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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
死神の飼い猫は正義なのか?編
75/289

ノーホープ 2

御堂衛はHE・N・TA・I・DA!

2


 俺は飼い猫が起こしたであろう事件の後に警戒を強める様に隊員達へと知らせると、竜王の剣部隊の所へと向かった。

 奴らの部隊は意外な程に質素な物だ。

 オーダーには訓練所に、書斎、更には隊員達の魔具を収納するスペースも確保されている。シャワー室ではなく風呂場がある程だ。それに比べて、剣部隊は普通のオフィスって感じだ。

 訓練はしていない、やることはもっぱら実戦だ。だが、訓練は志願すれば学園の大学部が場所を貸してくれるみたいだな。

 俺はその訓練所に来ていた。ここはヴァルキュリアの訓練も出来るな、天井が高い。そんなときに声が聞こえてきた。


「どうした! 散弾を使っても私に当てられないか!?」

「まだです! そこ!」

「甘い!」


 そこにはパワードスーツを着た由希子と、蒼いヴァルキュリアでショットガンを必死に当てようとする魔理の姿があった。

 由希子のパワードスーツ、変態だな。アホの様に機動力が高い、飛行での機動力が低い代わりに地上での行動範囲を広げたのか?

 だが、ピーキー過ぎる。他の隊員もそうだが地上での戦闘は高い、敵の勢力が溶けるように消えることで話題だからな。それに普段は普通の大学生、なんだよな。特に訓練をしている訳じゃ無いのに。


「機動力を生かしきれて無いぞ! 飛んで動きながら撃て!」

「は、はい!」


 魔理は、飛ぼうとするがそれ以上の速度で由希子が距離を積める。


「牽制!」

「あっ、うわ」


 由希子の持つ訓練用のペイント弾が魔理の心臓と額に撃ち込まれる。


「はぁ、全く何も出来なかった」

「いや、反応は速くなっているし魔力の回復を小出しに出来る様になっている。速さに慣れていないが、なんと無く私が何処に動くか見えているだろ? この調子だ、シャワーを浴びて来い」

「いえ、もう少し飛ぶ練習をします。まだ、この力を活かせていませんから」

「そうか、なら奴に・・・・・・いや、私も付き合おう」


 そう言って由希子は俺を指差した。

 俺は魔理に手を振ると訓練所に入る。由希子はパワードスーツを解除すると、魔理を心配そうに見ていた。

 

「翔! もう大丈夫なの? あの事件は?」

「今のところ、オーダーに仕事はないな。追跡しようにも奴らが何処から来るかわからねーからな」


 魔理に変わったところはない。今朝も、昨日の晩も普通だった。由希子は、何をそんなに?

 その時に突然由希子が俺に顔を近づけて来た。


「うおっ! な、なんだ?」

「ふむ、少し驚いても冷静では要られるか。どれ、瞳はどうして光るんだ?」


 俺の顔を掴んで由希子はまぶたをぐいっと下げてくる。くっ、スゲー近い、まつ毛ながいんだな。

 だが、由希子はふと魔理に視線を移していた。

 俺も魔理を見るが、少し膨れっ面になっているだけだ。


「・・・・・・魔理、安心しろ。お前のダーリンを取ったりしない」

「えっ! あっ! ダーリン!? 違います! 翔は幼なじみで、そんな兄妹みたいなものなのに」

「そうだ。こいつは、俺の幼なじみだ。あまりからかわないでくれ」


 俺の言葉に由希子は短く息を吐くと、「なるほど、飼い猫の奴め」なんて呟いた。

 なんで奴の話が?


「まぁいい、魔理、飛ぶ練習だったな。どうやる? 基本からやるか?」

「基本からお願いします!」

「よし。翔太郎、お前は少し待ってろ話があるんだろ?」

「いや、魔理に会いに来ただけだ。訓練なら付き合おう」


 俺はそう言うと、パワードスーツをまとって空中へ飛び上がった。



 大学にあるパワードスーツのラボに双葉は来ていた。使っているパワードスーツの調節を御堂に頼んでいたのだ。

 彼女の使うパワードスーツは近接戦闘に特化したタイプだが、プロトタイプなため実戦では遅れを取る可能性があるのだ。その新しいリニューアル形態を決めるために呼ばれていた。


「さて、これは面白いね。君の戦闘スタイルは把握してるよ。こうね、当たらなければどうと言う事はないって感じにしようか。避ける、攻撃と素早さにスペックを振ってみよう!」

「良いですね! 私はとにかく動き回りたいので、もう、飛べなくても良いです!」

「飛べなくても!? 良いの?」

「あっ、不都合ですよね。飛べないとヴァルキュリアにはついて行けないので」

「問題無い! むしろ、私に、飛べないが高起動かつ攻撃力高めで更に動き易くて女の子っぽさを残してカッコいいパワードスーツを創れって言うんだね!?」

「ご、ごめんなさい! わ、わがままですよね。お金もかかるし、そんな豪華なもの・・・・・・一人だけなんて」

「俺が資金を工面しよう! 新しい、オーダーメイドパワードスーツの開発・・・・・・こんな贅沢無いよ! ありがとう双葉さぁん! 俺が君の最っっっ高のパワードスーツを創って見せる!」


