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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
死神の飼い猫は正義なのか?編
74/289

第三話 ノーホープ

希望は無い

手を伸ばさない限り

1


 死神の飼い猫がたった一つの魔法でデモ隊を焼き殺した。遺体は酷いものだった。死体は慣れていない、最悪な気分になるな。今日の朝まで生きていたとは、思えない。


「翔太郎、これまでの火力を出せるのは奴しか考えられないわ」

「・・・・・・殺して、何になるんだ? この人達を」

「は?」


 美樹が本気で理解出来ないと顔で言っている。


「この人達、飼い猫を崇拝していたよな? 飼い猫が殺す理由になるか?」

「裏で人を殺していたのかもね。こんなカルト集団よ? なにやっていても不思議じゃないわ」

「そうかも知れない。でも、奴は・・・・・・飼い猫はこんな殺しはしない。やるのなら一人一人だ、少しずつ消していく。闇に沈める様に一人ずつだ。だろ? 由希子」


 俺は通信魔法を発動すると、盗み聞きしていた竜崎由希子を呼び出した。


「感の良い奴だ。衛め、何が仲直りだ、盗聴機能なんかつけて」


 由希子はそう返すと空から俺達の前に急降下してきた。相変わらず凄いパワードスーツだな。最新式とは良く言う。


「竜王の剣部隊も出陣って訳か」

「この事件はかなり異質だからな。さっきお前が言ったように奴はまとめて焼き殺すよりは、一人ずつ殺すだろう。安全で、確実な上に恐いからな」

「由希子さんがお出ましなんてね。ん? 魔理はどうしたのよ、あんたの部下でしょ?」

「美樹か、少し顔つきが落ち着いたな。魔理は置いてきた、彼女に炎関係の事件には関わらせたくない。まだな、今でも少し落ち着きがない様に見える。一緒に住んでいてわからないか?」


 魔理に落ち着きがない? 今朝も変わらない感じだった。仕草も話し方も、一番知っているのは俺だ。由希子の思い過ごしだろう。


「で? どう思う? 由希子、この事件」

「奴らでないとは言い切れない。連中は血の気が多い、もしかしたらデモ隊を焼き払うこともゼロではない・・・・・・が、事件発生から我々や警察への通報が遅すぎる」


 由希子はそう言うと事件現場を見渡す。

 そして、


「この規模の攻撃だ。なんで一時間近くも通報が無かったんだ? それに、臨時ニュースだ。明らかにおかしい、何で救急隊が先なんだ? この遺体達は確実に即死、それに目撃者からすればまだ近くにこんな事をしたサイコ野郎が潜んでる、普通は警察やオーダーだ」


 臨時ニュースは犯行のわずか30分後に流された。

 そして、その後、滑り込む様に俺達がやって来たって訳だ。確かにおかしい、それに臨時ニュースってのはこうもすんなり行くものか? 報道陣が居合わせただけか?

 由希子が続ける。


「憶測でしかないが、これは計画性のある犯行だが犯人はかなり焦っていた。細かい穴埋めも出来ないほどにな、もしかしたら何か大きな誤算があったのかも知れない。死神の飼い猫を真のイカれた大量殺人犯へと陥れようとしている何者かが、いる」


 確かにそうだ。奴ならこんなバカな事はしない、いつもなんやかんや追い詰められても隠し玉を持ってる奴だ。

 俺は現場を見て呆然としている双葉を見る。


「双葉」

「この人達・・・・・・前、会った人達ですよね? こんなに、簡単なんですか?」

「簡単?」

「こんなに簡単に、人って死ぬんですか? 飼い猫様じゃないのはわかります・・・・・・あの人は、子供を絶対に巻き込んだりしませんよ!」


 彼女の足元には炭化してるが、小さい手が転がっていた。


「・・・・・・そうだな」

「隊長、答えて下さい。人って、簡単に、死ぬんですか?」


 そうだな。と、俺はいいかけた。

 だが、飼い猫なら何て言う? アイツは殺人犯だが、命を誰よりも考えているのでは?


「飼い猫に聴いてみろ。アイツは近いうちに現れる」


 肩を震わせる彼女に、俺はそれしか言えなかった。

 奴は、どう考える? アイツは、何処にいる?



