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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
新オーダー設立編
29/289

紅色の唇で貴方を呼ぶ 3

暑苦しいのなんざご免なんだ。

まぁ、好きに読めばいい

なんてね、続きです!

3


「魔力の回復には成功している?」


 WELT・SO・HEILENの第一船マストに縛り上げられた正明は仲間達に取り囲まれていた。

 理由は簡単だ。

 彼が隠し事をしている事に気付かれたからだ。


「お前も人が悪いな。オレに隠し事が出来ると?」

「ごめんなさい」


 正明は素直に仲間達に謝罪していた。しかし、この技術を公にしていた場合、現状は今より悪かっただろう。

 問答無用で正明が狙われ、今よりも大勢の私利私欲にまみれた屑どもが死んでいた事だろう。

 正明にとっては良いのだが、下手を打てば真紀が今回の様に巻き込まれていたのだ。


「隠し事をするなとは言いませんが、技術の事ぐらいは話して下さい。他人には怒るのに、そう言うのは感心しません」


 志雄が少し不機嫌そうに正明のほっぺたをつねる。彼女としてはじゃれているだけだろうが、彼にとっては激痛だ。


「いだだだ! ごめん! ごめんなさい! 拷問はもうやめたじゃん!」

「大袈裟ですね、これぐらいで。宗次郎も思いませんか?」

「ゴリラの遊びを人間に求めるなよっばぁ!」


 バカがアッパーを喰らっているが、正明は赤くなった頬をマストに押し付ける。

 宗次郎と志雄のケンカを見て加々美と京子が盛り上がっているが、正明の前に八雲が立つと、二人は見えなくなってしまう。


「どうしたの?」

「見えているんでしょ? 左目で」

「うん・・・・・・ごめん僕も行くべきだったね」

「気にしない! 僕もうかつだったし、それに正明が受けるより全然マシ。君なら死んでいたでしょ?」


 八雲に赤くなった頬を冷却魔法で冷やされながら正明は拘束から解放される。

 アイリスは黙って相当に薄めたポーションをかけてくる。彼は頬の痛みが引く事を代償にずぶ濡れになった。


「僕を水浸しにするの流行ってる?」

「薬浸しの、間違い」

「危ないね」


 アイリスの屁理屈にそれだけ返すと、正明はアイリスの魔力を少し使って掌に一つのキューブ状の魔具を召喚する。

 魔装にしても良かったが、これは1つの魔法に特化した魔具が最も効率的に製作できた。正明はこの技術自体はかなり前から出来ていた事を隠していた。

 不安定だったのだ。


「この魔具は不安定で、回復量は酷く少ない上に、僕以外が使えば相当センスが無ければ暴走して魔力が作れない身体にしてしまうかもしれない。まぁ、そうなる前に強制停止する様に改良はしているから大丈夫だけど」

「それだけでも革命的だ! なんで私物化したんだ?」

「自分で、試したんだ。人外化施術をした存在にこれは使えない、いや? 使ったら多分命を奪うレベルの兵器になる」


 巧の言葉に正明はそう言うと魔具の力を発動すると、彼女に向けて魔具をかざす。蒼い光が展開され、巧の身体を包み込むと体の中に納まっていった。

 彼女は表情を変えないが、今度は正明は自分へと魔具を発動する。

 その時に彼は口にポーションを咥えていた。


「待て! 正明!」


 巧の静止も間に合わずに正明は何かに吹き飛ばされたように凄まじい勢いで甲板から海へと落下した。八雲が直ぐに彼を回収して甲板に戻ったから大事には至らなかったが、正明はズダボロの姿になってゼェゼェと息を切らしていた。


「な、何を!?」

「おい!」


 ケンカをしていた宗次郎も志雄も顔面蒼白で駆けつけて来る。


「見ての、通りだ。っう・・・・・・、人外に使うと魔力が身体の出前で大爆発レベルの威力を持つ、小さな爆発に変わる。ははっ、隠すのは大変だったよ。始めの頃は魔装を着てたから大丈夫だったけど、下手したら即死・・・・・・うへへ」

「死ね! 死んだらどうするんです!」

「うぎゃう! 待って! 頭痛が痛いぐらいに国語力が落ちてる!」


 志雄に締め上げられる正明は何とか抜け出すと、そのキューブを仕舞う。

 

「だけど、その魔具の存在って誰か知っている人いるの?」

「いないよ、僕は・・・・・・あ、あぁ・・・・・・あああああああああああああ! にゃあああああああああああ!」


 正明はいきなり叫ぶと再び海へと飛び降りようとするが、京子に魔法のロープで縛られると引き戻されてしまう。

 甲板に背中をついた彼は仲間達に一斉に取り囲まれて逃げられなくなる。


「これは、何処かに漏れてるな? お前、大失態だぞ」

「宗次郎こそ、この前爆死したからって加々美のヘソクリくすねたの見たんだからな!」

「あとで殺すのぉ、この鴉!」

「爆死した悔しさを知れば解るよ!」

「加々美さん、宗次郎! ケンカしていると逃げますよ!」


 志雄の言葉に二人は一旦落ち着くが、タダ抑え込まれている訳じゃない。

 転移魔法も出来ないように空間を支配され、魔力を吸い取らないように全員が目を光らせている。そして左目を防ぐためか、目隠しまでされた。


「誰にバラしたんですか? 教えなさい」

「多分、三神翔太郎。アイツがあまりにも酷い戦い方してて、感情的になってた・・・・・・その時にこの魔具で女の子の魔力を少し回復してあげて・・・・・・その時、口を滑らせたかも」


