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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
新オーダー設立編
32/289

蒼いヴァルキュリア 3

NEWスーパーヒロインの誕生!

因みに初期では彼女は早々に狂って頂く予定でした


 人間の心と言うのは言葉なんかで変われる程に安上がりなモノではない。人間を変えるのは揺るがない何かであり、それは大概の場合は避けられない事象、現実、酷く人間を陥れて苦しめるものである。

 神がいるのだとしたら奴は半端な仕事をした挙句に、巻き込まれた存在に責任を転嫁し、自身は失敗の無いものであると豪語する愚か者でしかない。

 悪魔がいるのだとしたら、人間を地獄へと叩き落し、自身の愚かさと浅はかさを深く後悔させるだろう。そして、いたずらに運命をかき回して人間に生きている実感を与える。その代りに破滅を傍らに配置してイかれた賭けを命の限り続けるだろう。その行為には身に覚えしかない。

 そう、人間だ。

 救いなんてものは無い、気まぐれの連続で運がいい道を歩む者もいれば歩き始める前から神を気取った屑に殺されることもある。だが、悪魔は違う。奴らは与え、使わせ、試し、動かし、楽しみ、そして新しい歴史を作る。

 その本流の中で人々は生きるしかないのかもしれない。


 正明は魔導書を閉じると、懐から一つの魔具を取り出して病室の床に放る。

 それは瞬く間にヴァルキュリアの装着台となって少し広めの個室に広がる。用意されている装甲は蒼いデザインが施されており、武器には取り回しやすい切り詰められたショットガンが採用されていた。この武装ならば射撃の経験が無い彼女でも向けて撃つだけで狙う必要はない。その上で、ハイレグ使用のインナーを廃止して、上腕の半ば、太ももまでに露出の面積を広めた。羞恥心で敵との戦闘に支障きたさない様の配慮だった。

 これらは正明がデザインしていた物を宗次郎が監修し、武装の改造を製作を手伝ってくれたことで実現した武装だった。

 正明はデバイスでメッセージを御堂衛へと送信する。

 ヴァルキュリアの基礎メカニズムを譲渡してくれたのは彼なのだ。


「朝になったが、連中は苦戦している様だな。まぁ、仕方の無い事だろうな・・・・・・ギルドを丸々1つと紫の瞳をした男がいる。アイリス、彼女の容体は?」

「医師が、優秀。ポーションで、回復する」

「よし」

「これで、良いの?」


 アイリスが呟いた言葉の意味を正明は理解していた。

 彼女の人生を狂わせてしまう事になるだろう。世間が仰天するであろう魔具の所有者となってしまうのだから。しかし、彼女は三神翔太郎と共に歩めないと知って絶望したなら確実に人間を殺すタイプだ。

 常人以上にその心が強い。

 要するに正明や仲間達と同類なのだ。人間を殺す前に力を与えて理性ある集団の中で成長しなければ自らの心に打ち勝つことは出来ない。

 なまじ人より秀でているから危険なのだ。


「彼女は自分がどうあるべきかを学ぶべきだ。俺に偉そうな事を言う権利はないが、彼女は本来なら他人のために動ける人間なのだろう。なら、無益な人殺しにするよりはずっと良い」

「彼女には・・・・・・恨まれるかもね」

「構わないよ、恨まれることをするんだ。独断と偏見でな」


 正明はそれだけ言うと、魔理を魔法で覚醒させる。

 もそもそと彼女は寝ぼけた様子で身体を起こした。もう傷の心配はない、アイリスの回復魔法とポーションの効果で治っている。門外不出の技術のオンパレードだ。


「んん・・・・・・あれ?」

「おはよう、杉崎魔理。昨晩の約束を果たしに来た」

「え!? な、あ」

「驚くことは無いよ。さぁ、こっちに来て」


 正明は仮面をした顔で魔理の背中を押して設置台の前まで連れて来る。

 彼女はその設置された凄まじい装備を見て、目を丸くしていく。


「君の物だ。この力で悪意ある魔法使い、兄弟達、そしてある時は俺達から人々を守る。ヒーローとなる、三神翔太郎と一緒に」


 正明はそう言うと彼女に最後の質問をした。


「本当にその覚悟があるかい? まだ、引き返せる」


 魔理は少し考えると口を開く。


「私ね、自分でもおかしい人間だって思うんだ。翔が好きなのは昔からだけど、それがこんなにどす黒い感情になるなんて・・・・・・嫌だった。真紀ちゃんや、いちごちゃんに相談に乗って貰ってもスッキリはしたけどこの気持ちに決着は付けられなかった」