 ハイテンションは御堂は小躍りして設計図にペンでイラストを書き込んで行く。


「ボディは装甲よりも繊維製にしよう。防弾防刃、耐熱性、勿論絶縁性も欲しいね、さて、どうしたものか! 脚は装甲は厚さよりも質を重視しよう、軽量化とパワーアシストでスタミナを守りつつ移動にも使える様に。背中のブースターは走る時のアシスト程度に、ホバーは出来る様にしておいてあげよう! 頭部は・・・・・・そのツインテール、可愛いね」

「へ? あっ、子供っぽいとは思うんですけど、飼い猫様と初めて会った時の髪型なので、変えたく無いんです」

「よし、その髪型を崩さない様にして後ろから流せる様にしよう。髪の毛を守る様に設計するから安心してね」


 御堂はガリガリとパワードスーツの全容を表していくそこには流線型で、スッキリとしたデザインのパワードスーツが書き出されていた。

 その時に、双葉はとある存在に気が付いた。テーブルの上に一匹の子猫が寝ていたのだ。ぐでぇーっとしていてまるで夏バテでもしている様だった。

 黒い毛並みに、小さな体ととても可愛い姿をしている。


「わぁ! 猫ちゃんです!」

「ん? あぁ、たまに遊びに来るんだ。もう一匹いるはずだよ」


 双葉は辺りを見渡すと機材の影から白い子猫はひょこっと現れて寝ている黒猫の耳を甘噛みして起こす。


「ふにゃぁー」


 間抜けた声の黒猫は双葉を見ると少し驚いた顔をした様にみえた。よく見ると黒猫は左目、白猫は右目が蒼い。


「可愛いですね! おーい、何処から来たんですか?」

「みゃー」

「あぁああ! 可愛いですぅうう! 抱っこしていいです!?」

「好きにして良いよ、その猫達は大人しいから」


 双葉は黒猫と白猫を抱き上げると、ムギュと抱き締める。


「飼い猫ですね、いい匂いがします。ふふっ、飼い猫って私の好きな人と同じですね。大人しいですね、よしよし」

「にゃー」

「みゃー」


 少しの間モフモフしてようとした双葉だが、腕の魔具が光を放つ。


「あっ! 呼び出しです! 御堂さん、お願いします! またね、猫ちゃん」


 そう言い残すと彼女は走り出した。



「その姿だとモテるね」

「当たり前だ。で? この子のパワードスーツは創れるか?」

「君は作らないの?」

「俺がつくっても意味が無い。パワードスーツでないとこの娘は危険を学べない」

「ふふっ、わかった。直ぐに出来るから待っていてくれ、その時に受け取りに来てくれれば良い」

「頼んだ。依頼の資金は・・・・・・これでどうだ?」

「小瓶? あの時と同じ」

「新しく作るパワードスーツに組み込め、問題解決の良い足掛かりになるだろう」


 黒い子猫はそう言う。御堂は蒼い液体で満たされた小瓶を見てそれを少し振る。すると、魔方陣が重なり、液体の中に広がって消えた。


「この人、裏の人?」


 白い猫は少し警戒している様にそう言うと御堂を見る。


「びっくりするほど表の奴。でも、裏にいる連中よりも純粋にヤバい奴だよ」

「心外だな、妹を連れてくるって事は俺を少しは信用しているんだろ?」

「あぁ、お前は俺を敵にするより友達にした方が得がある。それに、由希子さんを守ろうってのは同じだからな」

「彼女を、気遣ってくれてありがとな。俺には出来なかった・・・・・・距離が近いほど、あぁ言う顔のときに笑ってやれねぇんだ」

「構わない、彼女は幸せになるべきだ」

「今すぐじゃなくていい、優の奴がもしも、戻れないなら。殺してくれ、彼女は奴と戦わせたくない」


 御堂は青いサングラスの向こうで悲しそうな瞳を隠す。

 その顔を見て、白猫がみゃーと鳴いて御堂を呼ぶと右目を光らせる。


「少し狡いけど、これで落ち着いて下さい・・・・・・私のスキルです。自分のせいにして、一人で背負うとか、絶対ダメです」


 御堂は白猫の頭を撫でると、黒猫を見る。黒猫は顔を伏せていた、白猫の言葉はこいつにも向けられているようだ。


「ありがとう、優しいね。お姉さんと逆だ」

「お姉ちゃんは十分優しいです! でも、照れ屋さんなだけ」

「はははっ! おい、照れ屋さん」

「うるさい! 帰る」

「あぁ、そうだ。これもお前の仕業か?」

「ん?」


 御堂はモニターにデバイスを振ると企画書のようなものが浮かび上がる。そこには、パワードスーツが浮かんでいた。

 まるで特殊部隊用の、戦闘パワードスーツだ。


「これの基本型を五体創れって言われた。お偉いさんだ、だが、私兵って訳じゃない。表向きの仕事だ」

「・・・・・・いや、解らない。僕は何もしてないよ」

「それならいい、気になっただけさ」


 黒猫と白猫は仲良くラボを出ていった。

 残された御堂は依頼されたパワードスーツを何気なく眺めると呟いた。


「なーんか、妙なんだよな。これ、本当に改造する事が前提って感じだ。何が関係しているっぽくは無いが、戦隊でも作ろうってか?」

深きものにひそむは影なるもの

踏みつける革靴の音に心は麻痺する

残酷な策略は神を欺き、命を嗤う

孤独に打ち振るえる事無かれ

孤独を選ぶ事無かれ


灯りを落とす事、無かれ

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