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第二話 操魔学園支部治安維持学生部隊オーダー

お待たせいたしました!

少しでも楽しんでいただけたら嬉しくて原子崩壊します!

WELT・SO・HEILNから一年後の話ですが、並行して書いて行きます。


 俺にとってはこの二日で起きた出来事は不幸でしかない。

 突如として現れた魔力強奪犯、死神の飼い猫達、オーダー操魔学園支部総取締役、そしてオーダー隊長北条美樹。これまでの人生でスキル覚醒以上に色々な事がいっぺんに降りかかって来やがった。

 くそ、俺は自分の事で精一杯だっていうのに。

 ソファに崩れ落ちるように座り込んで俺は魔力をテレビへと送る。映った画面にはいきなり臨時ニュースが放送されていた。


<こちら現場です! これは今映されている映像です! 見えるでしょうか⁉ また現れました、魔力強奪犯です! 火の手が通りに上がっていて・・・・・・あぁ! 今!>


 カメラが映したのは二日前に見た奴の仮面。魔力強奪犯のだ、俺が食らわしたダメージはまだ直していないらしい、仮面に少しヒビが入っている。

 女の子たちにも俺にも使って来た魔法の糸を指先から出していやがる。

 カメラに目線を向けていやがる。


「コイツ、楽しんでやがるのか?」


 俺の考えは的中した。カメラマンが糸にからめた取られたのだろう、パニックを起こしたような声を上げている。リポーターの悲鳴がその状況がどれほど絶望的なのかをもの語っている。

 だが、その映像に奇妙なモノが映り込んだ。

 黒い・・・・・・霧?

 とても冷たい印象を受けた。火事で生じた黒煙なんていうチャチな物じゃない、確実に魔法によるものだと理解できた、父さんに教えてもらっていた事が活きたな。


<え! え⁉ な、なに⁉ ッ!>


 リピーターが息を飲んだ。

 俺も同じ様になった。

 魔力強奪犯の背後、黒い霧の奥から聴こえて来る音をカメラは捉えていた。金属が擦れる音、硬質なモノが階段でも上がっている様な音だ。

 そして、その霧の奥から一人の男が現れた。


<し、死神の飼い猫・・・・・・です。あ、あぁ・・・・・・神様>


 リポーターの声から恐怖が伝わる。

 それは感じた。魔導波(電波の様な物)を通している俺も体中の毛が逆立った。

 左目がサファイアブルーに輝いて、その頭部はこの世界にある神話の中に登場する魔王の様に、ドラゴンの角を模した形状となっている。漆黒の鎧に瞳と同じ色のラインが走り、左側の腰にロングソードを下げて、漆黒のマントを風になびかせており、右側の腰には俺にも見覚えがある装備が下げられていた。

 小瓶が差し込まれた、ホルスター。


<「さて、死んでもらおうか。お前が渡した招待状だ」>

<「来たか、化け物が!」>

<「みんな、部外者を逃がしてくれ・・・・・・僕が、いや、俺が抑えよう」>


 死神の飼い猫と魔力強奪犯がぶつかり合った。

 その瞬間、カメラの視線がフワッと宙へと浮き上がった。


<「これ生放送? みんな! チャンネルを変えてバラエティで盛り上がろう!」>


 ビルの屋上だろうかそこにカメラマンは降ろされた様だ。

 何者かがそう言うと映像が切り替わった。

 俺はため息を吐いてテレビを消した。


「なんて奴らだ・・・・・・なんだあの姿、パワードスーツか? オーダー総取締役補佐が基盤を作ったって言っていたが、それと同じものを奴らが? それに、仲間もいた。見えない程の速度でカメラマンをビルの屋上まで上げた」


 俺の常識ではわからないことだらけだ。

 優等クラスの傲慢な生徒達がバカに見える。何をやっているんだ? もっと強い奴がいる、恐らく連中が束になって掛かっても勝てない様な存在がいるんだ。それなのに、なんで今の力だけで満足できるんだ?

 俺が無駄に考え事をしているその時だった。突然家のインターホンが連続して押された。


「なんだ?」


 俺は怪訝な顔をして玄関の扉を開けた。

 そこには


「遅いわね! 師匠が呼んだら直ぐに出なさいよ!」

「な⁉ お前、なんで来てんだよ!」

「今日言ったじゃない? 私が、師匠になって鍛えてあげるって」


 わからん。

 そこには操魔学園支部オーダー隊長である北条美樹が立っていた。

 訳が分からん、先程のニュースからしてオーダーは出向いているはずじゃないのか?


「おい、お前ニュース見てないな?」

「知っているわよ」

「なっ! なんで行かないんだよ!」

「操魔学園支部の管轄外よ? 一応、情報系魔法ネットでニュースは見たわよ? 派手にやらかしているわね、飼い猫が鎧を着るなんて久しぶりよ?」

「管轄外って」

「例え私達が行っても結果は変わらないわよ」


 そう言うと、美樹は大荷物を俺の許可も取らずに部屋に上げる。

 着替えとか、教科書などが入っているのだろうか。彼女の細い腕でも簡単に持ち上がった所を見ると軽量化の魔法でも付けているのだろうか、それとも肉体強化系の魔法でもつかっているのかもしれない。

 こいつは何を考えているんだ?

