第二話 紅と蒼の間にて、王を待つ
続きです。
なんか、新装備が何処かで観たような。某ラノベではなく、地球防衛軍のウィングダイバーがモデルです(笑)
「彼の力は魔法使い史上最強のスキル。その一欠片」
薄暗い建物、しかし、辺りは整理されたオフィスだ。明らかに組織が管理している仕事場とも言えるような所で二人の男が向かい合って話をしていた。
紫の瞳がもう1人の男へと向けられ、男はそう呟く。
彼は大きなため息を吐くと、手にしている銃を指先でクルクルと回す。
紫色の瞳をした男は彼のその様子を見て、話しを続ける。
「いつか、俺達の前に現れる彼の者に献上すべく。この瞳を持つ者は剣となる」
「で? 俺TUEEEのバカが復活して? 何が起きる?」
「知る事になる。この世界の根幹、偉大なる始祖の物語の全てを! その資格を持つ者は! 栄誉ある紫の瞳を持つ者のみ」
「そうかい、まぁ、せいぜい頑張りな。その頃には、俺がお前達を潰しているだろうが」
「それは、楽しみだ。ご子息が1人をよろしく頼む」
「お前の為じゃねぇ」
銃を持つ男は背を向ける。その瞬間、紫色の瞳をした男は銃を引き抜くと彼に数発の弾丸を発射した。
弾丸を銃を持つ男は倒れ込むようにして避けると、身体をひねって床に寝転ぶと同時にパワードスーツをまといながら銃を乱射する。その時に彼の心臓付近に弾丸が飛んでくるが、まといかけのパワードスーツに守られる。
撃った銃弾は紫色の瞳をした男に全弾命中するが、男は多少体を揺らす程度でまるで効いていない様だ。
「合格って事か?」
「素晴らしい護衛だ」
紫色の瞳をした男は拍手を送る。
紅い月をバックに立つ彼の姿は銃を持つ男に、死神の飼い猫とはまた別の闇に潜む住民の様に感じさせた。
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俺はは改良された新装備を装着した美樹と訓練場にいた。
「どうだ?」
「良い感じよ? 前みたいに全裸にならなくて済むし、この水着みたいなの服の下に着ていればいいわけでしょ? それに召喚出来るようになったのは良いわね!」
美樹はゴツイ装備を術式解除で外すと、また指を鳴らす。
水着の様な装備を来た彼女の周りに魔具のパーツが出現して、腕を軽く開くと自動的に装備が装着される。
更に、魔力の供給も効率化された上に容量も増加しているため長時間の装着が可能となった。
「それなら正式に使えるだろうな」
「えぇ、それに良い電池もいるしね」
「俺を電池って呼ぶなよ!」
新たな改良点としては、俺のパワードスーツから有線接続して魔力を魔具に流し込めるようになった事だ。
「そして、紫色の瞳をした男の情報は進展なしか。事件も起きていない様だし」
「それが不気味ね」
その時に腕時計型の魔具から警報が鳴る。
(市街地にて強大な魔法使いの被害が報告されました。座標を転送します、オーダー出動してください)
「よし! 美樹、連中に知らしめるぞ!」
「良いわね、私が教えた魔法はバッチでしょうね⁉」
「あぁ、予習はばっちりだ」
俺はパワードスーツを着用して美樹と共に空を駆けた。
学園から少し飛んで、事件の現場は簡単に見つけ出すことが出来た。派手に暴れていれば簡単に見分けがつくだろう。俺は急降下すると、今にも先に駆け付けていたであろうオーダーの女子隊員に派手な火炎系の魔法をぶっ放そうとしている男の眼前に着地する。
「俺の隊員に、怪我させる事は許さん」
俺は男が火炎魔法を放つ前に右手で封印術式を組んで無力化して、顎を殴って気絶させる。その側にいた仲間の男もかなりの使い手なのか、直ぐに俺に雷系の魔法を撃ち込んでくるが、俺は右手一本でその魔法を霧散させる。
圧倒的な魔力量で、術式を崩したのだ。
今の俺には魔力の暴走は無い、それどころか魔法の習得のコツも掴んだ。
「杜撰だな。もう少し練習しろ」
俺は風弾を人差し指に作って雷の男にぶつけると、彼は一撃で伸びてしまった。
「情けない、魔法は威力だけかよ」
「クソ!」
迅速に倒し過ぎて周りの状況が掴めてなかったな。
犯人は三人だったらしい。最後の一人はバイクにまたがると急いでその場を走り去っていく。俺の走りなら追いつけるだろうが、ここは新装備に活躍してもらおう。
「美樹、デビュー戦だぜ?」
「解ってる!」
猛スピードで走り抜けていくバイクだが、新装備の機動力とスピードに比べるとまるで話にならないな。
道路を縫うように走るバイクは頭上から迫る美樹には対応できずに、一方的に破壊された。
「くっ! なんだ、そのパワードスーツ!?」
「新型とだけ教えてあげるわ」
