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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
力の代償と飼い猫の憂鬱編
50/289

サイサリス 4

続きです

少しでもゆっくりしていってね

❬俺を倒すと能力が切れてしまう❭


 奴がそう言った意味は直ぐにわかった。

 奴のスキルの支配下にあった男子隊員達は1人の例外もなく、精神を壊した。何もない場所を見て笑ったり、芝生に這いつくばってすすり泣く奴、いろいろだが魔理はすっかり怯えて俺にくっついて離れてくれない。

 全員が警察の手配してくれた車両に乗せられるなか、独りだけまるで装甲車のような護送車に押し込まれていくサイサリスは意識を取り戻していた。

 なんてタフな奴だ。

 炎の中に突っ込んで、顔面を殴り飛ばしたのに。


「はははは! 今回は俺の勝ちだな! えぇ!? 兄弟!」

「勝ち?」

「お前は誰も救わねぇ所か、全員をぶち壊しやがった! アイツ達はただ認めて欲しかっただけなのに、お前が奴らの人生を奪ったんだよ、英雄殿に万雷の拍手を! ひゃーはははは!」

「て、てめぇ・・・・・・俺は」

「黙りなさい! 貴様がいなければ、こんな事にはなってないわよ!」


 美樹が激昂に駆られてライフルでサイサリスを撃って護送車へと叩き込んだ。それでも、笑い声は止まらない。

 そのまま、奴は運ばれて行った。


「なあ、俺は・・・・・・間違えたのか? アイツの言う通り、みんなを壊したのは」

「しっかりしなさい。この結果は残酷だけど、貴方はぶれたらダメよ。師匠の言う事よ? 信じなさい」


 美樹は俺の顔を真っ直ぐに見てそれだけ呟く。

 俺の腕の中で泣いている魔理の頭を撫でると、俺はパワードスーツの駆動音に顔を挙げた。

 そこには黒に金のラインが入ったパワードスーツが芝生に着地したところだった。シルエットからして、女の子か?


「ご苦労だったな。兄弟達の捕縛及び、学園防衛の手際。見事だった」

「その声、由希子か?」


 パワードスーツのマスクが収納され、中からは由希子が顔をのぞかせた。


「嫌味でも? 総取締役殿?」


 美樹が前に出るが、由希子は首を横にふった。


「本心だ。だが、私はどうも納得が行かない。三神翔太郎」


 高速で俺の首に大剣が突きつけられたが、俺はそれをいち速く摘まんで止める。


「独裁だけは私が許さない。今後は、見逃さん!」 


 大剣はあっさりと俺の指を離れて彼女の背中に戻る。

 あれ? 結構強く掴んでいたんだけどな。

 飛び去る由希子を眺めると、俺は美樹と魔理を交互に見て


「帰ろか」

「そうね、大仕事だったからお腹空いたわ」

「うえええん、翔、私・・・・・・怖くて」

「良いんだ。ありがとう、魔理」

「イチャイチャするなー! もう! 私も、少し怖かったのに」

「ん? どうした? 美樹」

「うるさい! 帰るわよ!」


 俺は顔を赤くして飛び立つ美樹を魔理と一緒に追いかけながら家に帰った。



「本部! 至急応援を! 奴だ、死神の飼い猫が! ぐぁ!」

「本部、もう手遅れですどーぞ? コチラ境界の人狼ですどーぞ?」


 サイサリスを乗せていた護送車と、護衛のパトカーは道路の上にまるで積み木の様に重ねられ、中から放り出された警官達は一瞬で気絶させられてしまった。

 身体を銀をあしらった拘束具に興味深いと言わんばかりに正明達を見上げるサイサリスはその口元を大きく吊り上げる。


「へぇ? 鎧着てる時は二メートル位はあったよね? 可愛いんだな、小っちゃな女の子だ。顔は見えないけど」

「悪いな、素顔は愛してる人のものなんだ。さて、今日はお前を殺しに来た」

「ははははっ、スゲーやこのイカれ女。だが、わかってんだろ? 銀でスキルは防げねぇってなあ!」


 正明はサイサリスが何かをする前にそいつの顔を素手で鷲掴みにする。

 これ以上言葉をかわすには危険すぎる。


「っ! 流石に速いな。待て、話し合おう!」

「死ね」

「横から御免」

「はぁ」


 正明は気の抜けた言葉と共に右手を離して左側に向ける。そこには鋭く輝く刃の光が飛んできている最中だった。

 正明と乱入者は互いに睨み合う形になった。

 それは日本刀の様な刃物、乱入者はどうやら女性の様だ。


「誰だ? 唯の女じゃないな、身体の魔力の流れが異様だ」

「んん? 女と解るか」

「ははは、気が合いそうだが・・・・・・あー、そう」


 正明は左目で全てを見て悟った瞬間にサイサリスへと蒼い炎をぶつける。それ自体が目暗ましとなり、その隙を突いて正明は魔法で自分の身体を乱入者へとぶつけるように飛ばすが、嫌な予感に咄嗟に身体を回転させると身体の擦れ擦れを刀が通り抜けて行った。

 正明は空中に身体を弾きあげると身体の周りに魔力で出来たクリスタルの様な砲身と、自分が座る椅子を作り上げると魔力の矢を連射する。斬っても軌道を変えない様に回転していない魔法の矢を大量に放つが。


