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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
内通者と四人目編
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エピローグ

続きです!


「なぁ、確かなのか? 優が来ていたのか!? 会ったのかよ!?」

「会って無い。姿は、見えなかった・・・・・・でも、震えたんだ。このロケットが、震えたんだよ! 衛・・・・・・彼が、生きてる」

「泣くなよ。部下にもそんな姿見せてないだろうな?」

「多少、取り乱した。でも、泣いてはいない!」

「俺の部屋に上がり込んで良いのかよ? 危機感の無い女め、帰れ。俺も、優の奴が生きていたのは嬉しいが・・・・・・独りにして欲しい。気持ちに整理が付けられない」

「そうだな・・・・・・すまなかった。お前の気持ちも考えずに押しかけた」


 由希子はそう言うと、御堂のマンションを出た。

 何をやっても手につかない、まるで初恋の時に悩まされた葛藤の様だと彼女は思うがそう感じたいだけなのかもしれない。

 死神の飼い猫が標的にした時点で、彼は多分人を殺しているのだから。


「うっ、うぅ・・・・・・うわあああああああ! あああああああ!」


 由希子は暗くて寂しい夜道を歩きながら大声で泣いていた。

 感情が抑えられなかったのだ。彼女は恋人の事を心から愛しているが、殺人を見過ごす事は出来ない。戦わなくちゃいけない。法の下へと突き出さなければいけない。

 そう考えると頭痛がする程、吐き気がする程、そして立っていられない程に。


「優、どうして・・・・・・なんで! うわぁああああ! いやだ、いやだぁ!」


 みっともないから早く泣き止まないといけないが、どうしてもだめだった。彼女の一番弱い所を突かれたのだから当たり前だ。

 その時だった。


「由希子さん?」

「ふぅ、くっ・・・・・・だ、誰だ?」

「正明です。どうしたんですか? うずくまって泣いているから心配しましたよ!?」


 顔を上げると、蒼い左目が由希子を覗き込んでいた。そして、その隣には蒼い右目が並んで心配そうな顔で回復魔法を組み立てている。

 伊達姉妹だ。

 良い後輩で、由希子が弱い所を見せられる数少ない人間だ。


「正明? 真紀? う、うぅ・・・・・・うぇええええええん!」

「由希子さん・・・・・・おに、いや、お姉ちゃん」

「取りあえず落ち着ける所に連れて行こうよ。真紀、お願い」

「うん」


 真紀は転移魔法を発動しようとするが、彼女に抱き着いていた由希子が息も絶え絶えに逸早く転移魔法を使って自室に姉妹を引き込んだ。

 部屋を姉妹は見渡すが、意外と普通に女の子の部屋と言った感じだ。

 転移魔法を使ったと言うのに由希子は自分よりも小さな女の子の胸で子供の様に泣きじゃくっていた。その頭を真紀は優しく撫でた。

 少しして落ち着いた由希子は泣き腫らした顔で二人に頭を下げていた。


「すまなかった。見苦しい所をみせた」

「良いんですよ。何かあったんですか? 由希子さんがこんなに泣くなんて」


 正明も本気で心配している様な顔をしている。真紀も同じ表情で首を縦に振っている。


「いや、昔の男の事だ。カッコ悪いだろ? なんてことは無いさ」

「大した事です。大切な人の事なら、カッコ悪いもカッコイイも無いですよ。深くは聴きません、でも、元気づけないと気が済みませんね! そうだ! 真紀、夕飯作ろうよ! 明日は休みだし、今日はド派手に行こう」


 正明が立ち上がると高らかにそう言うと、デバイスを開く。

 

「お、おい。そこまで」

「あっ、ご迷惑なら・・・・・・やめます。すみません」

「ち、違う! なんで、色恋沙汰でなんでそこまでしてくれるんだ!?」


 由希子がそう言うとその言葉の意味が解らないと言う顔を姉妹は浮かべると全く同じ言葉を同時に口にした。


「「独りで泣いて欲しくないからです」」


 その言葉に由希子はまた目頭が熱くなる。胸の奥から熱い物が沸き上がり、あふれ出しそうになる。


「また、泣かせるのか・・・・・・泣かせないでくれ! 甘えてしまうじゃないか、なんで優と同じ事をお前達は、するんだ!」


 正明はデバイスを開くと何処かへと連絡を取った。


「華音? 今から由希子さんとご飯食べるんだけど来ない? うん、来る? うん! 待ってるね!」

「お姉さん、志雄さん達も呼ぶ? あれ? 面識あったっけ?」

「あぁ、嫌でも顔を合わせる。お前達の仲間達は面白い連中が多いな」

「みんな呼ぶか、料理できるのは少ないけど・・・・・・飲み物とか買ってこさせよ」


 由希子はせわしなく連絡を取って、夕飯の支度を始める双子を見ていると自然と笑えていた。衛とはここまでの事は出来なかっただろう。それはきっと彼と由希子との距離が近いからだろう。親しい仲だからこそ癒せない傷や思いは確かにある。

 そんな時に必要なのはやはり、友人なのだろう。


「ふふっ、私も手伝う。何にする?」

「ノープランですね! お姉ちゃん、何か案はある!?」

「ツナ缶、ネギ、ウズラの卵と醤油で疑似マグロ丼で行こうか?」

「ズボラメシ! ナンセンスだよ! お姉ちゃん!」

「はははっ! 買い出し組に適当に買わせて来るか? 集まった材料で決めよう」


 由希子の言葉に姉妹は少し苦い顔をする。


「変態が集まるので、まともな結果には・・・・・・ねぇ、真紀?」

「でも楽しそうだよ? 今回はノリで行こうよ、お姉ちゃん」


 そして、その意味を由希子が理解するのは少し後のお話し。

 スイーツ系餃子や、虹色のピザが生まれたり、ポトフに失敗しそうになったりと由希子は散々と伊達姉妹とその仲間達に振り回されたが、これまでの中で一番笑った夜を過ごした。

 その中でも華音と正明は熱心に彼女の心に寄り添ってくれた。

 綺麗事ではない、理屈が通らない善意の存在に、竜崎由希子の正義は静かに支えられていた。



「今夜も大袈裟な犯罪だな! だが、俺の反応は! そこだ!」

「ぐえぇ!?」


 俺はビル群を飛行する犯人を殴りつけると、ビルの屋上に叩き付けて封印術式で動きを封じる。

 が、背後からバカでかい斧を振り上げているもう一人の存在に一瞬だけ反応が遅れた。


「ちっ」


 当たっても大したことは無い。受けてから一撃で仕留めるか。

 その瞬間、横から飛んで来た光に男は体制を崩した。


「ぐっ! なんだ!」

「粛清します、ウジ虫め」


 ヴ、ヴァルキュリア? だが、飛行と言うよりは対人を目的にしているタイプか? 背中のブースターは小型化されて手足の装甲からは紅い光が漏れている。

 突然現れたのは女の子だった。ツインテールに気丈そうな金色の瞳が特徴的だ。太ももの拳銃を抜く、その銃は銃口の下に小さなブレードを出現させると斧を持つ男の懐に機敏に入り込むと踊るように斬りつけて敵の防御魔法を破壊すると、男の顎に膝蹴りを喰らわせる。

 その時、衝撃波を膝の装甲が放つ。

 男は気絶して床に倒れ込む前に彼女は左腕から捕獲用のワイヤーを射出して背を向けて給水タンクに飛び上がる。


「おい! 君は!?」


 俺が話しかけるが、彼女はツインテールを夜風になびかせて呟いた。


「今夜も、現れてくれないのですね・・・・・・死神の飼い猫さま」

四人揃いましたね。


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