか。見下すなよ、立場は対等だ」
「だからガキなんだ。お前はこの席についてから俺との優劣の事しか頭に無い。力を持っているだけ、まるで成金野郎の息子のようだ」
「黙れ、人殺しが」
「全ては正義のためだ。平和を破壊する原因となる兄弟達の抹殺が俺の任務だった」
「俺は誰も殺してないぞ」
「いつか、殺す。俺には解る、お前は他人を思いやる素振りをするが、そんなに素晴らしいものじゃない。女か? 金か? 優越感か? その為に力を使うだろう」
「てめぇ、自分を棚に上げて好きに言うじゃねぇか!」
「俺は既に暴走している。お前は怒りか? 俺は正義感だった」
感情のない顔で言われても説得力なんかない。だが、俺の情報はこいつに?
「まぁ、死神の飼い猫を殺すまでは手を貸してやる。それが終われば、貴様を含めた兄弟達を殺す」
「ふん、勝てればな」
「勝てる。奴らを引き離して1人にすれば簡単だ」
「そうかよ」
俺はこいつが嫌いだ。
気に入らない、本当に気に入らない。その時、タケルが部屋に意気揚々と入って来た。
「よっ! お二人さん! メンバー全員の顔合わせといこうぜ!」
「ん? 揃ったのか?」
「あぁ、みんな入ってくれ!」
タケルがそう言うと部屋に数人の男女、いや、女の子だけだな。それは全員、知ってる顔だ。
「鳴神華音です。って、まぁオーダーだから知ってるか」
「室井双葉です! 私もオーダーからの参戦です!」
「翔太郎、私も就くわ。よろしく、北条美樹よ」
「なんだか、わかんないけど私も呼ばれた。竜王の剣部隊から参入します! 杉崎魔理です」
そして、紅い瞳に日本刀を携えた。
「真田椿! 故あって死神の飼い猫討伐に名乗りを挙げる! 兄弟達よ、暫しの休戦だ。邪魔な奴を始末するまでは手を貸してやろうぞ!」
おいおい! こいつもかよ!
「以上の5名と、男3人。締めて8人の部隊だ! 仲良く行こうぜ! 天才諸君!」
死神の飼い猫達、スペクターズは7人。
対抗してのこの数か!?
俺は微妙にまとまりのないこいつらの顔を見て頭を抱えた。大丈夫なのか? このチーム。
*
正明はパワードスーツを着た真紀とWELT・SO・HEILENの訓練場に来ていた。
広い場所で、いくら暴れても良いと言う感じだ。とは言うものの岩場でもあるここは遮蔽物にも困らない処か、森や池、川もある。
ここが、正明達が基本的な力の使い方を練習した場所だった。
「お兄ちゃん、急にどうしたの? 力は使っちゃダメだって」
「そう、だけど状況が変わったんだ。真紀、君は力の使い方を知らないといけない。言いたくないけど、僕がもし死んだら・・・・・・君が、WELT・SO・HEILENを引き継ぐことになる」
正明の言葉に、真紀はパワードスーツのマスクを外して彼の顔を見る。
「お兄ちゃん!」
「万が一だよ。僕は死にたくない、真紀が赤ちゃん生むまではね」
「じゃあ、生まない」
「真紀、頼むよ。お兄ちゃんは幸せになっちゃダメなんだ。真紀はいつか自由になれる。その時が来たら、普通の生活をおくれるよ・・・・・・僕はこの船を降りれないけど」
真紀は正明の背中を抱き締める。
「その時はお兄ちゃんも連れてく! 私は逃げないし、お兄ちゃんを逃がすつもりも無いから! お兄ちゃんも自由になるよ、華音お姉ちゃんが待ってるから!」
太陽の様だと正明は微笑むと、真紀に向き直って
鎧の姿になる。
「その為にも、強くなろう。これから、魔法術式を用いての模擬戦闘を開始する」
正明がそう言って漆黒のマントを翼の様に翻すと、黒い霧の中から仲間達も姿を表した。その姿は仮面を着けて、それぞれの鎧を着こんだ本気の姿だった。
まるで魔王の軍。
いや、魔王達が一同に介したかのような圧倒的な迫力が真紀の身体を打った。
まるでいつもの皆とは別人だと、真紀はたじろくがそんな暇すら無かったのかもしれない。
「早速だ。真紀、全力で・・・・・・逃げろ」
正明はそう呟くと突然、剣を抜いて真紀に斬りかかった。
魔王の、訓練が始まった。
嘘つき、卑怯者、犯罪者
それを始めて見たのは幼い頃
そうなるなと言ったのは大人達
恐ろしい者から私を守る姿に憧れた
だが、恐ろしい者達も大人?
見上げる顔に仮面が張り付く
その時、私は大人になった




