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猫は少年の足元で空を見ろと鳴く(2)

お待たせしました。続編です!



「兄弟達の覚醒も一年前から兆しがあっただろ? 奴は、目覚めたばかりだな」


 死神の飼い猫はそう言うと、自らの家である総合ギルドWELT・SO・HEILENの第一船に降り立つ。

 辺りは美しい月明かりに照らされた海が妖艶な風景を産み出し、帆船からは停泊している港街の明かりが見える。

 WELT・SO・HEILENは七隻の船から構成されるギルドだ。今死神の飼い猫がいるのは自分で管理している第一船の看板である。その他にも仲間達が支配しているエリアが存在するが、その一つ一つにも個性があり中にはそのエリア自体が危険な所もある。

 死神の飼い猫は大きく息を吐くと仮面を外す。

 仮面の下からは一人の少女の顔が現れた。

 鮮やかに蒼く輝くパッチリと開いた左目が印象的であり、色白の肌、ショートカットに前髪の一房だけがブルーのメッシュがかけられている。その容姿はまるで猫のような愛くるしさがあるが、目を少し細めたその表情は美しさと不気味さを見事に兼ね備えている。

 まるで目が合えば死ぬと錯覚する様な。


「そうですね、しかし、戦う意思が薄かったような」


 そう言うと鋼夜の鬼も仮面を外す。

 黒く艶やかな髪をポニーテールに結った涼し気な美人だ。だが、その瞳には密やかにではあるが凄まじい激情が宿っているように力強い。

 彼女に続いて境界の人狼も仮面を外した。

 まるで耳の様にはねた髪に、笑うと見える少し長い犬歯が特徴の女の子だ。犬の様に人懐こい笑顔を仲間に振りまいている。


「そうだよ。そこまで強くなかったよ! 倒せたのに! 殺しはしないけどね!」


 境界の人狼はそう言うと拳を何もない場所に撃ちだす。


「奴は特別だ。この時代に生まれた奴の一人、直接受け継いだ者達の一角だ」

「うげ、マジかよ」


 死神の飼い猫の言葉に境界の人狼は苦い顔をする。

 鋼夜の鬼は黙ってその言葉を聞いていたが、顔つきは穏やかではない。死神の飼い猫は船室に入ると床に描かれた転送の魔法陣を発動させる。三人は海の中に作られた部屋へと出ると、その奥に置いてあるアタッシュケースに目を向ける。

 その部屋は、海の底で光り輝く鉱石で幻想的な光に満たされた部屋だ。そのアタッシュケースの他にも様々な武器が飾ってある。その全てが切り札となり得る強大な魔装であり、ギルドの最大火力兵器である。その中でもひときわ存在感を放つアタッシュケースに死神の飼い猫が触る。


「先代よりもさらに昔・・・・・・初代の時代」


 アタッシュケースを蹴り開けると白い光と共に、鎧が現れた。

 実体のない肉体に鎧を付けた存在が死神の飼い猫の前に膝を付く。純白のボディに蒼いラインが引かれている洗練されたデザインをしている。鎧の様にも見えるがどちらかと言えばパワードスーツの様にも見て取れる。肉弾戦にも対応できるように装甲による防御力を保ちつつ動き易く関節部分は柔軟な魔装での補強を行っている。

