サイサリス 2
ゲス野郎を書くのは久しいですね(すっとぼけ
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サッカー場で俺達を出迎えたのは複数のパワードスーツを着た連中と、一人の兄弟達。
兄弟達一人がご機嫌に前に出てくるとサッカー場全体に響くほどの大音量で叫びを挙げた。
「始めまして! 約束の四人が内の一人! 三神翔太郎! 君の覚醒と、大いなる成長を祝って此度はこのような趣向を凝らせて頂いた!」
「お前は、誰だ!! 何故オーダーを襲撃する!」
「失礼、俺の名はサイサリス! 偽名だが、そう呼んでくれ。ま、ぶっちゃけどうでも良くね? お前と遊びたかったんだ!」
サイサリス、偽りの花言葉を持つ花の名前。
成る程、胡散臭い奴だ。俺は両手に魔力を集中させる。
「スッゲェ! お前の魔力、このサッカー場を飲み込まねぇばかりだぜ! ふひゃははは!」
「逃げないのか? 不利だと思うけどな?」
「は? 不利? 関係ねぇよ! 遊ぼうぜ、兄弟!」
サイサリスは突然バカでかいランチャーを召喚すると俺に向けて撃ってきた。その砲弾は美樹が風の魔法で防ぐ、砲弾の回転とは逆の気流を作って止めて遠くへと放ってしまう。それを片手でやりやがった。
美樹、強くなってないか?
「話が通じる相手じゃなさそうね。さて、どうするのよ?」
「俺と遊びたいらしいからな。招待には応じてやらなけりゃな!」
俺はお返しと言わんばかりに右手から電撃を撃ち放つ。サイサリスはニヤけ面で棒立ちでいるが、手下の独りが奴の前に割って入り電撃をまともに受けた。
手下は悲鳴を挙げる暇もなく芝生へと倒れる。
「うわぁ、ひでぇ。元は仲間だったのに、お前はクズ野郎だな兄弟!」
「なに?」
「もう気付いてんだろ? ここにいる俺の取り巻きはお前が除隊させた男子隊員達だ! ひゃははは!」
「バカな! 襲ってきた奴らじゃないのか!」
「雑魚は派遣して、強いのは俺のカプセル怪獣さ。行け! お前たちを役立たずと切り捨てた男がいるぞ!」
その言葉に反応したようにパワードスーツ達は一斉に襲いかかって来た。
ヴァルキュリア程の起動ではないな!
同じ様に美樹が動き、ライフルをすれ違い様に乱射して相手の陣形を崩す。
「魔理! 頼めるか!」
「え? あっ、了解!」
魔理は空に飛び上がると美樹が崩した陣形に散弾を頭上から浴びせている。まるで爆撃でもしているようだ。流石に戦い慣れして来たな。
その弾幕を一人だけ切り抜けて俺へと腰のナイフを引き抜いて強襲してきた奴がいる。そのナイフは魔力を移されてか、剣の様に光が伸びている。俺は右の手甲でそいつの斬撃を受け止める。
「アンタを、尊敬もしていた。でも、アンタは俺達の場所を奪った!」
「自分の責任を俺に押し付けるな! 天才なら強く生きて行けたはずだ!」
「アンタは最低の男だ。一人一人を見ているふりをして、格好つけているだけの逆上せたバカだったぜ!」
パワードスーツはそう言うとカシャッと顔の装甲を上げて顔を見せてきた。
その顔は、古都ワスレ。男子隊員達の中心人物だった男だ。
俺はワスレを投げようと身体をつかもうとするが、奴はナイフを離して後退して俺から離れると、拳銃を腰の位置で連射して空いた手でもう一本のナイフを引き抜くと突きの姿勢で突っ込んできた。
くっ! 速いな!
俺は防御魔法で銃撃と刺突を防いだが、ワスレは最初のナイフを拾い上げると二刀流で俺の防御魔法をこじ開けてくる。
強い! これがあのワスレか!?
その時、俺の隣から
「俺もいるからな、兄弟!」
「しまっ!」
真横から氷の斧を叩きつけられて俺は観客席に吹き飛んでいた。なんつー威力だよ!
