四人目 4
この物語に正義は無いです
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オーダーの避難誘導と大量に開いたゲートのお陰で怪我人は出たものの被害は最小限に抑えられた。しかし、ぶそうした集団に襲われたのだから当然、擦り傷程度では済まない人間もいる。
「あ、脚が・・・・・・」
脚を撃ち抜かれた人間、斬られた人間、魔法で焼かれた人間など様々だ。
そこに北条美樹がサイサリスの人質にされていた男の子を連れて転移魔法で駆けつけていた。
「くっ、この時点で死人がいない方が奇跡だけど・・・・・・怪我人は放っておくと死ぬわ。救急隊の転移魔法はまだなの?」
この世界の救急は転移魔法で駆けつけるため速いが、それでも安定して長時間開いておける転移魔法には時間がかかるのが現状だ。平均で5~10分はかかってしまう。
美樹達は回復魔法は使えるが、そんなに制度は良くない上に外傷は治せても応急処置程度だ。優秀だからと全員が完璧な回復魔法が出来るなら医者はいらない。
「北条さん! 隊長は!?」
「アイツは敵の主力と交戦中よ。その場には死神の飼い猫もいる、足手まといになるわ・・・・・・翔太郎しか入れない次元の戦いをしてる」
「竜崎さんなら、そんな世界にも飛び込んだんでしょうね」
「彼女は足手まといになるって事を経験してないからよ。正直なところ、翔太郎はあれで良いと思う。彼の力は強大過ぎるから、護ることしか出来ないのよ」
美樹は施設を眺めながらそう呟く。
すると。
「そんな力は、無い方がましだ!」
空間にゲートが開かれる。
そこから何やら慌てた様子の救急隊員達が流れ込んできた。
「な、なに!?」
「ぼさっとするな! 怪我人は多い! 不安定だが、病院に繋いだ。向こう側で安定しきるまで私が取り持とう!」
そこには黒に金のパワードスーツ。竜崎由希子の姿があった。
「竜崎由希子、何でいるのよ!?」
「テロだぞ? しかも民間人がいる施設への無差別攻撃、出動しない方がおかしい。北条、お前翔太郎を一人にしたのか!?」
「我々では足手まといになる! そう判断したまでよ!」
「早く加勢に行こう。奴は今もどう転ぶか解らん。それに・・・・・・いや、誤作動だな。杜撰な魔法だ、宛てにしたらいけないな」
由希子はそう言うと、安定したゲートから意識を外して周辺を見渡す。怪我人は重症者から素早く運ばれていく。ゲートも複数開いており、応急処置もオーダーの隊員達がしていてくれていた。
彼女は大剣を背中から引き抜いて切っ先を地面につけると、剣部隊が集合する。が、由希子はふと号令を中止した。
「・・・・・・何のつもりだ? 貴様ら」
目の前には鋼夜の鬼を始めとした飼い猫の仲間が道をふさいでいた。
「行かないで下さい由希子さん」
「そこをどけ、テロリストをみすみす逃がすのはお前達も望まないはずだ!」
「逃がすもなにも、この事件は普通のテロではありません。抗争です、それに一般人が巻き込まれました。そして、あの中には非常に危険な人物達が集まっている、行かせれば貴女でも無事では済みませんよ?」
由希子は大剣を背中に戻す。
「た、隊長!?」
「誰が、いるんだ?」
「・・・・・・危険な人物です」
「誰にとってだ! 言え! 隠せると思ったのか!? お前達がいるんだ! それに、それに・・・・・・ロケットが震えている」
由希子はパワードスーツを解くと、胸のロケット(写真を入れておくペンダントの様なもの)を取り出す。それは淡く光を放ち震えている。
一種の探知魔法、恋人同士の間で流行っている近くにいるとプレゼントが愛する人の存在を知らせてくれる魔法だ。
「誰だ? あの中には、誰がいるんだ!」
「・・・・・・由希子さん、落ち着いて」
「頼む、言ってくれ。あの人なのか? 来てるのか、此処に」
今にも張り裂けそうな由希子の声に、言葉を詰まらせた鋼夜の鬼に変わって魔医学の兎が無機質に答える。
「そんなのはいない」
「隠すな! なんで、隠すんだ。飼い猫は、何処にいるんだ?」
由希子の表情が変わるのは隊員達が真っ先に気が付いた。
「隊長! 気を確かに持って下さい! 何かの間違いです!」
「いつもの手段です! 奴らは騙したりする事が上手いのは知っているでしょう!?」
由希子は何とか呼吸を整えて連中を見る。だが騙そうと言うのなら何故、飼い猫がいないのか。いつもなら飼い猫が前に出て引っ掻き回してくる。
それなのに、今は仲間だけ。
攻撃も、助けるでもなく、通せんぼしているだけだ。
「飼い猫を出せ。そうすれば、私は期待せずに済む・・・・・・何処だ? アイツは何処だ」
「あの中です。強力な兄弟達と戦ってます。邪魔は許しません」
由希子は再びパワードスーツをまとう。
「総員、スペクターズへの攻撃準備!」
「「「ハッ!!」」」
白銀の騎士達が構える。
怪物達は仮面の裏に悲しい顔を浮かべ、勇者達を迎え入れる。
逆上せた彼女よ
碧い蝶よ
黒地の空よ
世界を曇らすあの人よ
涙を流したあの人私よ




