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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
内通者と四人目編
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第三話 手綱を猫が噛む

1人狼。

1


 ウォータースライダーや、巨大な水の球を打ち出すオモチャとかバラエティーに富んだアスレチックを皆が堪能するなかで俺はまたあの犬の様な女の子を見かけた。

 何やら世話しなく辺りをうろうろしている。キョロキョロと辺りを見渡しながら鼻までひくつかせて何かを探している様子は本当に犬の様だな。少し可愛い。

 真紀や美樹はプールで遊んでいるし、少し話しかけて見るか。パワードスーツの姿しか知らないだろうけど。あぁ、そうだ裸がダメなんだった。

 俺は衣装転換でパーカーを羽織るとその子に話しかけた。


「やぁ、また会ったね」

「ん? ぎゃ! あ、あぁ、よかった上着てる。あの、パワードスーツの人。ナンパしても私の処女はあげないよ!?」

「いるか! 俺がそんなに節操なく見えるか!?」

「男なんて雰囲気なんかカンケー無いもん、部屋で二人きりなら大体の奴はオーケーなんて誤解するよ! 君も、わかん無いと思うよ? 狼なんでしょ?」


 狼、なんかお前が言うなって気分だ。


「一応女の子と暮らしているけど、手なんて出してないぞ?」

「へー、起たないの?」

「お、女の子がそんな事いったらダメだ。男の裸がダメなのにこんな話は積極的だね」


 女の子はくあーっと欠伸をしている。なんだか、つまんないと思われている様でショックだな。


「興味はあるけど、そう言うのは好きな人とじゃなきゃヤダ、妥協するぐらいならこのままお婆ちゃんになっても悔いなんか無いもんねー! 君はさっきまで遊んでた女の子達の誰が本命なの? 綺麗な女の子ばかり、皆食べる気かな?」


 この女の子、凄い奴だな。

 もしかしたら大物なのかもな。デリカシー無いけど。


「本命って、アイツらは師匠に幼馴染みにただの友達だ」

「へー、でも向こうはどうかな?」


 俺が彼女の指差す方に目を向けると、美樹と魔理がこちらを観ていた。なんか、ただならぬ雰囲気だが?


「なんだ? アイツら」

「わかんないんだ? えヘヘヘ、イタズラしてやろうかな?」


 悪そうな顔をした彼女は俺の腕を抱きしめると、耳元で「どうなるかな?」とだけ言って去っていった。

 なんた? 変な子だったな。てか、腕に柔らかい感触が。


「スケコマシ」


 いつの間にか目の前に来ていた美樹がジトッとした目で俺を睨み付ける。魔理は親指の爪を噛りながら「私は添い寝したことあるもん、あんなの悔しくない悔しくない悔しくない悔しくない」とか言っている。怖いな、なんで怒っているんだ?


「なんだよ?」

「誰よ? 今の、凄い格好してたわよね?」

「あぁ、忍者らしいな。不思議な子だったな、まるで犬の様だったけど今思えば狼って感じだ」

「ふーん、あんなのが良いんだ? 弟子の趣味が解って良かったわ」

「あの子とは何も無いぞ? 最後のはイタズラされただけで」

「あんなの羨ましくない! 私は一緒にお風呂入った仲だもん!」

「魔理!? それは子供の頃だろ! 今持ち出す事か!?」


 おいおい、なんでこいつらはこんなに怒っているんだ?


「会ったばかりの女の子にあんなに密着されるなんてモテるのね」

「なんだ? 嫉妬か?」

「ち、違うわよ! バカじゃ無いの!?」


 顔をゆでダコの様にして美樹はムキになって叫んでいる。変な奴だな。

 その時、美樹と魔理の背後のプールから上半身だけを出してニヤニヤしているさっきの彼女の姿があったが、近くに真紀の姿もあった。なんだ? あの二人ずいぶん親しそうだけど、知り合いだったのか?

 その時だった、突然辺りに大量のゲートが展開された。魔法の発動音で辺りは騒然とした。それもそうだ、転移魔法をこんなに展開出来るなんて確実に個人の力ではない。逃走経路に使う施設はあるだろうが、この量は明らかに常軌を逸している!


「な、なに!?」

「痛い、背中が・・・・・・翼、魔具が。いる、あの人が」


 魔理が突然うずくまると、パーカーの背中が蒼い炎で焼き落ちて翼のタトゥーが浮き彫りになる。


「解るのか? それは、飼い猫か」

「前の、サッカー場でも同じだったよ。背中が少し痛くなって、見渡したら・・・・・・遠くから見てた」

「嘘だろ、こんな所で。兎に角、今はゲート意外の異変は起きていない」


「そうも言ってられないわよ! 白鳴雷砲!」


 美樹が魔法を放った先には武装した魔法使いがいて、奴は一撃で黒焦げになってプールサイドに転がった。

 なっ、こんなのって!

 見渡すと飛行魔法を使って今にも暴れだしそうな連中が飛び回り始めている。

 だが、奇妙だな。無数に開かれたゲートからは誰も出てきてない?


