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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
死神の飼い猫は正義なのか?編
78/289

猫狩り 2

怨まれなくちゃいけない。

進まなければならない。

2


 残党を残らず捕まえた俺達は警察の人々に少しだけ撤収を待つように命じられていた。

 なんだか物々しいな。


「お偉いさんでも来るのか? ま、興味ねーけど」

「そう言うなタケル。何かあるんだとしたら俺達にも重要だ。それに警察はオーダーの親みたいな物だしな」


 オーダーは警察の管轄で活動をしている。と言うのは形式的、書類上での事だがな。若くて向こう見ずな力のある魔法使いを正義の元に置いておこうと言う意図がそうしているだけだ。

 そんな事を考えていると、なんだか豪華な車が俺達の前に止まった。

 降りて来たのは、今朝の放送で飼い猫を批判していた中年の男だった。こいつ、確か。


「オーダー諸君。私が、まぁ堅苦しい挨拶は省こう。警視長官の差江島 秀夫だ」


 やっぱりな。

 こんな大物がオーダーに何のようだ?


「あぁ、貴方が若くしてセフィラの魔法使いとなった! 三神翔太郎様ですね!?」


 警視長官は俺を見るとやけにへりくだった態度を取ると俺の手を強く握って来た。まるで長年の恩師と再開した様な。


「待ってくれ、俺はアンタに使われてる人間だぞ? そんな態度じゃ示しがつかねーんじゃねえの?」

「この世界、魔法の力こそが優劣を決めます。貴方様はその力を正義の為に使う、尊敬に値する偉大な人間です。ご自分の価値を理解し難い立場に置いた事は御詫び申し上げます」

「俺はここでも良いが、本題はなんだ? わざわざ俺の部下達まで待たせて」

「はい、翔太郎様にはこれから行われるとある作戦でそのお力を御借りしたい所存でございまして。部下の諸君はその作戦で結成される部隊の下請けとしてサポートをして頂きたいのです」


 部隊? 作戦? 警察は何をしようとしてんだ?


「どういう事だ? 作戦? 何を考えている?」

「奴を討伐する部隊の結成を急いでいます。一人目は貴方と同じセフィラの黒岳くろたけ 豊久とよひさ様を迎えております」

「奴って、まさか」

「そう、奴・・・・・・いや、奴らです。死神の飼い猫を筆頭に、スペクターズと呼ばれる闇の魔法使い達の討伐でございます」


 セフィラを二人も加えての討伐部隊!?

 完全に、殺すつもりじゃないか!?


「ふざけるな。俺は殺しの手伝いなんかしない!」

「我々は飼い猫なんて野蛮な化け物とは違うのです。討伐と言っても、連中の確保。特に、飼い猫を捕まえる事が目的となります」


 怪しいさしかない。

 コイツらの考えは解らない。が、俺の力の根元とこの手甲。そして、兄弟達の秘密を知るのは飼い猫が一番近い。

 俺はタケルを見る。


「相棒は俺も連れて行けってよ! 警視長官さん!」

「おい! ったく。わかった、俺も参加する。代わりに、殺しを命令したらその時にはアンタ達を止めるからな」


 俺がそう言うと、警視長官は書類をだす。そこに俺は魔法で名前を書き込んだ。それはタケルも同じく名前を書く。


「ようこそ、猫狩り部隊においでくださいました! 翔太郎様!」


 俺は警視長官がそう言った時に、華音と目が合った。

 その目はエメラルドの様に強い光りを仄かに放っていた。俺や兄弟達の紅い瞳、真紀や正明の蒼い瞳の様な光り。

 俺はそんな彼女に何処か、懐かしいような。ずっと前から知ってた様な、真紀と正明に出会った時の様な感覚がした。



「猫狩り部隊って・・・・・・センス無いよ! 狼狩りに改名してほしいな。よし、電話しよう」

「とんでもない事をやり始めたな。警察も本気って訳だ」


 真紀の話を聴いて加々美か憤っているが、そんな事は無視して正明は第一船の甲板で仲間たちと難しい顔をしていた。

 セフィラ二人に遠山タケルが現時点では加わっている。これは名前をばらされる可能性もある。下手をすれば背中から刺されるかもしれない。不意打ちの危険が高まってしまった。