 そう考えると心臓がひときわ大きく跳ねて熱い液体を放出した。


「ぐぅお! くっ、ちくしょう!」


 俺はその場に膝を付くとポケットの中の精神安定剤を乱暴に口に放り込んだ。

 その場しのぎだろうが、これでも無いよりはましだ。


「スキルの覚醒でここまで苦労している魔法使いなんてアンタぐらいよ?」

「少し黙っていてくれ! くっ、もういい。上がれよ・・・・・・追い返す気力もねぇよ」

「一応、私は1つ年上なんだけど? それに、私は隊長でアンタは隊員」

「俺は優等クラスの奴に尻尾なんか振らねぇよ」

「もう劣等クラスじゃないのに、変な奴ね」


 紅いネクタイが俺の視界に入って来た。

 そうだ、俺はもう劣等クラスじゃない。

 でもコイツらみたいに弱者を訳も無く見下したり、踏みにじったりはしない。


「優等クラスの証なんて何の意味もねぇよ」


 俺はソファに身体をあずける。


「そんなんじゃ威張れねぇ。世の中には怪物の様に強い連中がいくらでもいる、死神の飼い猫がその内の一人だろうな。そいつの仲間だって、ハッキリ言ってそこらのオーダーなんかじゃ話にならない」

「言うじゃない。自信が付いちゃたのかしら? 自分だけが渡り合ったから」


 俺の瞳は深紅に染まっているのだろう。自分でわかるようになってきている。


「知った事か! 俺だって勝てねぇ、この力が操れない限りはどうしようもねぇ! 父さんの教えだって活かせない」

「父さん? アンタのお父様は教師なの?」

「違う、知ってもどうせ信じない。教える義理も無い」

「師匠に向かって何よ、その口の利き方! この口から治してやろうかしら!」


 美樹はほっぺを膨らまして俺の肩を掴んで激しく揺らしてくる。体調が最悪な俺にはかなり効く攻撃だ。


「や、やめろ! 頭が、ぶっ飛ぶ!」

「吹き飛びなさいよ! 先輩であり師匠の私にお茶の一つも出さないなんて無礼な奴は特にね!」

「はぁ、やかましい師匠だよ・・・・・・くそっ、ムカつく通り越してどうでもよくなった」


 うるさい美樹を振り払うと、俺は台所でコーヒーを淹れる。

 

「意外と素直ね、安心したわ」

「うるさい犬は餌を与えれば大人しくなるだろ?」

「私は犬じゃない! 風弾かぜだま!」


 俺の背中にバスケットボールでもぶつけられたかのような衝撃が走る。危うくコーヒーをぶちまけるところだ。

 

「大人しくしてろ!」

「犬なんて言うからよ!」

「可愛くていいだろ?」

「は、はぁ⁉」


 顔を赤くして美樹が固まる

 俺そんなに変なこと言ったか?


「そ、それって~私の事だったり?」

「いや、犬が」

「風弾ぁ!」


 美樹の魔法が俺の顔面に炸裂する。

 何気に魔法でコーヒーだけは浮かせて守ってやがる。そのまま自分の手元に引き寄せると、怒ったまま飲み始めた。


「なにこれ、変な味」

「コーヒーだけど?」

「紅茶がよかったわ」

「風弾」

「ぶへっ!」


 俺の魔法を喰らって美樹はソファにひっくり返った。汚れるのはイヤだからコーヒーは魔法で非難させてっと。


「あ、あんた。魔法使えないんじゃ」

「いつそんなこと言ったんだ? ガキの頃から父さんにしごかれたお陰で大抵の事は出来る。劣等クラスに居たのは、お前ら優等クラスのやり方が気に入らなかったからだ」

「風弾は私が遊びで作った衝撃波と風を混ぜた術式よ? 習えるはずないわ」

「喰らえば解るだろ? お前達もそんな感じで魔法を使っているんじゃないか?」


 美樹は俺の言葉に驚きの表情を浮かべると、小声で何やら呟き始めた。


「想像以上に凄いわね、これで接近戦もこなせたら最高の逸材」

「おい」

「ん!?」

「俺は天才じゃねぇ、お前の様になんでも出来るわけじゃねぇ。飽きたら出て行けよ?」


 こんな奴に長居されたら最悪だ。


「いや、当分ここにいるわ。アンタに興味が出て来たわ、そのスキルを私の研究材料にしてやるわ!」

「お前な!」


 ピンポーン


「翔? 夕飯作りに来たよ~! あれ? お客さん?」


 玄関から魔理の声が聞こえて来た。

 なんだか、色々不味い気がする。


「お前、帰れ」

「イヤ」

「冗談抜きで帰れ」

「断るわ!」


 俺は話を聞かない美樹に風弾をぶつけるが、彼女も学習して簡単に魔法で防いでしまう。

 なら持ち上げてでもご退場願うまでだ!