「硬いパワードスーツだな! ノーダメとかねーだろ!」
「奴は防御魔法を使っている。接近戦で装甲をこじ開ける」
「流石、元オーダーは違うねぇ!」
俺は起き上がって直ぐに魔方陣を複数展開して無属性の魔法をで弾幕を張る。
ダメージは無いが、くそ、してやられた。
「この攻撃に精密な意図はない事は!」
煙の向こうから聴こえる声に俺は身構えるが、直ぐに胸に蹴りが叩きつけられる。
速い! このパワードスーツ、普通の奴じゃないな!?
「ノーリスクでの広範囲攻撃が売りの貴様には辛いだろうな!」
そこから顔面へと拳銃がフルオートで発射される。
だが、俺のパワードスーツは魔力を大量に織り込んで術式を組み上げているから魔力弾を弾く事なんか当たり前にできる。
俺はワスレの脚を掴むとお返しとして力任せに空中に吹き飛ばす。
「なんて力!」
「速く終わらせる!」
俺は空中のワスレがブースターで逃げる前に奴の腹に踵落としを食らわせる。これで動けなくなるだろうと、思ったが。
奴はナイフの切っ先を俺の顔に向けると魔力の刃を伸ばしてカウンターを狙ってきた。
顔面を直撃したが、ワスレにも攻撃が入って奴は叩きつけられた。
俺は無傷だがな。
「インチキ装備だねぇ、そのパワードスーツ。でも、わかったぜその攻略方!」
「後ろか!」
「その、後ろだ」
俺は背中からワイヤーを身体中に巻き付けられ、芝生へと墜落する。
動きを止めようってか!
俺は再び防御魔法をまとうが、腕にしか発動しない。
「なっ! 身体に!?」
「術式遮断だぜ! その手甲は訳が解らねぇが、身体の装甲はもう普通の魔法を通しちまうぞ」
「死ねぇ!」
体制を立て直したワスレがナイフを構えて突進してくる。あの魔力を凝縮した刃だと防げないか!
一か八か、魔力を全力で掌から噴射して吹き飛ばすか!
そう決めて俺が心臓へと意識を向けた時に、上空から魔力弾がワスレへと撃ち込まれる。奴はとっさにナイフを盾にして攻撃を防ぐ。あれはもはやナイフでなくブレードだな。
「相棒! やけにピンチじゃねーか! 俺がいねーと厄介事だらけだな!」
やけに喧しいこの声は・・・・・・やれやれ、面倒なのが帰って来たな。
俺はワイヤーを魔法で切ると、目の前に降りた緑のパワードスーツのマスクを軽く叩く。
「何処に行っていたんだ?」
「少しアメリカにな! 華音ちゃんは連れてきて無いのか!?」
「彼女は事務所で侵入者の迎撃だ。ここが本拠地、奴らは指揮官だ」
「そうか!」
「遠山タケル・・・・・・そうか、隊長のお気に入りのお前は免れたのか」
ワスレが忌々しげに遠山にそう言う。
すると、遠山は驚いたと言わんばかりに驚愕しやがった。
「ワスレ!? マジか!? おいおい、何してんだよ!」
「俺達は三神翔太郎に人生を粉々にされた! そいつのせいだ! そいつさえいなければ!」
「よくわかった! 落ち着いて話そうぜ! 俺は聴くからよ!」
「黙れ! 貴様もそのクズの仲間だ! 連中は、みんなクズの集まりだ! 退けぇ!」
ワスレは激昂してブレードを振りかざすが、遠山も同じ様なブレードを引き抜くと正面からぶつかる。
「相棒! ワスレは任せろ! 兄弟達は任せるぜ! さぁ、話そうぜ、ワスレ!」
遠山は叫んでワスレをあっという間に遠くへと連れて行ってしまった。
俺はサイサリスへと向き直る。
ワスレを遠くへと連れていかれたのに余裕そうな表情を崩していない。
「緊張感の無い奴だな」
「自信があるからな。お前と同じだ、それよりも罪悪感がないんだな? 元は部下で、仲間だったのに?」
「自業自得だ。自分勝手に人を傷つけたな!」
「お前、自覚ないんだな」
サイサリスは呆れた様にそう言うと、空間に腕を突っ込んでサーベルを引き抜く。
俺は拳を構える。
「さて、遊ぼう!」
奴は満面の笑みで斬りかかって来た。
新たな光が夜空を飛翔する
水面は映す影は波打ち
闇は黙ってそれを見る
私を想うは誰?私を呼ぶは誰?
背後から目を覆うは
私を支配せし、我の心なり