 だが、それはタケルも同じだ。七人もいるメンバーを一気に暗殺など不可能。それに、正明以外は鼻や感が人外化の影響で鋭い。それに魔装で身を固めた連中を一撃で殺すのは軍事兵器で吹き飛ばさないと無理だ。

 一人殺したとしても、待っているのは残りのメンバーからの容赦ない報復。これが抑止力になっている。


「あっ、もしもし? 警察の方? 最近そちらの方で結成されました猫狩り部隊のネーミングについてですが」

「何処に、通信しているんですか?」


 加々美の言葉に志雄がひきつった顔で問うが、彼女はお構い無しにデバイスの先へと言う。


「やっぱり猫狩りってダサいと思うので、狼狩りにした方が安定だと思うんですよ! もしくは鬼退治部隊っていうのもユーモアがあって、え? 名前? 私のですか?」

「ま、待って下さい! その連絡先ってもしかして!」

「んー、境界の人狼でわかりますか? 一応そちらの方で着けてもらった名前なので、はい、あっ盗んだ魔具は改造しました。それよりも、ん? もしもし? どうしたんですか? そんなに騒いで」

「馬鹿野郎ォアアア!?」


 正明は加々美のデバイスを取り上げて通信を切ると、彼女を束縛魔法でぐるぐるに縛りあげる。


「いだぁあああ! 正明! こう言うプレイは華音ちゃんとしてよ!」

「大丈夫、相手は、私」


 叫ぶ加々美にチェーンソーを持ったアイリスが詰めよって行く。


「いやぁああ! ハードなエロ同人でしかわかんないよ! こんな展開!」


 騒ぐ駄犬を余所に、正明は頭を抑える。


「このバカめ、確実に挑発ってとられたな。猫狩り部隊は多分非公式、それに前にこいつが警察から魔具を盗んだ事を言いやがった。これも公に言っていない、確実に本人だと言う証拠をこうも無意識に並べるとはな」

「これって、宣戦布告って事にはならないんじゃ? 名前を変えろって文句言っただけだろ?」


 宗次郎が加々美の顔をむにむにと摘まみながら呟くが、現実は違う。


「標的が結成途中の部隊の存在を知ってるってだけで十分な挑発だよ! 向こうは大慌てで犯人探しに責任の擦り付け合いの真っ最中だと思うよ?」

「はぁ、どうしますか? 開き直って宣戦布告でもします?」

「ナイスジョーク志雄ちゃん。そんな事をしようものなら警察の関係者を一斉に敵に回して詰むって構図の完成だ」


 志雄にそう言った宗次郎はチェーンソーに怯える加々美の腋をくすぐっている。


「WELT・SO・HEILENの力を解放したら第三次世界魔法戦争だよ」


 正明は苦笑いしてそう呟くと、真紀のおでこにキスをしてゲートを開いた。


「お兄ちゃん?」

「少しだけ、顔を出さないとね。大人しくしようとしてたけど、やっぱり僕も残党を止めないと。僕はそんなに褒められた存在ではないって証明しなきゃ」

「お兄ちゃん、誤解は解かないの? 殺しちゃった人、あの人は巻き込まれたけど、人を、奥さんになる人を撃ったのは確かなんだよね?」

「殺したのは僕だ。それは変わらない、怨まれなくちゃいけない。僕は呪われなくちゃいけない、無念を背負って謎を解かなくちゃいけないんだ」


 正明はそれだけ言い残してゲートに消えていった。


「あーぁ、悪いクセが出たぞ?」

「全くです」


 宗次郎と志雄がため息混じりにそう言うと、他のメンバーも笑いながら頷いた。加々美は服をズタズタにされてお腹にウサギの落書きをされているため絵にならないが。


「私も行くよ! 猫狩りってネーミングはダサいって直談判する!」

「やめて」


 加々美は衣装転換で着替えると霧へと飛び込んでいく。それに続いてアイリスも飛び込んだ。

 志雄と宗次郎も霧を潜っていく。


「んー、めんどくさいなぁ。ま、仕方無いか」

「京子ちゃんも行く?」

「うん、頭数足りなくなったらどうするの?」

「確かに、行こう。もしもの時は盾になるよ」


 京子と八雲も消えて行った。

 そして、真紀も同じように霧の中をくぐって街へと繰り出した。

海をひっくり返した様な雨

静かに染み渡る青空は磨かれる事はない

身体を寝床に沈める彼女

問う、貴方は何故?

答える

独りでは無くなっていくのか


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