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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
内通者と四人目編
57/289

仮面の後ろ 2

色々怒濤の展開ですが、フラットな脳で読んで下さい。

2


 由希子がオーダーの隊長になる前の話。

 小鳥遊 優と言う男がオーダーの隊長を勤めていた。彼の戦闘能力は非常に高く、隊員達からの信頼も厚かった。弱者に歩み寄る男でいたいと言うのが彼の口癖だったと正明は記憶している。

 ある日、正明と優は合間見える事になった。

 正義感の強い隊長らしく勇敢に正明と仲間達へ戦いを挑み、作戦負けした正明は仲間達と分断され、一騎討ちとなった。

 勝負は罠を張り巡らせて鎧と魔装をフル装備して、火力での畳み掛けで正明が勝利した。

 そうしないと勝てなかったのだ。


「由希子も、俺から離れて行った」

「は?」


 正明は優の言葉に疑問を抱かざるを得なかった。

 彼女は今でもこの男を愛している。その事は友人として側にいる正明がよくわかっている。


「病室にいたのは、あの子じゃなくてお前だった」

「救えねぇ。要件だけ言え、個人的な決着はいつか付けてやる」


 正明は話を切った。

 優の症状は精神汚染、それと酷似した被害妄想だ。彼をそんな姿にしたのは正明だ。いつか自身の手で始末してやると彼は決めた、これは自分の責任だ。優は目付きを更に殺意に濁らせるが、椿の手前でからか大人しく本題を切り出した。


「あの方は、非常にお嘆きだ。ご子息を一人失われたからな、かつて魔力強奪犯として名を挙げた御仁だ。覚えているだろ?」

「あぁ、殺した」


 サラリと正明は答えた。悪びれも無い、懺悔もない、最早挑発と言うレベルでの返答に椿は刀を召喚する。


「貴様! 我が兄弟を殺しておいてなんだその態度は!」

「アイツが悪い。人を殺していた、犠牲者には若い女もいた、奴の瞳に信念は無かった。腹が立ったから、捕まえてバラしてやったよ」

「殺す! 兄弟の敵!」

「お嬢様ッ!」


 優は椿に一喝すると魔法で彼女を抑え込む。

 

「落ち着くのです。奴の手です、どうか冷静に」

「悔しくは無いのか! 奴は同胞を卑劣にも、同じ兄弟に殺し合わせた挙げ句に拐って殺したのだぞ!」

「そうです、奴の得意分野です! だから落ち着きなさい! 今度は貴女が利用されるかもしれません!」


 正明はため息をつくと、魔法で椅子を作るとそれに座る。仲間達も同じく椅子を作るが、各々個性がバラバラな椅子を作ってくつろいでいる。

 もちろん挑発のためだ。

 この場を選んだのは牽制の為だろうが、正明の挑発に仲間達の態度はこの場所が牽制の意味もないとわからせるには十分だった。


「で? なんだ?」

「失礼したな。そこで、あの方から提案があって持ってきた」

「あー、親父か。お前が何処の使いっぱしりか解った。成る程、道理で人外化施術の劣化コピー技術が使えると思った」

「あの方は、貴様に同士になれと言ってきた。息子を殺した罪を身を捧げる事で濯ぐ様にとの事だ」

「お前達の目的はなんだ?」


 正明は速攻で聞き返した。まるで言うことを決めていたようだが、実は仮面の裏では正明は焦っていた。

 この案を飲むのも一つの手なのだ。しかし危険だ。

 手に入れば億万長者、だが入手条件は溶岩の海の底にまで身一つで潜る様な。死刑の様なギャンブルの先にある目標への近道。

 だが、飲むことは出来ない。

 真紀を巻き込む事となる。下手すれば華音までも、弱点となるかもしれないのだ。


「目的? それがなんだ?」

「言えよ、聴いてみたい。あの方を愛でようの会なんてバカみたいな集まりではないだろ?」

「ふん、減らず口は昔からだ。よし、教えてやろう。あの方はこの世界を選ばれた者への楽園にする」


 正明は押し黙ってしまう。


「世界は今や魔法使いで溢れている。粗悪品の様な力の無い弱者、権利だけを振りかざすバカどもの集まりだ。あの方はそれらを粛正し、真の強い魔法使いの世界を望んでおられる」


