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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
死神の飼い猫は正義なのか?編
72/289

自称健全な人々へ 2

続きです!

あれ? 少し次回予告通り?

2


 始末に困るとは良く言ったものだ。

 正明は目の前の光景に頭を悩ませていた。場所はオーダーの隊長室。呼び出された理由は簡単なものだった。


「正明、正直に答えてくれ」


 三神翔太郎は身を乗り出す様にそう言うと、真紀を見て一言。


「真紀は、上位魔法を使えるだろ?」

「無理だね」

「俺は見たぞ! 彼女が上位魔法で椿と言う兄弟達の魔法を相殺するのを!」

「何かの間違いだよ。この子はそんな魔法は使えないって! 僕だって知らないんだ!」


 そう言うが、嘘だ。

 真紀は上位魔法を使える。だが、それを正明は禁止していた。さっきも真紀をきつく叱りつけたばかりだ。それだからか、真紀は涙目でぷるぷると震えている。

 上位魔法、そんな力を使えば真紀は死ぬかも知れないのだ。

 彼女の身体は魔力と蘇生魔法の術式が循環する事で魂を形にしている。その循環が馴染むまでは完全に生き返った事にならない。だから、正明は速く人間にしようと自分の魂を少しずつ彼女へ渡しているのだ。


「真紀、本当か? 君は使えないのか?」

「使えないよ・・・・・・お姉ちゃんの言う通りだよ。私は知らないよ」

「正明、脅したのか?」

「脅してないよ。妹なのに、何で」

「泣いてるじゃないか」

「それはいきなりこんな所に連れてこられたらね。それに、彼女が使えるとしたら? どうする? ここに引き込むの? 良い手駒として、他の兵隊どもの様に!」


 正明はそう言うと椅子から降りる。そして、真紀の手を引くと扉の前まで小走りで駆け寄る。


「話す事はないよ。またね」


 扉を蹴り開けると、正明は逃げる様にオーダーの事務所を出た。

 そこで少し彼は反省する。かなり取り乱した、左目の力で周りのオーダーの女子隊員達を黙らせて急いで妹の手を引く。勿論、真紀には欠片も力を当ててない。それは正明の中では常識中の常識。そんな事をしたら怖がりな彼女は塞ぎ込んでしまう。

 正明の手は大量の冷や汗で滑るほどだった。

 学園から出ると、正明は身体を震わせながら大きく息を吐いた。それはトラウマから来るものだった。


「お、お兄ちゃん・・・・・・ごめんなさい! ごめんなさい!」

「・・・・・・いや、僕もごめん。少し、強く言い過ぎたよ・・・・・・真紀は、人を助けたんだ。本当なら、誉めなきゃいけないのに」


 正明はぐったりと学園にかかっている橋の手すりを背にして座りこんで、左目を伏せる。

 妹を泣かせてしまった、最低な兄だと言う自己嫌悪。それに加えて、また10年前の悲劇が起きると思っていたのだ。


「真紀、翔太郎君を助けてとは言ったけど、命をかけろなんて言ってないよ。それに、力がバレちゃった。何とかするけど、もう絶対に無茶はしないで、お兄ちゃんを、独りにしないで・・・・・・もう失いたくない」


 正明は必死に立ち上がると真紀を抱きしめる。二人とも涙でぐしゃぐしゃの顔でその場で少しの間、泣いていた。

 真紀もわかっていた。兄の気持ちを、自分がした事は自殺一歩手前の自傷行為の様なものだったことも。

 本当は兄は誉めたいのだ。自分の力を人の命を救うために使った事を、だが、真紀はそうすればするほど、死にやすくなってしまう。



 正明は、普段から見ればあり得ない程に怒り狂っていたな。後は追えない、あの双子は想像するにかなり重たい過去を持っているな。

 その場にいた美樹も一言も発していない。

 

「流石のお前も口は出せなかったか?」

「何も・・・・・・感じなかったの?」


 美樹は青ざめた顔で自分の肩を抱いて震えていた。


「ど、どうしたんだよ?」

「ま、まるで、底冷えした真冬のアスファルトに這いつくばって・・・・・・ゆっくりと首を斬られていく様な気分だわ。心臓にすきま風の様に不気味な、気配が・・・・・・うっ、え」


 美樹が口を押さえて嗚咽を漏らしている。

 ど、どう言う事だ? 何が、そんなに?


「美樹! 大丈夫か? 気分が悪いのか?」

「最悪よ、あの女が一年前も同じ様な事をしたのを覚えている。その時は、隊員の一人が錯乱してあいつを撃ち殺そうとしたわ」

「正明が・・・・・・スキルか?」

「わからない、いや、解りたくない。恐くて、触れたくないのよ! 正直、あの女はヤバいわよ! 妹は優しくて落ち着く感じがするけど、姉は逆よ、冷たくて真っ暗で独りぼっちの地下室の冷たい床の様な奴よ!」


 冷たい、その単語を美樹が何度も口にした。

 確かに凄い剣幕だった。だが、そこまで震えるほどではなかった。

 その時、外が少し騒がしい事に俺は気が付いた。美樹にコートをかけると、俺は隊長室の扉を開けた。

 すると、そこにはうずくまって涙を流す隊員達の姿が合った。全員、美樹と同じいや、それ以上に恐怖に震えていた。


「た、隊長! 失礼なのは承知です! お願いです、少しだけ側に・・・・・・」


 女子隊員達が俺の周りに助けを求める様にやってくる。どう言う事だ? こんな、まるで拷問でも受けた見たいじゃないか。

 俺は泣きじゃくる女の子の頭に手を置いて去っていった双子の事を思ってた。真紀は、こんな剣幕を一番近くで受けていたのか。

 スキルか・・・・・・なんて力だ。隠したいのも解る、正明の力は下手すれば人を壊してしまう。

小さく呟くは優しい言葉

足取りは重く、その身体はとても軽い

火の手が上がる

謀略と、悪を混ぜ合わせ

さぁ、猫を追い詰めよう

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