 現状では万能型の装着式魔具でこの一品を上回る代物は存在しないだろう。


「初代の時代ってすごいね! パワードスーツじゃん! 今の魔導式パワードスーツを先取りしていたんだね!」


 瞳をキラキラさせながら境界の人狼はパワードスーツを眺める。

 そんな彼女に死神の飼い猫は小さく笑う。


「そんな訳ないじゃん! これはね、僕が大改造したんだよ。元々はホコリ被った白い鎧だったんだけど、古臭い上にダサかったから、魔改造してやったんだよ」


 子供の様に笑う死神の飼い猫はそう言うと、アタッシュケースをもう一度蹴り上げる。すると、鎧は折りたたまれる様にケースの中へと仕舞われていく。


「これを奴に渡すとか、言いませんよね?」


 鋼夜の鬼が盛り上がる二人に冷水の様に冷たい声色で呟く。

 その表情には、怒り、以上の心配があった。


「心配無用。これは、いつか誰かの手に渡る運命だけど・・・・・・今じゃないよ。安心してよ、そうなっても負けないでしょ? 僕は、いや、僕たちは」


 死神の飼い猫はアタッシュケースを浮かせて元の場所に置くと、ニコッと笑う。

 その笑顔は嘘である事に鋼夜の鬼と境界の人狼は気が付いていたが、これも定められたことなのかもしれないと考えていた。

 兄弟達がこの一年間で莫大に増えている。死神の飼い猫は青白く光るガラスのような素材で出来た端末式魔具デバイスを開くと、そこに移る魔力強奪犯を静かに眺める。

 その口元は少しだけつり上がっているようにも見えた。



 解らないものだが、三神翔太郎は劣等クラスから無理矢理引きはがされてしまった。なんでも、スキル持ちだという事と、死神の飼い猫だけでなく鋼夜の鬼、境界の人狼、魔眼の闇鴉までもを一人で相手にして大きな怪我も負っていなかった事が高く評価された様だ。

 だが、翔太郎は新しく渡された紅いネクタイにも満足はしていなかった。

 オーダーの事務所で北条美樹を前に、彼は腕を組んで不満げな顔をしていた。


「奴らは、遊んでいた。俺は手も足も出なったよ、あの場で死神の飼い猫が逃がしてくれなかったら多分俺は此処にいない」

「それでも名誉な事よ? 連中ね、意味の解らない事するから」

「は?」

「連中、一年前にこの学園内で暴れているの。知らない?」

「知っているも何も、あの時は劣等生専用校舎が半壊したんだ。その時にもいたのか?」

「いたわよ? 連中がいなかったら大勢の生徒が死んでいたでしょうね」

「あの巨大な船・・・・・・忘れもしない。先代の隊長が襲撃してきたギルドのリーダーを倒したからあの場は収まったが」


 一年前、三神翔太郎が一年生の頃に起きた大事件。

 「ギルド操魔学園襲撃事件」

 その裏には確かに死神の飼い猫の影が確認されていた。オーダーとギルド・ブレイブの支援に加えて、謎の船が数隻も学校近くの海に、そして校庭に現れて生徒や教師、学園を守った。大きな戦いにも関わらずに目立った怪我人も出なかったのは言うまでも無く、学園の防御魔法を強化したり、敵のギルドを船で攻撃した死神の飼い猫が率いる軍制の戦果が大きかった。当時は翔太郎も避難するだけだったが、それでもかなり大掛かりな事件だった。

 その事件で大勢を救ったとしても、連中は人殺し。

 オーダーとしては恩があれども確保しなければならないのだろう。


「そうなんだけど、あの連中は・・・・・・先代との縁はかなり深いのよね」

「なに?」

「先代。今の総取締役ね? 彼女は死神の飼い猫に恋人を半殺しにされているのよ」


 翔太郎はその言葉に耳を疑った。オーダーの隊長を務めている人々は決まって高い実力を持っているのは有名な話だ。その先代の先代が彼女の恋人なのだ。

 言うなれば、総取締役である竜崎由希子の師匠に当たる人間だ。


「な、嘘だろ? 半殺し?」

「そう。死神の飼い猫はかすり傷一つ負っていないわ、当時の隊長も含めて・・・・・・オーダーは死神の飼い猫一人に敗北しているの。唯一奴に対抗して、時には利用しながら渡り合って来たのは竜崎由希子だけよ」