 正明は黙ってその言葉を聴いていた。

 何処か、彼女は過去の自分と真紀と被って見える。


「もう少し、大人にならないとね。こんな私でも誰かを守れるなら、友達や好きな人、お父さんとお母さんが住んでいる街を私も守りたい。人を恨んで生きて居たくなんかない」

「君の気持ちを尊重するよ。俺達は人殺しだが、君は違う。生き方を探すんだ、納得できる道を歩めるように、幸せを掴み取るために」


 正明は彼女の隣に立つと彼女の頬に涙が伝うのを見た。


「なんでかな? こんな・・・・・・私、嬉しいのに。でも、少し悲しい」

「その気持ちを忘れないで、不安や恐怖から未来にいる仲間達が君を守ってくれる。そして、悲しいのは変われないと君自身が諦めているからかもしれない」

「え?」

「大丈夫だよ、きっと君は変われる。その心の中にいる狂気は君自身の心だけど、それ以上に君が優しい人間だって知っている人々が見捨てずに支えてくれる」


 正明はそう呟く。

 魔理は涙を拭うと、ゆっくりと台へと上がった。

 衣装転換でインナー姿に変えると、正明は設置台を起動させる。

 ヴァルキュリアを装着した彼女は蒼い流出を放出して宙に浮かび上がる。その姿はまるで天使の様に神々しく可憐で、晴れ渡る青空の様に美しかった。

 設置台を魔具に戻すと、正明はヴァルキュリアに施した最後の機能を出現させるための魔法詠唱を始める為に小瓶を3つ浮かべて魔導書を開くと澄み渡る様に凛とした声を放つ。

 

「美しきせせらぎは、濁る事を知らず、旅路の中にでさえも涼しい風を運ぶ。待ち人の十字路、打ち明ける空虚な海、瞬きの雷雲、帰り道。流るる責務の前に、答えを探せ。発動せよ! 雲の隙間より露わたりて帰還を守れ! 魔力循環法則第二術式!」


 すると、魔理のインナーがサファイアブルーの光りを放ち電子回路の様な模様を浮かべる。これが、四肢と背中のブースターの魔法循環を助けるだろう。

 そして、もう一つ。

 そのブースター内に組み込まれた魔力を回復する魔具の発動コードでもあった。


「旅の始まりだ。行け、道の途中でまたすれ違おう」


 正明は魔理を転移魔法で三神が戦っている現場まで飛ばした。

 アイリスと正明しかいなくなった病室で、彼はベットに座る。


「お人好し・・・・・・あんなに悪い顔で、魔具を擦り付ける目的だったクセに」

「そうかな? 僕は屑野郎だよ」

「徹夜してアレ作って、朝まで彼女のそばを離れなかったのは、紫の瞳をした男が、来ない保証が無かったからでしょ? それに、彼女の未来を、本気で心配してる」

「似てるんだ。彼女は、僕に・・・・・・愛に裏切られて、人を殺した僕とね。彼女は、僕になるべきじゃない。大変な人生になるかもだけど、人殺しよりはずっと良い」


 正明はそう言うと、溜息を吐いてデバイスを開く。

 そこには三神翔太郎と紫の瞳をした男、北条美樹と敵のギルド長が戦っている様子が映っている。それも手下どもの妨害や、民間員への攻撃で上手くいっていない様だ。

 加々美が撮影しているからか、変な実況が付いてくる。


(そこでジャブ! あーやばい! 敵のショッガンパンチ! これは手痛い!)

「うるさいな、この実況」


 正明はデバイスを閉じて立ち上がると、仮面を外した。

 そのタイミングで、真紀といちごが見舞いの品を持って入って来た。


「あれ? お姉ちゃんとアイリスさん?」

「真紀、いちごちゃんも一緒?」

「魔理ちゃんは?」

「さぁ、見当たらなくて。戻ってくるまで待とうってね」


 そう言うが、真紀はベッドに正明がいなかったことで察していたのだろう。

 納得したような顔で頷いていた。


「ねぇ、いちごちゃん。最近ね、僕ダイエットしようかなって」

「それで、ダイエットしたら餓死すると思う」

「じゃあ腹筋?」

「少し肉を付けた方が可愛いよ」

「そうかなぁ?」

「点滴で栄養過多にして、太らせよう」

「アイリス、怖い事は言わないで」


 正明とアイリスはここで見守る事にした。

 魔理の戦いを。

戦火は街角で上がった

情報が流され、買われては裏切りを生む

彼が与えた力は約束か、束縛か

命の灯火よ、互いに重なるがいい

君はまだ何も解ってはいないのだから

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