 正明はそう言うと解放された。

 仲間達は彼を責め立てるよりも、対策を考え始めている様だ。

 その点では正明も同意見だった。今回の情報流出は正明のミスが原因だ、いがみ合いよりも解決に体力と頭を使うべきだ。

 加々美が正明にホルスターを投げて来る。


「もう、ほれホルスター。紫の瞳をした男にあの三神翔太郎が情報を漏らすかも! 速く奴を見つけようよ!」

「いや、紫野郎は放っておこう! まずはオーダーだ。今の連中は予定とは違う行動を取るぞ!」


 宗次郎はそう言うが、アイリスはデバイスを軽く振って映像を空中に出す。

 そこには待ちで起きている事件の書き込みが映し出されていた。SNSの書き込みだろう、そこには街にヴァルキュリア、パワードスーツ装備のオーダー、華音の目撃情報、それに加えて三神翔太郎と言うニューリーダーについて様々な情報が飛び交っている。

 そして、謎の魔具出現のニュース。

 最悪だ既にオーダーは団結して、調査ではなく追跡を始めたと言うことだ。


「竜王の剣部隊まで動いてはいない様だね、良かった」


 京子がホッとした声を出す。

 それはそうだ、連中まで出てきたらとうとう動き辛い。


「でも、オーダーも面倒だ。今は団結して、空から陸から攻めて来る。それに、曲がりなりにも兄弟達の一人である三神翔太郎もいる。まだまだ強くなるぞ、アイツは」


 宗次郎が焦ったような声を出す。

 それもそうだ、単騎で戦っても勝てる要素が何もない。

 正明はSNSの書き込みの中に、1つ妙な物を見つけた。鳴神華音が、歌っている。と言う記事だ。

 マフラーを召喚して正明は確認すると、確かに彼女の歌が聴こえて来る。


「歌って、いる? 何で? 今日は・・・・・・そうか!」


 正明はデバイスを分解して広げると、魔装をフル稼働させる。


「どうしたの? いきなり本気モード?」

「華音は、伝えてくれている。僕が失敗した事と、そして、今がチャンスだって事も」

「え?」


 加々美を筆頭に仲間達は首を傾げる。

 その中でも八雲と巧はなるほど、と言った感じで首を縦に振っている。


「今、世の中裏と表に二つの似た情報が交錯している。魔力を他人に与える魔具と、魔力を回復させる魔具の存在。潰したギルドが紫の瞳をした男との取引を望んだように、死神の飼い猫も同じ技術を持っているって情報が大々的にギルドや警察組織にも流れた」

「だから、それが危険なんじゃ?」


 アイリスがそう言うが、正明はホルスターの魔力をふんだんに使って華音の歌で魔装の術式を組み立てていく。


「危険だよ! でも、僕達だけだ! ギルドは疑心暗鬼だ。その魔具が僕の物なのか、奴の物なのか確たる証拠はないけど喉から手が出るほど欲しいはず。紫の瞳をした男は邪魔になる、僕の存在やその噂の存在。だから、ぶつけてやろう!」

「ん?」

「いつもの手さ、今回も使える!」


 正明は魔装の術式を組み立て終えると全てを収納する。

 彼は戦闘に必要な術式と、二つのギルドへと情報を流していたのだ。


(魔力は我が手中にある。選択を誤らない事だ)


 これだけの文を送り付けた。

 勿論自分の二つ名でだ。

 送り付けた先は、志雄とアイリスが潰したギルドの姉妹ギルドだ。その連中もこの事件に一枚かんでいた事を知っていたから、正明は挑発したのだ。

 この文を敵はこう言っている様に捉える。「俺の商品のパクリを選んだから、奴らは死んだ」なんてニュアンスに聞こえるのだろう。

 正明は魔装で整えた装備を召喚する。

 それは小さいSFチックな銃だった。


「結局は、そうなるのですね?」

「まぁ、知ってた」


 志雄と加々美がそう言うと、正明はもう一度キューブを取り出して悪い顔で笑う。


「ねぇ・・・・・・パワードスーツに合う体質と合わない体質があるって、知ってるよね?」


 キューブもそう、体質がある。

 魔法使いは受け入れ、人外は弾き飛ばす。

 正明は何かを思いついたと言わんばかりに、キューブを小さな掌で転がした。

また変わらないのか?

楽な道が無いのは何故か考えたことは?

そんな酔狂な奴はいないのかもしれない

私は考えていた

この世界は足の引っ張り合いが好きらしい

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