 それを聞き終えた正明は固まった後に、大爆笑していた。仲間達も同じく笑っている。アイリスや八雲は呆れたと言わんばかりに頭を抑え、志雄は無言で背もたれに体重を預けている。他の面子は爆笑していた。


「バ、バカだぁ! あははははは! 狂ってやがる、うはははは!」

「お前は、ムカつくが優秀な魔法使いだ。見たことのない技術、たぐいまれなスキル、その若さでギルドを率いる手腕。あの方は評価されている。さぁ、軍門に下るんだ。正体をばらされたくなかったらな」


 正明は優の台詞で一瞬固まった。


「正体?」

「そうだ。伊達正明、お前の本当の名前だ」


 転移魔法で表れた男は正明も知っている男だった。

 三神翔太郎の相棒にて、オーダーに残った数少ない男子隊員である。遠山タケル、その人だった。


「驚きの連続だよ」

「華音の為にも、この提案は飲み込むべきじゃないかな?」

「正体を捕まれるとはな。このネタをこの場で提示した理由はなんとなく察しがつくよ」


 正明は口調を落ち着かせた。

 それは冷静になったからではない、必死に焦りが出てくるのを抑えているのだ。


「君は居場所を失う。詰みだよ、首根っこを捕まれたんだ」

「いつもの喧しさは演技って訳か。ねぇ、僕達の正体を掴んだ所で居場所が無くなる? 笑わせないでよ」


 遠山は珍妙なものを見るような顔をするが、直ぐに首を縦にふった。


「いつでも学園からは消えられると?」

「消える。あの場所に意味はないし、それに本格的に雲隠れする良い機会だよ」

「その時は華音ちゃんの安全は保証しない」

「殺すぞ? お前達に勝ち目は現時点では無い、貴重な約束の子供達がまた一人死ぬ所か君は再起不能になって病室で翔太郎に再開する事になるだろう」

「随分な自信家だ。俺は言うほど弱くないぞ?」


 正明は仮面の後ろで鬼の様な形相になっていた。華音を人質に取った上で殺すと言うのだ。

 事実、この場で殺し合いに発展した場合は敵側を皆殺しにする事は可能だ。

 成長しきっていない椿、優は殺そうとすれば正明が戦力ダウンするが殺せる。遠山は確かに強いが、仲間達が束になればどんな実力者でも時間は稼げる。

 それらが失敗しようにも普通の戦闘事態は可能だ。


「ま、君達の正体をばらすのはまだ後だ。逃げられては困るからな」

「へぇ? じゃあどうする? 脅せねぇよ?」

「いや、十分だな。少なくともお前達の弱点は非情に成りきれない所だ」


 正明は遠山の言葉にため息をつく。

 その通り過ぎて何も言えないのだ。正明達は悪だが、見境なく人を殺し回ったり悪意を持って無実の人間を陥れたりしない。それが計画に必要なら取り止める程だ。

 死神の飼い猫は良心の呵責に弱い。

 皮肉にも華音と出会ってからはますます非情になれなくなってきている。


「お前の大切な華音は殺さないでやるよ。妹の方は生きてもらわないとな、あの方ってのが必要としてるらしい。お前と同じ位な」

「妹が、何だって?」


 正明は遠山ではなく、奥にいる優を睨み付けた。

 優は忌々しいと言わんばかりに口を開いた。


「気付かないと本気にしていたのか? 始まりの時代に存在した蒼の魔王、紅の英雄により討ち滅ぼされた伝説上の最悪な魔法使いの事を?」

「怖いな。子供の頃に読んだよ、長くて途中で居眠りしたけど。確か、慈悲深く高潔で誰よりも優れていた紅の英雄は、決して傲る事なく民を導き迫り来る巨大で恐ろしい蒼の魔王と戦った。だっけ?」

「我。主はその英雄の末裔! そして、ご子息達は現代の英雄となるべくして誕生された過去からの意志! そして、貴様は・・・・・・忌々しく、穢らわしい! 魔法使い史上最低最悪の悪女、蒼の魔王の生まれ変わりだ!」


 正明は仮面の後ろで冷や汗を流していた。

 どうする?

