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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
死神の飼い猫は正義なのか?編
79/289

猫狩り 3

猫は逃げの達人

3


「飼い猫だ! 出たぞ!」


 突然の通報だった。

 死神の飼い猫が俺が昼間に捕まえた犯人の主犯である兄弟達の一人を殺したらしい。

 刑務所には行ってないにしても、捕まっているのは警視庁だ。どうやって殺した? 忍び込むにも転移魔法は使えないし、すり抜けるなんてとても無理だ。

 そんな事を考えて俺はパワードスーツでビルの間を飛んでいた時だった。


「上だ! 翔太郎!」


 タケルが指差す先にはサファイアブルーの光の粉を放ちながら優雅に飛ぶ飼い猫の姿があった。鎧じゃない、いつもの黒い猫耳フードに背中にはヴァルキュリアの翼と似た魔具を取り付けていた。

 あいつ、あんなに余裕そうに!


「飼い猫!」


 俺の声に奴はなに食わぬ顔で振り返った。仮面で素顔はわからないが意にも介して無いって感じだ。

 偉そうにしやがって! アイツは本当に掴み所がない、恨めばいいのか、親近感が湧くのか、全然わからない!


「猫狩り部隊か、俺の仲間が名前がダサいって怒っていたな」

「飼い猫! どうしてデモ隊を殺した!」

「あぁ、そう思ってはいないな? お前、この事件に疑問は抱いているが俺を犯人にした方が楽だからそう言ってるだろ。由希子さんは怪しんで俺の討伐組織への加入を蹴ったらしいな」


 こいつ! バカにして!


「俺は真実を知りたいだけだ!」

「どうでもいいくせに、お前が必死になるのは女が絡んだ時だけだ。警察もバカだな? お前の取り巻きから1人、人質を取れば良いのに」

「貴様ぁ!」


 俺は魔力を少しだけ暴走させてしまうが、お陰で全力でぶつかれる。俺は超加速して飼い猫へと突っ込んだ。その瞬間、俺は飼い猫を吹き飛ばしていた。

 歌がないとやっぱり昼間のように滑らかに加速が出来ないな。


「お前は真っ直ぐ過ぎるんだ。頼ってる物と、弱点もまるわかりだな」

「なっ!?」


 飼い猫の声が聞こえたと思えば俺は頭上から蒼い火球を受けた。大したダメージじゃないが、奴は無傷でビルの壁面に立っていた。


「バカな、拳は当たったのに」

「確かに強い拳だ。だが、顔面を狙うことは読めてたし、派手に吹き飛んだ敵を追撃なんかする性格じゃない、それにお前は心の中では他人を見下している」


 飼い猫は俺にそう言うと空中で滞空すると。その場に黒い椅子を作り出すとそこに座る。まるで、玉座に王が座るかのような貫禄がある。

 見た目は小柄な女の子なのに、なんだか、幻でも見せられている気分だ。


「ふざけるな。みんな対等だ! 人の命を秤にかけるお前と一緒にするな!」


 俺は魔法を奴に放つが、奴は小瓶で分解してしまう。話してしまうと奴の術中にはまる!

 攻めろ!


「相棒! 不用意に近づくなよ!? こいつに触れられるとたちまちアウトだ!」

「わかってる! タケル! 援護しろ、俺が接近して叩く!」

「了解!」


 俺は魔法の中から現れた奴を追撃するが、それはおとり、正解はタケルが放つ高火力のビームだ。

 が、放たれたタケルの攻撃は飼い猫に当たる前に弾かれてまるでビリヤードの玉のようにビルのあいだを跳ね回る。これは、防がれた訳じゃない!


「防御しろ、首が吹き飛ぶ」


 飼い猫の心配そうな声色に俺は怒りを覚えるが。

 くそ! まさか!


「タケル! 防御しろ!」


 俺も防御魔法を張るが、その直後にタケルの放ったビームが俺の顔面に直撃した。防御を撃ち抜けやしなかったが、顔面だ!

 どんな防御魔法を使ってやがるんだ!?


「よし、上手くいったな? ん? ちっ、奴だ!」


 飼い猫が焦ったような声をあげた瞬間、頭上から雷が落ちて来た。

 とんでもねぇ、山の中ではデカイ柱のような雷が落ちるって聞いた事があるがこれは、それと同等の規模なんじゃないか?