「今は安全な所に! 俺が援護するから二人はヴァルキュリアを取って来い!」


 俺はパワードスーツをまとう。

 クソ! 仕事で来てたんじゃねーぞ!


「避難誘導は私がやろうか?」

「え?」


 そこには狼っぽい女の子がいた。


「いやー、凄いね! テロだよ! 怖っ!」

「何してる! 逃げろ! 今は抑えるしか、後ろ!」

「うん、解ってる」


 女の子は背後から飛んでくる魔法をかわすと、身体の向きを変えて。

 瞬間移動した。


「転移魔法!?」


 叫んだのは俺じゃない、敵のテロリストだ。だが、俺も同じ感想だった。

 速い! 圧倒的に、速い!

 彼女は懐に飛び込むと、すぐに背を向けて俺の方へと呑気に歩いて来る。は? 何をしている?

 敵には触れてすら。


「結構強いでしょ? 私」


 彼女がそう言うと、テロリストはドシャっと沈んだ。


「何をしたんだ?」

「大切なものをイジメただけだよ? 一撃だよね、うへへへ」


 凄い速度で急所を蹴りあげたのか、容赦ないな。


「くっ、頼む!」

「行ってらっしゃーい! ヒーロー、これでまた有名人への一歩だね!」


 俺は飛行しながら辺りに飛び回るテロリストを魔法で撃ち落として行く。下では、散らばっていたオーダーの隊員達が避難誘導をしてくれていた。さっきの女の子もやたらと響く声で人を逃がしている。

 有難い、突然開いたゲートは避難用だったようだな。

 皆そこへと逃げていく。


「俺の休みを潰した罪は重いぞ」


 俺は魔方陣を身体の周りにいくつも展開してテロリストの攻撃を防ぎながら反撃していく。

 この事件、飼い猫が中心にいそうだな。

 俺はそう考えながらも次々と敵を倒して行った。



 天道加々美は群がる連中をはっ倒しながら鼻を効かせると、近くに真紀がいない事に気が付いた。辺りの一般人はゲートに逃がした。このゲートは武器を持った存在を通さないようにフィルターがされているが、念のために加々美はゲートを閉じる。

 周りには武装した集団、加々美は水着姿。少し分が悪いと感じたのだろう、彼女は周りに誰もいない事を確認してニッと笑う。


「怖かったら御免ね?」


 彼女は自分の身体を変質させる。足は逆関節になり、頭には狼の耳に腰からは尻尾、目付きは鋭く尖り、狼人間の姿へと変わる。


「う、うわぁ! 化け物だぁ! 殺せ、殺せぇ!」


 叫んだテロリストは引き金を引く前に吹き飛ばされてプールに落下した。そしている内に他のお仲間も次々と狼人間の餌食になって行く。殺してはいないが、それでも大怪我には変わらない。

 姿を元に戻すと、加々美は頬っぺたを膨らまして気絶するテロリストをポカっと蹴る。


「化け物でも、傷つくんだぞ!」


 ため息をついた彼女は忽然と消えた真紀を探しに駆け出した。



 正明は連続してビームを乱射して優と椿を抑えるが、とんでもない連中だ。特に優の身体の秘密を知らないとどうにもならない。

 即死魔法が通じない可能性までもある。

 優は多数のビームを正面から受けても気絶どころか体力の衰えすら見せていない。怪物は仲間に沢山いるが、敵に回すとこうも厄介なのかと正明は頭を働かせていた。

 パーカーのビームは魔力があれば射てる。それでも魔力が少なくなれば出力は落ちる上に、パーカー自体の防御力も落ちてしまう。


「お嬢様、力をつける良い機会でもあります。死んでしまうような事には、ならぬよう」

「解っておる! 引導をくれてやろうぞ、死神の飼い猫!」


 弾丸の様に椿が正明へと突進してくる。


「羊、前。狐、後ろ。鴉、射て!」


 椿の突進を八雲が斧で受け、京子は槍を構えた兵隊を召喚して椿を取り囲み、宗次郎は飛び上がって彼女を射つ。

 正明は両腕を前方へとつきだして最高出力でのビームを優の頭部へと撃ち放った。


「温い!」


 一斉攻撃を日本刀で全て弾き飛ばし、使い魔達は半分になって床に転がった。

 宗次郎の矢も弾かれ、八雲はどうやら防ぎ切れなかった様だった。肩から血を流している。


「仲間の後ろに隠れるか! 貴様はそこまでの力は無いと見た!」

「そうかよ! 鬼、用意は?」

「いつでも」


 椿は居合いの構えを取るが、八雲が斧の柄で刀の鍔を抑えてしまう。その直後に椿は志雄の拳の直撃を受けた。そして、両脚が床にめり込む。


「ぐぅううああああ! スキルか! 凄まじいパワーであるが」


 その時、薄紅色のサークルが正明達を飲み込んだ。


「我が奥義には遠く及ばない! 行くぞ!」


 その瞬間、正明を含めた仲間達は刹那に切り裂かれた。

薄紅の旋風

舞い上がるは血か

無慈悲な正義との対話

成長を続ける男の未来は

階段の最上で待つ神話とは

彼は瞳に次のひかりを見る

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