 翔太郎は更に表情を曇らせた。つい昨日に対峙した奴がそこまでの魔法使いである事に対しての驚きもあるが、そんな魔法使いが犯罪者を狩り殺している。

 まるで、ダークヒーロー。

 なにか理由があっての行動なのだろうが、翔太郎は考える事をやめた。いずれ対峙する上に、死神の飼い猫にはこのスキルの正体を教えてもらえる気がする。


「あんたはそんな魔法使いと戦って無事に帰って来たのよ? 鋼夜の鬼と殴り合いしたって言うだけでも凄いんだから、トラックでキャッチボールする怪力の持ち主なのよ?」


 絶対にあの鋼夜の鬼は手加減していた。

 その言葉を翔太郎は飲み込んだ。確実に信じてもらえないだろう、オーダーの隊員たちはもう翔太郎を英雄のような扱いをしている。


「知るかよ。俺は学校に戻る、オーダーの活動にも興味はない。俺は、このスキルを早くコントロールしなくちゃいけないんでな」

「そこで、本題ね?」


 美樹は少し怪しげな声色で直ぐに答えを返して来た。


「貴方を私の弟子にしてあげる!」


 亜麻色の髪をなびかせ、北条美樹は大きな声でそう叫んだ。

 解らん、わけがわからん。


「は?」


 自分でも素っ頓狂な事を言っている事に気付いていなのかと、翔太郎は不快感を表情に思いっきり表すが彼女は気にも留めない。


「私の元で修行すれば、きっと貴方は強い魔法使いになるわ。力を持て余して、場所を求めないのは愚か者のする事よ?」

「いや、待て! 俺は修行なんて!」

「怒ると発動するのよね? そのスキル」

「あ、あぁ」

「ならイライラさせてあげる。耐えてみなさいよ、そうすればいつかはコントロールする事が出来るんじゃないの?」

「お前なぁ」


 翔太郎は心臓が熱い液体を絞り出す感覚をどうにか抑え込む。

 怒りに支配されると、破壊衝動に感情が染まってしまう。そうなると周りが見えなくなってしまうのだ。死神の飼い猫にも怒られた事を思い出す。

 

「危険だ。ここだけの話だが、魔力強奪犯と対峙した時に俺は奴を殺そうとしていた。俺の中にあるどす黒い感情が爆発するような感覚が暴れ出すと、アンタも大怪我するかもしれないぞ?」

「私をそこいらの雑魚と同じくしないで欲しいわね。心配されなくても、私は負けたりしないわよ」

「話にもならない。俺は、俺のやり方でこのスキルを使いこなして見せる」


 そう言うと翔太郎は隊長室を出て行った。



 優等生専用校舎は劣等生専用校舎と比べると圧倒的に美しい外見をしている。中世の城の様に洗練された外装であるにも関わらずに古臭くない上に、設備もしっかりしている。そして広いのだ開放感のある敷地に様々な教室のある校舎だけでなく、ショッピングモールなどもある。

 寮生活を送る学生のための処置なおだろうが、それにしても優遇のされ方が普通ではない。

 しかも授業自体は午前中で終わる。

 午後はそれぞれの専攻する分野の探求を自由に行える。優等クラスの中での基準を満たせるのであれば事実上は下校しても許される。

 圧倒的な自由度。


「不安しかねぇよ。俺は今まで普通の生活を送っていただけだ・・・・・・それなのにこんな優等生だらけの場所に」


 午前中の授業は終了し、既に暇な時間となっていた。

 優等クラスの人間が劣等クラスへと入って行けないルールはない。翔太郎は少し劣等クラスへと戻りたいと言う気持ちもあり、彼はそこへと向かっていた。

 誰もいない劣等クラスへと続く渡り廊下に差し掛かると


「ん?」


 一人の少女が立っていた。

 純白の猫耳パーカーをブレザーの下に着ており、フードを頭にかぶっている。そこから覗く前髪には一房だけ青色のメッシュがあり、右目がサファイアブルーの輝きを放っていた。その瞳を見ていると何故かとても気持ちがが安らぐような感覚に翔太郎は包まれる。その顔は以前学園の前ですれ違った女の子と瓜二つだった。