 俺と同じ規模の魔法、奴だ! スタンロッドの男!


「猫狩り部隊隊長、黒岳豊久。これより、死神の飼い猫の討伐任務へ移行する。パワードスーツ装着許可を」

(装着を許可します。デフォルトフォーム、スピードタイプでのスタートとなります)


 女性の声によるアシスト音声と一緒に、奴がパワードスーツを装着していく。

 って、アイツが!? 黒岳豊久って、アイツの事だったのかよ!


「はぁーあ、プロフェッショナルに翔太郎。セフィラが二人って冗談だろ?」

「殲滅する」


 黒岳はそう言うと電気の帯を引きながら飼い猫へと雷の槍と化したスタンロッドで突撃する。飼い猫は焦った様に逃げるが、すぐに黒岳の拳銃が奴を捕らえる。


「っ! やっぱり一筋縄じゃないか」


 飼い猫は何とか弾丸を防いだようだが、黒岳は腰から射出されるワイヤーで飼い猫を捕まえる。

 が、直ぐに飼い猫は空中でブースターで身体を回転させると引き寄せられた黒岳に逆噴射を浴びせる。蒼い衝撃波がワイヤーを焼き切り、黒岳を燃やしながらビルの壁に吹き飛ばした。


「なんだかわからないけど、タケル! 俺達も加勢するぞ!」

「時間ピッタリ、賭けに向いてそうか? 俺」


 飼い猫はそう言うとワイヤーをほどきながら瓦礫から飛び出した黒岳と、接近する俺をそれぞれ一瞥いちべつすると黒岳の方に牽制で攻撃魔法を放つ。扇状に広がる炎のカーテンだが、黒岳には効かないだろ。

 速度は俺の方が上! もらった!


「よいしょ」


 ぐにゃ、と俺の進路が微妙にずれた。

 今の声、誰だ!? 魔法で進路が!

 そう思った時は飼い猫が俺の身体の上を転がるようにして避けていた。奴の身体能力じゃない、背中のブースターを上手く使って避けている! アイツの肉体的疲労はゼロだろう、さっきの逆噴射もアイツ自身は体力を使っていない。

 そして、炎のカーテンから突き出て来た黒岳と俺は正面衝突した。くそ! 仕向けたな!? 


「はい、バァーン」


 俺の視界にはビルの窓に座る魔医学の兎が映ったその瞬間に俺は衝突で白黒する視界が何かに覆われているのを見た。

 瞬間、閃光。

 パワードスーツのマスクが警告のアラームを鳴らしている! どうやら、爆発に巻き込まれた様だ。


「ぐぁああ! 爆発か!」

「どけ、邪魔をするな」


 黒岳は俺を押し退けて直ぐに体制を整える。今の今まで爆発の中にいたんだぞ!? なんてタフな奴だ。


「堅いな・・・・・・鬼、狼、羊は前衛だ。鴉、一発だけでも構わない、急所を狙え。俺と兎は後衛、狐は雑魚の相手をしろ」


 飼い猫が指示を飛ばすが、黒岳は正に電光石火だ。もう奴の目の前だ陣形もなにも、整える暇がない。

 

「速いな!」


 飼い猫は小瓶を三本目の前に飛ばして電撃を分解して防ぐが、黒岳は直ぐに肉弾戦に持ち込む。確かに奴と距離を開けては、一方的に攻撃される、攻めるしかない!

 俺も黒岳の後に続くと、飼い猫に蹴りを打ち込む。黒岳の邪魔にならない様に位は動ける!


「投降しろ、飼い猫。貴様に勝ち目はない、セフィラを二人も相手どるのはナンセンスだ」


 黒岳の言葉に、無機質な仮面が笑った気がした。


「俺は死神の飼い猫。冷たい死の風を罪へと運ぶ一匹の猫、例えセフィラと言えども・・・・・・あー、ネタ切れだ。ここで良いか?」

「ん?」


 防御魔法で必死にガードしていた飼い猫だが、突然ストンと緊張感が抜けた声を出す。

 援護か、罠か! と黒岳と俺の攻撃が一瞬緩んだその時!


「目の前だ」


 俺と黒岳の胴体には銃口。

 しまった! ブラフか! 本命はこっち!