「勘の良い女め」

「嫌わんでくれ、某は繊細なのだ」


 正明は背後の声に返事もせずに振り向くと同時に炎を放とうとするが、それより速く日本刀が滑り込む。


「しまっ!」

「御免!」


 仮面の左側が斬られて左目が覗くが、日本刀は塵になって跡形も無く消え去ってしまった。


「なにぃ!?」

「ははははははは! 沈めぇ!!」


 正明は組み付くと左目で乱入者の眼を覗き込む。

 その瞬間、周りの空気がまるで冷凍庫の中の様な無機質な寒さを帯びた。


「う、あ・・・・・・うわああああああ!!!!」


 乱入者は取り乱したように叫ぶと正明を一心不乱にぶん殴った。

 彼は顔面の拳は防いだが、胸にめり込んだ拳に吹き飛ばされて積み上がった車両に飛んでいくが八雲にキャッチされる。


「ぐあああああ! くっそぉ! しぶといクソ女がぁ!」


 正明は砕け散った胸骨を抑えながら、意識を飛ばさないように叫びながら痛み止めとポーションが入った瓶を仮面の牙で噛み砕く。

 荒い息を吐きながら口から血の混じった唾を吐き出して右手を乱入者にかざす。

 彼女はガタガタと震えながら肩を抱いているが、気丈な瞳から光は消えていない。


「正明! あの目!」


 加々美の声に正明はふー、ふー、と息を切らしながら左目で睨み付ける。

 それに答えるように彼女も深紅の両目で正明を睨み付けている。


「ふっ、はっはっは・・・・・・な、何をした! 震えが、止まらぬ!」

「俺は吐き気が止まんねぇ! うっ、え」


 吐きそうになる正明だが、志雄にアイコンタクトを送る。

 サイサリスを殺せ、と。

 志雄が動き出そうとした瞬間に彼女の身体に誰かが抱き着いた。それは倒したはずの護送車に乗っていた連中だった。


「ははは! 誰かはわからねぇが、助かったぜ! おら、お前達は俺の護衛が任務だろ!? 守れ守れ!」

「矢より速いかよ!」


 宗次郎が弓を引くが、サイサリスは既に手下と化した警官に守られていた。

 巧が電子タバコを口から外して瞳を紅く染めるが、それを京子が必死に止める。


「巧さんダメ! 止めて!」

「止めるな! これしかないだろ! オレが前に出る!」

「巧! 引けぇ! この女は、お前と翔太郎と同じだ! 三人目だ!」


 正明は傍らに八雲を前衛につけて三人目の約束の子に向き合う。


「し、失敬だな。人を数字で呼ぶものではないぞ、某は真田椿! 死神の飼い猫、その魔法の実力の程見事なり! しからば、某も奥義で迎え撃つしかあるまい!


 真田椿は髪を短く切り、まるで男の様な格好をしていた。魔法で変装の術式を組んでいるのだろう。正明や加々美の様に身体を変える事は出来ない様だが、それでも見事な変装だ。

 正明は左目で身体がスキャン出来る為気付いたが、それでも魔法で巧妙に隠されていた。

 彼女の姿が変わっていく、胸が服を内側から押し上げ腰回りも丸みをおびて、背も低くなり、少し筋肉質だった体形も女性のラインとなる。正明はスキャンし直すが、完全に身体は女性に戻った。だが、それによって正明は目を丸くした。

 彼女の両足に、高密度の魔力を見たのだ。


「八雲、固有能力」

「了解」

「僕が死ぬ可能性も視野に入れてね。奴は、持っている・・・・・・鎧の一部。悪い子ね」


 薄く笑う正明は更に左目で真田椿を睨みつける。彼女は重圧に必死に耐えている。

 その時に両足に鎧の脚部が展開されて身体をパワードスーツに纏っていく。その姿は軽装ではあるが和風の鎧の様であり、カラーリングは紅、刀は新しいものが腰に装備されていた。


「はぁ、はぁ・・・・・・ぬぅ! なぜ、なぜ足が前にでぬのだ!」

「金縛りにする、攻めて来い」


 仲間達は巧を抑える事と、襲い来る警察官たちを止めている。

 サイサリスは盾をつれて真田椿の背後に回る。正直に言ってこの状況では正明の行動が速かったことが勝敗を分けていた。

 固有能力で彼女の瞳を直接覗き込んで恐慌状態にしなければ今ごろ、数人は死にかけで道路に転がっていただろう。その中には確実に正明もいただろう。

 正明は敵の先手を誘うべく、小瓶に彼女の魔力を移し始めたその時だった。


「ご令嬢、御戯れはそこまでに」


 転移魔法で紫の瞳の男が現れた。


「紫殿、それは出来ぬ。ここで決着を付けなくては!」

「お引き下さいませ、奴めの術中にはまっております」

「その様な事は!」

「お許しを、ご令嬢」


 紫色の瞳の男はそう言うと無理矢理彼女とサイサリスをゲートに押し込んでしまった。

 正明は片膝を付いて更に魔力で出来た武器を大量に召喚して奴へと向ける。威嚇と牽制の意味を持つが、サイサリスがいなくなった事で警察官たちの意識が途切れ、仲間達も前線に加わってくれた。

 

「ご令嬢をあそこまで追い詰めるとは、貴様は何処までも天才だな」

「褒めるなよ・・・・・・僕は、お前とは違う」


 正明を見て鼻で笑った紫の瞳の男はゲートに消えて行った。

 

「はぁ・・・・・・うえっ! は、吐きそう」

「此処で吐かないで、帰ったら、治療する」


 アイリスの言葉に、正明はその場に倒れ込んでしまった。

 サイサリスの暗殺は失敗に終わったが、それでも収穫はあったと納得する正明だがその場にいた巧の表情は彼の脳裏に焼き付いた。

 彼女は今にも泣きそうな顔を帽子のつばで隠していた。

思い付かない。

水を10リットル飲むと、人は逝く

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