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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
力の代償と飼い猫の憂鬱編
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飼い猫の憂鬱と新人メカニック 2

メカニックって、魔法に似合わない?

魔法が進歩していても人間は科学は捨てないと私は信仰してます。

2


 俺は早々に頭を抱えていた。今日は新たなメカニックが技術部門に入って来るのだが、その本人が見当たらない。


「まぁ、技術屋ってのはこんなもんさ、遅れてくる事が殆どで俺も由希子にどやされる」

「御堂、俺はいいがその俺の師匠がな」


 俺はのんびりとコーヒーを淹れている御堂に、背後へと視線を向けるように促す。

 それで御堂は苦笑いをすると、青いサングラスの位置を正して自分の作業机にある椅子に腰かけた。俺の背後では美樹が鬼の形相で腕を組んでいたのだ。

 待たされたことにイラついているのはわかったが、それ以上に聴きたい事が御堂にあることを俺は知っていた。


「御堂衛! あの蒼いヴァルキュリアはなんなの!? あんな近接戦闘特化の変態魔具を作り出せるのはアンタしかいないわ!」

「随分だなぁ~、俺の仕事って言いたいの? あの蒼いヴァルキュリア」

「死神の飼い猫に盗まれた事を隠したいのかしら?」


 美樹は疑わしいと言わんばかりに目を細めるが、御堂はおかしいと言いたげにコーヒーを飲んでいる。


「あのヴァルキュリアね、近接タイプじゃなくて、中距離型の素人用機体だよ。ショットガンは弾丸のばらつきが小さいから多少離れてても平気だし、ランチャーも距離を取っての高火力、それにビーム形態? あれは傑作だ! マジに対物用に開発されているよ」


 御堂はそう興奮気味に言いながら図面を空中に広げてくるそのなかに、ビーム形態の実験映像があった。

 そこには魔理と由希子、そして御堂がいる。場所は海岸?


「この時は震えが来たよ。こんな威力のビームは今の俺じゃ再現不可能だ」


 御堂が呟くと同時に魔理がビームを発射すると、海がビームの形に蒸発して、まるでアイスをスプーンで削り取った断面のように海が形を変えた。

 蒼いビームが放たれた後は銃がバシュー!と蒸気を吐き出した。

 その後に魔理の身体が光の粒子を吸収する。おそらく、魔力を回復したのだろう。


「こんな危険な代物、素人に持たせるの!? それに、答えなさい! あれは奪われたの!?」

「落ち着きなよ。結論を言うと、ヴァルキュリアはパワードスーツよりもコストはかからないが、繊細だ。だが、構造自体は複雑ではない、何処かでヴァルキュリアを魔法でスキャンすれば設計図は手に入る」

「あっ、あの時に」


 多分死神の飼い猫に共闘を持ちかけられた時のことだな。美樹はヴァルキュリアで彼女と戦っている。その時に弱点意外も探っていたのか。

 化け物め。


「だが、魔理ちゃんの魔具はヴァルキュリアとは全く異なる性質を秘めた機体だ。それこそ、彼女の背中にある模様が起動の鍵なのかな? 彼女にしか起動出来ないんだ」

「彼女しか起動出来ない? 珍しくもないわ、魔法でロックをかければそれぐらい」

「魔法だけどその鍵が魔法ではどうにもならないものなんだ」


 御堂は嬉しくてたまらない顔をしている。

 俺はその姿に何故か魔力強奪犯や死神の飼い猫を重ねていた。


「鍵は、彼女の遺伝子だ。魔法で書き換える事の出来ない最高クラスのセキュリティ! イカれてやがる! はははっ! 全くあの連中の技術は俺達の何百年も未来の物だ!」


 その言葉に俺は御堂の胸ぐらを掴んでいた。


「おい、魔理に変な事してないだろうな?」

「するわけが無い。彼女は貴重なサンプルである上に、一人の人間だ。人権を無視はしない」

「アイツは物じゃない」

「でも、身体の謎は解かないとだろ?」


 俺は御堂を放すと、気分の悪さに舌打ちをしていた。

 俺の大切な人の一人に未知の技術を埋め込んだ死神の飼い猫、それを興味津々で研究材料にする御堂。何が違うってんだ! コイツらとスペクターズは何処に差があるんだ!

 その時だった。


「今度こそ此処だ! ごめんなさい! 道に迷ってしまって」

「来た、彼女が新しいメカニック。山吹 百合さんだ」


 慌ただしくラボに入って来たのは前髪で目が隠れてしまっている女の子だった。

 なんだか新種の妖怪のようだがメカニックにしては随分と締まりのある身体をしている。と言うか、普通にスタイルが良い。きっと四六時中走り回っているからだろうな。

 

「ふーん、私を待たせるなんて良い度胸じゃない。桜子もそうだけどこの娘もだいぶ変な奴ね」


 美樹にそう言われた百合は怯えたような仕草を取るが、思い出したかのように肩からかけていたカバンから何かを取り出した。

 その行動に美樹は身構えるが、差し出されたのはお菓子の入った箱だった。


「スミマセン! 遅れてしまって! これ、つまらない物ですが」

「え? え、あ、ありがと」


 美樹はお菓子を受け取るが、何処か勢いが削がれてしまったと言わんばかりだ。

 御堂はその様子を見て、本題を切り出した。


「さて、今回はヴァルキュリアの銃に応用力が欲しいだったな」

「あぁ、武力行使だけが正解じゃない。非殺傷、捕獲目的の兵装が欲しい」

「男子達のパワードスーツは? 女の子への装備だけじゃないか」

「ヴァルキュリアは防御において劣る。その点では男子の装備は基準を満たしているし、今のところ不備はない」


 俺の言葉に御堂は生返事を返すと、百合に何かを出すように合図を送る。

 すると、彼女は掌に魔法を組み立てて立体的に銃の模型を召喚する。そこには新たに造られたであろうライフルの造形、そこには分かりやすく変形機能付きと書かれていた。


「なるほど、魔具には一つしか魔法が付与できない。だから変形させて別の性質の武器にすることで複数の魔法を使える様にって訳か」


 俺がそう言うと、百合は驚いた表情になる。


「な、なんでわかったんですか!?」

「見れば解る。簡単だが、良くできた工夫だ」

「私の弟子を見くびらない事ね。彼のパワードスーツは、彼自身が魔法術式を組み換えて作り出した物なの。つまり、彼は魔具やパワードスーツも造れるわ」

「美樹、変なこと言わないでくれ。俺はこの手の技術は使えない、ただ見れば理解出来るってだけだ」

「やっぱり、いるんだね。万能の天才」


 百合は顔を伏せてそう呟くが、俺はそんなんじゃない。

 例えそうだとしても、戦えない連中のためにしかこの力は使わない。それが、俺なりの正義だ。


「計画段階だが、用意しておく。お前たちは気にせず街の平和を守ってくれ」


 御堂はそれだけ言うと、魔術モニターを広げて作業に取りかかった。

 俺は頷くと、事件の通信魔法を聴いて駆け出した。


「美樹!」

「解ってるわよ!」


 俺は走りながら手甲からパワードスーツをまとった。

次回もよろしく

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