「その、後ろだ」


 衝撃は背中からした。

 そこからはまるで引き寄せられる様に地面へと俺と黒岳は落ちた。このスキルは、くそ、鋼夜の鬼だ!


「強みは封じている。三神翔太郎、お前は基本能力は無敵だが一直線過ぎる、仲間を全く活かせてないし嘘つき卑怯者の俺と戦うならスナイパーは後方につけておけ、そして、魔力の出力を調節しろ。恐らく武器が使えないだろうな、使える様にしておけ」


 飼い猫はそう言うと、早々に立ち上がった黒岳と鬼がぶつかる様子を見守っている。よく見ると、鬼と一緒に境界の人狼も戦っている。

 なんで、黒岳は直ぐに立ち上がったんだ?


「くそ、陣形は御座なりだ。ん? 由希子さんか・・・・・・逃げるぞ このままでは負ける」


 飼い猫は落ち着いて呟くと黒岳に1人の男が正面から切り結んだ。西洋甲冑に羊の角、魔封じの身代わり羊だ。

 その隙に鬼と人狼は撤退、俺はタケルを見ると奴は多くの使い魔と戦っていた。援護が無かったのはこれが理由か!

 俺が行くしかないか!?

 その時、遠方から俺の肩に魔法の矢が撃ち込まれた。なんつー威力だ! 俺の身体がひっくり返りやがった!


「羊、無理はするな」

「排除する。貴様は俺より弱い」


 黒岳は羊の斧を弾くとスタンロッドの突きで奴を吹き飛ばした。


「ぐぁ! つ、強いね」

「ん? 死んでない。成る程、防御魔法の天才か」


 黒岳は無造作にそう言うが、俺と同じく狙撃を受けて身を低くしていた。

 その隙に羊は撤退していた。


「飼い猫!」


 俺は魔法を生成して奴へと放つ。防御魔法ごと貫く攻撃だ! 分解する前に戦闘不能にする!


「また会おう、猫狩り部隊」


 俺の魔法は飼い猫の腕の一振りだけで消え去った。

 アイツも、凄まじい魔力の持ち主なのか? 俺の魔法はそこいらの防御魔法じゃ防げないのに!

 奴は俺の魔法の残骸である紅い光の向こうへと消えて行った。


「くそ! 嘘だろ!?」


 これが、天才の領域なのか? 操魔学園のスクールカーストなんて子供のお遊びだ。本当の天才をあの優等生達は知らない、俺もオーダーレベルの戦いじゃ追い付けないのか!?

 黒岳は無感情にスタンロッドを腰のホルスターにしまうとパワードスーツを解除して何処かへ通信していた。


「ターゲットロスト。敵の転位魔法の仕組みを知らなければ追跡は不可能と思われる、解析班に視覚映像を送れ。敵のリーダー及び構成員の戦闘能力に明確な差は無いものと考えられる、しかしチームでの戦闘を好む様だ」

「おい、あんた」


 俺の言葉に黒岳は瞳だけこちらに向けると、「以上、黒岳アウト」と言って通信を切った。


「新しいセフィラか。前のセフィラは、死神の飼い猫に殺されたな。奴も兄弟達だったが、このままではセフィラが兄弟達で埋まりそうだな」

「俺達の仲間なのか?」

「仲間? そうだな、協力関係にある事実上の敵だ。お前は覚醒してから日が浅いな」


 こいつ、見ただけで解るのか?


「飼い猫は強い。だが、魔法じゃない。奴と仲間達は品の数が豊富で全てを使いこなしてくる。まるで路地裏のチンピラが頭を使った様な戦いだ」


 黒岳はそう呟くと拳銃を引き抜いて後ろへ銃を向ける。

 そこには、誰もいない。


「なにをしているんだよ」

「いや、気のせいか。猫の声が聴こえた様な」

「タイムリーだな。戻ろうか?」


 そう言った時に俺にだけ見えた。

 白い子猫がビルの間にスルリと逃げて行くのを、たぶん俺だけ見たな。

 その猫を俺は知ってる気がした。

金属の擦れる音

複数人の足音

歪んだ霧の扉を翼が開く

席に着け、王達よ、話をしよう

円卓に置かれた未来の鍵よ

未来の希望に我らの力を、絶望に歪みし我らの償いを

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