 いや、もしかしたらあの子なのかもしれない。

 左目と右目を間違えたのか。


「あ、あの」


 翔太郎が話しかけると、女の子は身体を震わせて彼を見る。

 表情からみて怖がっている様だ。

 ふと自分が優等クラスの人間である事を思い出すと、彼はネクタイを取る。


「俺は元々劣等クラスだったから偏見なんかないよ」

「・・・・・・貴方は、強い人でしょ? 強い人は沢山いるけど、その殆どが何処か狂っている連中だって、お姉ちゃんが」

「狂っている?」

「私の大切な人達も、そうだから」


 本気で怖がっている様だ。その証拠に彼女の腰あたりから薄く、青白い光を放つ猫の尻尾のようなものが伸びて来ている。

 魔法だろうが、とても攻撃的な魔法には見えない。と言ってもその格好にも増して可愛らしい姿になっている。小さい体をしている事もあってか、なにか放っておけない儚さがある。


「そうかもな。でも、俺はそんな狂った自分と戦っている。その、大切な人達もそんな自分と戦っている。全員が狂っていて、危ないのは少し違うんじゃないか?」

「そうじゃないよ。わからないけど、私には昔に体験しているの・・・・・・狂った強い人達との何かが、でも靄がかかってるみたいに、思い出せない」


 まるで意味が解らない。

 この子は何を考えているのかわからないが、怖がっている割には返事を返してくれる。


「何かあったようだけど、俺はそんな連中とは違う」

「それを決めるのは、私だと思うの」


 意思の硬い子なのだろう。

 完全な正論だ。


「真紀、どうしたの?」

「お姉ちゃん」


 同じ声が彼女の背後から聴こえた。

 翔太郎が奥の方へと視線を向けると、そこには漆黒の猫耳パーカーに左目が蒼いもう一人の女の子が立っていた。

 後から現れた女の子が以前にすれ違った子だろう。

 だが、改めて見ると印象が違っていた。

 白い猫耳パーカーの女の子は儚さと可愛らしさを感じた。その印象は同じく黒い猫耳パーカーの女の子にも感じたが、彼女は何処か凄味を感じる。その左目にまるで人を縮こまらせるほどの威圧感を隠し持っている様だ。

 優しい笑顔でお姉ちゃんと呼ばれた女の子は、白い猫耳パーカーの女の子を撫でる。まるで子猫同士がじゃれ合っている様だった。


「あれ? 君は、この前すれ違ったよね? 驚いた、優等クラスの人だったんだ。いや、なったのかな? まぁ、いいや。僕は伊達正明、この白い子は僕の妹の真紀」

「ま、正明⁉」


 翔太郎は間抜けな声を上げてしまう。

 女の子の顔と声で男の名前を紹介されたからだ。だが、その顔はどう見ても女の子の物。もしかしたら名前をつけてもらう際に何かしらのトラブルや、親の都合などがあったのだろう。

 もしかしたらとても失礼な事をしたのかもしれない。


「あ、ごめん。そうだよな、名前が全部じゃないよな」

「えへへ、やっぱり驚いた? 僕の名前聴くとみんな驚くんだよ。真紀は女の子らしい名前だから驚かれないから、少しうらやましいかな」


 笑顔を見せる正明は小動物的な可愛さを持っており、その背後にいる真紀はこちらを覗き込んでいる。そんな二人には不思議な魅力がある。

 

「お姉ちゃん、この人」

「そうかもね。何だろうね? 普通じゃない様な」

「なんだ? 俺が何か?」


 真紀は翔太郎の目を覗き込むように見上げるすると、右目を少しだけ輝かせる。

 すると、とても心が安らいだ。まるで長年の悩みが綺麗スッキリと消え、心が軽くなったようなそのような解放感が翔太郎を包み込む。それと同時に正明が彼の目を左目で覗き込んで来た。