「俺の質問に答えるんだ。遠山タケル」


 正明は隊員がいないオーダーの事務所で、遠山タケルに二連水平ショットガンを突きつけていた。周りには仲間達が人払いの魔法を施して敵を警戒している。

 遠山タケルは訳のわからないとった顔をしていた。何故ピンポイントで自分を襲ったのだろうか? と考える彼だが、そんな理屈が通じる正明達ではない。


「紫の瞳をした男。優は、何処にいる!」

「なんで知りたがるんだ? 金でも貸したか?」

「強いて言うなら命だな。無関係の人間が大量に殺されて、その犯人は俺なんだってよ」

「イメージぴったりだ。で? 優が何か関係しているって?」

「俺の仲間がデモ隊を襲う椿と戦った。理由は俺の勢力と勘違いしたらしい。止めなければこの事件はもっと速く起きていた」


 正明はショットガンの引き金に指をかける。


「おいおい、撃つのか? 俺は人は殺さないぜ?」

「優達に協力するなら、お前も同罪だ。5秒やる、答えなければ翔太郎は脳ミソをぶちまけた仲間の死体を見る事になるぞ」

「解った! 答える! はははっ、どうやら罪を擦り付けられたから怒っている訳じゃ無いな? よし、優達の隠れ家は知らないが・・・・・・呼び出せる」

「よし、呼べ」

「偉そうだな」

「これは命令だ。呼べ」


 正明は本気で撃つつもりだ。遠山タケルはデバイスを開くと通信魔法を繋ぐ。


「大変だ、三神翔太郎が襲われている! 敵は一人だが、かなり強い! 速く加勢に来い! 第三者に、約束の一人が殺されるぞ!」


 そう叫ぶと、遠山タケルはデバイスを切る。


「来るだろうな、奴らはお前達のせいで約束の四人が第三者に殺される事を警戒してやがるからな」

「ご苦労、寝てろ」


 正明がそう言うと、死角に回り込んでいたアイリスが遠山タケルの首に薬を注射する。

 強力な睡眠薬で遠山タケルは何かを言う前にバタリと床に倒れた。


「さて、演出して警戒心を無くしてやるか」


 正明はそう呟くと、京子をチラッと見る。彼女は「はーい」と返事をすると、使い魔を召喚し始めた。

 1分程で、オーダーの事務所内は女子生徒の死体が転がり、血塗れの殺人現場の様な風貌に成り代わる。そして、加々美が鼻を少し鳴らしてフィンガーサインを仲間に送る。どうやら来たようだ。

 索敵魔法を阻害して、全員が加々美の固有能力で身を隠す。寝ている遠山タケルには適当に血糊をぶちまけて床に転がしてある。


「これは、何が?」

「関係無い、某は三神翔太郎を斬りに来ただけ! あの時の例はする!」


 正明は隊長室の扉が開いた瞬間に、優のこめかみに向かってショットガンをぶっ放した。そこからは一瞬で姿を表した仲間達が行動を起こす。

 椿の身体に志雄が拳をぶつけて重力の檻に彼女を閉じ込めると、加々美が取り出した巻物で召喚された鎖でがんじがらめにされる。更にはアイリスの筋肉弛緩剤で抵抗する力全て奪いとる。


「よぉ、優。調子はどうだ? 俺は絶好調だ、ゲス野郎!」


 正明は更に拳銃を引き抜くと、床に倒れる優の身体に弾丸を全て打ち込む。が、彼は何事も無かったかのように起き上がる。全ての傷は再生し、彼は不機嫌さを爆発させた。


「貴様ら! ご子息を何処にやった!」

「何処にも? 死人は出ていない。転がっている死体や血はフェイクだ。すぐに消せる」


 京子が指をならすと、倒れている女子生徒に化けたハンゾーが起き上がり、消えていく。辺りの血液も綺麗に書き換えてしまった。

 倒れている遠山タケルの血糊を除いては。


「わ、罠か」

「俺にも罠をかけたのは貴様だな? 一般人を巻き込んでのテロなんざ、御手の物だろうが・・・・・・感謝しろよ? 即死魔法を不意打ちでぶちこまれないだけな!」

「なに? あれは貴様じゃないのか? 好都合と思っていたのに、意外だな」


 正明はもう一発ショットガンを優の胸に発射する。コントの様に奴が吹き飛び、正明は顔面を鷲掴みにする。


「答えろ、拷問はしたくない。昔は好きだったがな、今は酷く悪趣味だったと思うよ。でも、貴様の様な奴を拷問すると聴けない様な事も聴けるからな」

「お前はどうやら、勘違いしているようだな。俺達じゃない、殺すメリットはあったが、それはお前達の勢力を削ぐためだ」

「ん? お前・・・・・・」


 優は鼻で笑っている。正明はこいつが嘘をついていないのが解ってしまう。表情や、呼吸、スキャンして見ている心臓の動きにも動揺が見られない。

 

「チッ・・・・・・とんだ骨折り損だ。なら、死んでもらおうか」


 正明は即死魔法を発動させようとした瞬間に、正明は不穏な気配に防御魔法に切り替えて横から飛んできた魔法を防ぐ。


「まだ、利用できるから待って欲しいんだよね! じゃ、またね! 正明!」


 いつの間にか起きていた遠山タケルが巨大なゲートを床に出現させると、椿と優、そして術者本人だけが吸い込まれて消えていった。

 雑だが、転移魔法の上位互換だ。


「逃げたか、今は連中が目的じゃない。一体何処の組織だ?」

「・・・・・・仮説だけどさ、少し待ってみない?」


 京子がそう言うと、デバイスでテレビを開いている。


「狙いが私達への不信感を更に上げて、今のみんなで飼い猫応援しようムードから、みんなで飼い猫をぶっ殺そうムードに傾けたいならさ。騒ぎに乗じてか、騒ぎが収まってから声を挙げる奴が出てくると思う」

「そうですね、現時点で一番怪しい勢力の関与は有りませんでしたし」


 京子の言葉に志雄も同意する。

 他のみんなも同じ様な意見だ。正明は頷くと、オーダーの事務所にいた痕跡を消しに動いた。

 わずか1分程で正明達は事務所から姿を完璧に消した。

次回に少し持ち越し

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