 もう、敵は確定した。連中の首魁こそが正明が探している奴に違いない。だが、それはこちらの手段と言うよりはあちら側も正明達の主力であるWELT・SO・HEILENにも匹敵する後ろ楯があることを意味する。

 しかもそれが一人のカリスマのもとに集っている。

 この場で全員殺しても無意味。


「そんな穢らわしい貴様をあの方は受けて下さる。軍門に下れ! 死神の飼い猫!」


 正明は背もたれに寄りかかって大きく息を吐く。

 仲間達を見る。そこにいる仲間達は・・・・・・

 

「ロイヤルストレートフラッシュだ! ふはは! 勝てるもんかよ!」

「宗次郎! イカサマですね! 千里眼なら可能です!」

「クソゲー、やめる」

「オレが今度は親か? イカサマしたらぶん殴るぞ?」

「楽しくやろうよ、ね? あ、イカサマはバレなければ合法だよね?」

「真っ黒羊! 私はどうしよう? ハンゾー解る?」

(無知な私めをお許し下さい京子様。このようなモノは不得手故に)


 遊んでやがらぁ・・・・・・


「ふふっ、俺達はそんな難しい話なんて知りませーんってか?」

「歴史を繰り返すか! 神話と同じ事が起こるぞ! お前達に勝ち目はない、なぜ戦う? なぜ殺す!? なぜ自ら消えるような事をする!?」


 優は叫びながら大剣を召喚すると、正明に斬りかかってくる。相変わらず凄い踏み込みで、正明の動体視力では追い付けないが。


「俺が頑なに椅子に座ってたのは何でだろうね」


 優はある一定の距離に近づくと身体の半分が凍りついた。

 正明が椅子の、術式を組み合わせて罠を張り巡らしていたのだ。そして間髪入れずに正明は左手を優へとかざすとパーカーの形状が変化した。

 メカメカしく、布ではなく鉄の装甲板を組合せたような、姿だ。そして。袖が大きく広がり、正明の小さな手を隠すとまるでビーム砲の様な形へと変化する。


「な、何!?」

「用心深く行けよ? また戦争をしよう」


 正明は左手から魔力を圧縮したビームを放つと優を盛大にぶっ飛ばした。


「正明君、翔太郎をどうするつもりだ?」


 遠山は慌てる様子もなくそう呟く。


「奴は強すぎる。だから、僕が側にいる・・・・・・僕が壁になり続ける。アイツは歪んではいけない」


 正明はそれだけ返す。遠山は驚いた顔をすると、短く笑って転移魔法で消えていった。


「お前はそう言うと思ってた! 脅しのつもりだったが、仕方ない。サイサリス! やれ!」


 優が叫ぶと人払いの魔法が解けて周りの騒ぎが押し寄せて来た。

 が、焦ったのは優の方だった。


「なぁ、一人おかしいと思わねーの?」


 正明の言葉に優は一人の人物を指さした。


「なんだ? その忍者は?」

(ハンゾーでございますぞー)


 辺りにはゲートが開かれ、人々が効率的に避難をしていた。そして、遠くから聴こえる戦闘音。


「罠って解ってんだ。全員でなんて来るわけ無いだろ?」


 正明は笑いながら呟くと、かつての強敵へ再びビームを射ち放った。

 交渉は決裂、今宵よりWELT・SO・HEILENは歴史を再び繰り返す事を選択した。

 

 未来に待つであろう、結末を除いては

引き金は引かれた

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