 その瞬間、彼の心に冷たい針のような物が突き刺さった様な感覚が現れた。そして、正明が呟く。


「紅い瞳の魔法使い」


 翔太郎は思わず仰け反ってしまう。

 今の自分の顔がどうなっているかは容易に想像できる。何をされたのだろうか、彼は同じ顔した二人の女の子に恐れにも近い感情を受けるが、それでも彼の心に微かだが喜びの感情が芽生えていた。


「な、なんで? 解ったんだ? 僕は怒っていないぞ?」

「なるほど、怒るのが発動条件なんだね」


 真紀の言葉に翔太郎は自分が口を滑らせたことに気付く。

 

「図星だ。お姉ちゃん、昔に読んだ絵本と同じだね」

「そうだね。凄く珍しい、僕も実物は初めてだよ」


 真紀は先程の警戒心が嘘のように明るい表情を見せていた。

 姉と一緒にいるので落ち着いたのだろう。だからか、翔太郎の方にも彼女は近寄って来る。


「綺麗な色だね。昔の英雄も同じ目をしていたらしいけど」

「なんだよ、さっきまで怯えていたくせに」

「怖いよ、貴方は思ったよりも強い人。何処か狂っているかも知れない人。でも、それでも拒否する理由なんてないよ? 怖くても、変でも、危なくても、私は何でも知りたい」


 彼女は興味深々とも言いたげな顔で翔太郎の顔を覗き込む。彼よりも圧倒的に背が低い彼女が腰から生やした尻尾で身体を持ち上げていると翔太郎が理解するまで少しだけ時間が掛かった。女の子にまじまじと見られてドキドキしたのもあるのだろうが、それ以上に安らぎを感じていたからだろう。

 不思議な女の子だ。


「真紀、女の子がそんなに顔を近づけるものじゃないよ? 困らせないの」


 正明はそう言うと真紀と同じ様に腰からの尻尾を彼女に巻き付けると、自分の方へと引き寄せる。真紀は小さく「ひゃっ」と声を上げると正明の手前に降ろされた。

 

「ごめんね、えーっと・・・・・・名前、聴いてないね?」

「あ、あぁ。俺は三神翔太郎」

「翔太郎君、この子は少し好奇心が強くて・・・・・・変な子でしょ?」

「お姉ちゃん酷いよ」

「変わった子ですよ」


 お姉さんの様に正明がそう言うと、笑顔で真紀の頭を撫でている。

 物静かな感じの真紀だったか、極端に怖がりだっただけの様だ。


「それじゃ、またね翔太郎君。僕たちは授業あるから」

「あっ、あぁじゃぁまた」

「またね」


 二人で劣等クラスへと歩いて行く伊達姉妹の背中を翔太郎はただボーっと眺めていた。

 予鈴で我に返った翔太郎は、此処での時間がまるで幻覚だったかのようにも感じた。



「お姉ちゃん、あの人がそうなの?」

「うん、そうだよ。ごめんね? 少し遅くなって、怖かった?」

「私、印象最悪だよね。どうしてもね、少し刺々しくなっちゃうから」

「興味を持つのは良い事だけど、あまり深入りしないようにね?」

「狂っているって話?」

「うん、僕や巧みたいにね」

「私は・・・・・・みんながおかしいなんて思えないよ」


 正明はそんな真紀を横目で見ると、少しだけ悲しそうな表情を浮かべる。

 

「アイツは巧と同じ存在なんだ。まだ見た事ないだろうけど、怪物の一人。いつか、戦う事になるかも知れないからね。真紀にも知らせておきたかった」


 周りには誰もいない。

 真紀は黙ってうなずくと、蒼い右目を薄く輝かせた。


「うん、お兄ちゃん」

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