「体術で私に勝つつもり⁉ 私も体術ぐらい・・・・・・ってひゃあ!」


 俺は簡単に美樹の軸足を払うとそのまま抱えて窓の方へと向かう。

 

「離しなさい! このスケベ! 何処触ってんのよ!」

「変な所は触ってない! 暴れるな! ってうお!」


 ドタッとバランスを崩して俺と美樹は床へと倒れた。

 体制を立て直そうと、顔を挙げるとそこには赤くなった美樹の顔。

 どうやら、押し倒したような姿勢になっているらしい。


「え⁉ なにこの音! 翔!」

「ま、待て魔理!」


 リビングに入って来た魔理と目があう。

 

「し、翔? その人、誰?」


 買い物袋を床に落とした魔理の目から光が消えて行く。

 俺はそんな彼女を苦い顔で見つめ返す事しか出来なかった。 



「この人数で殺し損ねるって、油断し過ぎだか? 正明」

「いや、殺すつもりでやったよ? でも、彼女が来るとはね」

「あー、来たんだ? 彼女」

「竜崎さんも、ますます強くなってる」


 正明は手に夕飯として買ったコンビニのおにぎりを持ちながら、仲間の一人である宗次郎と話していた。場所は船の甲板で、そこには宗次郎の他にウサギの耳が付いたフードをかぶり銀色の短めの三つ編みに丸眼鏡の女の子が大きなスナック菓子を抱えている。


「三人は、舐めすぎ。私も、宗次郎も、前衛向きじゃないのに」


 うさ耳フードの女の子はそう言うとスナック菓子を頬張り始めた。


「アイリス、人手不足だったんだよ。不機嫌にならないで」

「逃がした、正明のせい」

「そうだけどさ・・・・・・アイリスも遅刻して援護遅れたクセに」


 正明は少しふくれっ面でおにぎりをかじると、兎なのにリスの様にほっぺをスナック菓子で膨らましたアイリスを指差す。

 納得していないのか、アイリスもフードを被って丸まってしまう。


「アイリスも色々準備があったんだよな? 彼女は取引してからの合流だったんだ。大目に見てやれよ、正明」

「それもそうか、ごめんねアイリス」

「毒を選んでいたら、時間が過ぎた。効果的なのを、造っておくべきだった」

「間に合っていた口ぶりだね」

「間に合ってた」

「この兎!」


 宗次郎のフォローを完全にぶち壊したアイリスは怒った正明にほっぺをつねられて甲板にひっくり返った。猫耳パーカーの彼に襲われている様は子猫と野兎がケンカしている様でどこか微笑ましい。宗次郎もそう思ったのかその様子を笑いながら見ている。

 アイリスも正明の頬をつねり返すと、形勢が逆転した。


「いだだだだだ!」

「力じゃ、私が強い」

「魔法なら僕の方が上だ」


 アイリスに馬乗りになられてモチの様に両の頬を伸ばされている正明は風の魔法に冷気をまとわせてアイリスの耳に吹きかける。すると、アイリスはビクっと背中を反った。

 その隙を見て正明は魔法で身体を浮かせてアイリスの拘束から逃げ出した。


「耳が・・・・・・くすぐったい」

「これで貸し借り無し。はぁ、宗次郎も仕留められなかったの?」

「由希子さんまで撃つかもしれないだろ? それに、奴は雑魚じゃないぞ? せめて八雲がいれば仕留められていたけどな」

「僕も竜崎さんを何とか抑えていたけど、奴まではどうも出来なよ。脅しで殺すって言っていたけど、巧が生け捕りにしろって」


 宗次郎はカップ麺を食べながら少し怪訝な顔をする。

 その表情の変化には気付いていたが、正明はあえて無視しておにぎりを食べきると紙パックのお茶を飲むと懐から青白く光る半透明な少し大きめのカードのような形状のモノを取り出すと、腰のホルスターから小瓶を抜き中身をそれに垂らす。

 デバイスと呼んでいる通信魔法や情報系魔法、その他にも情報伝達に必要となる術式が織り込まれた特殊な魔具だ。一般にも出回っているが、そのデバイスは機械仕掛けであり正明や仲間達が持っているデバイスよりも容量やスペックは大幅に下がる。

 

「通信するのか?」

「いや、華音の深夜放送」

「そうだった! くそぉおおおお! 正明! 生で聴きたかった! どうせ録画だろ! ちくしょうちくしょうちくしょう!」


 宗次郎はブリッジするようにひっくり返る。

 正明は無視してデバイスを起動する。すると、彼を含めたメンバーが聴きなれた声が流れ始めた。

 

「まぁ、殺すのも難しいんだけどね」


 その言葉はテンションを爆上げしてはしゃぎ始めた宗次郎にかき消された。

主人公は力の使い方を知らないだけで、バカ強いです。


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