美樹は銃に魔力を充填すると犯人へと発砲するが、奴も防御魔法で防いで来た。
甘いな。
撃ち放たれた魔力弾は防御魔法の強度をいとも簡単に打ち抜いて、犯人を戦闘不能にする。
「凄い、機動力が並みのパワードスーツなんか目じゃないわ」
女子隊員は目を見開いて空中から見下ろしている美樹を確認する様にみる。
「これが、新装備。・・・・・・えーっと、ヴァルキュリアだ。高速戦闘に加えて、飛行を主な移動手段としているから今みたいに市街地でもバイクやパワードスーツ以上に小回りが利く」
俺は犯人を警察車両の近くへと放り投げて女子隊員達にヴァルキュリアの説明をする。その装備の性能に、初めは否定的だった女子隊員達も目の色を変えて来た。
これはいい傾向だ。
「だが、これは集団戦用だ。これまでの様に単騎での出動には向かない」
「確かに、良い装備だけどオーダーのやり方には合っていない様に思うわ」
「だから方法を変える。さっきも、俺が来ていなかったら危険だっただろ?」
「うっ、それは・・・・・・その」
「いざという時にみんなを守るのが、隊長の役目だ」
俺はマスクをとって素顔で女子隊員の眼を真っ直ぐに見る。スキルを発動しているからきっと紅く輝いているだろうな。
その眼に気圧されたのか、俺が目を合わせた女子隊員は目を伏せるように逸らすと頬を手で抑えている。
「これから犯罪者はもっと強力になって来る。これからは連携の時代だ! みんな、俺にその身を守らせてくれ! そして、俺がヤバかったらその時は助けてくれ! オーダーは1つになる時だ」
俺は堂々とした態度でそう宣言する。
その言葉に女子隊員達は、少し仲間内でひそひそと話し合いをした後に整列して俺へと敬礼する。
「これより! 三神翔太郎隊長の意向に従い、共に戦う事を宣言いたします!」
俺はパワードスーツを解除して、ルビーが埋め込まれたエンブレムを肩に付けた隊長用のコートを羽織ると、同じように敬礼をしてその士気に答える。
「ようやくね、翔太郎」
「あぁ、ここがスタートだ」
美樹とそう言った会話の最中に俺へと通信魔法が入った。俺が術式をアクティブにすると、遠山の声が大音量で響いて来た。
「翔太郎! 大変だ! くっそ、またこのパターンかよ!」
「なんだ!? 遠山! 速く要点を言え!」
「魔理ちゃんが、怪我して」
「な、なに!?」
俺は後の事を美樹に任せると、パワードスーツを起動して飛んでいた。
「今は病院に担ぎ込まれた所で、出血が酷いって! やばそうだ! 速く来い、前にお前も運ばれた所だ!」
「わかった! だが、なんで魔理が!? アイツはオーダーじゃないぞ!」
「詳しくは来てから話す! とにかく来い!」
俺は病院が見えて来ると、パワードスーツで病院をスキャンして遠山の場所を見つけると、転移魔法でそこへと飛ぶ。
空中から現れた俺を看護師や周りの患者が驚くが、それに構っていられるほど俺に余裕は無かった。
「遠山! 魔理は!?」
「今は治療している所だな。切り裂かれたのか、腹部から肩口までバッサリだ。よく、即死しなかったものだ」
「う、嘘だろ・・・・・・アイツが、どうして狙われるんだ?」
俺は脚から力が抜けていくような感覚に捕らわれながら、手術室の前に来て実感が湧く。
「遠山、見てたのか? アイツが襲われる所を、お前は黙って見ていたのかよ!」
俺は遠山の胸倉を掴んでいた。コイツ程の実力者が助けられないはずがない。
「見てない、俺は彼女が襲われた後に犯人と交戦しただけだ! まずは落ち着け!」
「落着いていられるか! アイツはガキの頃からの、家族みたいな奴なんだよ!」
その時に、また胸の奥が爆発するような感覚が襲ってくる。
これは暴走の、くそ! 落ち着く事ができねぇ!
「落着いて、三神翔太郎君」
静かな声に俺は振り向いた。
その瞬間、背の小さな女の子の蒼い輝きを持つ右目に覗き込まれていた。その瞳を見ていると、俺は少しずつだが冷静になっていくのを感じていた。
なんだか、温かい気持ちになるような。
「落着いてくれた。よかった」
ニコッと笑う女の子はいつか出会った伊達正明の妹である、真紀だった。そして傍らには劣等クラスであろう長い黒髪で、リストバンドを巻いた寡黙そうな女の子が立っている。
魔理は劣等クラスを差別するような奴じゃない、きっと彼女達は友達だろう。
「君は、真紀か」
「いきなり名前で呼ぶなんて大胆な人だね。宗次郎さんがそんな男は決まって自意識過剰だって」
「悪かったな、でも呼び方を変えるつもりは無い」
相変わらずだが、彼女は手術室を見ると途端に泣きそうな顔をして、リストバンドの女の子の手を握り締めている。
「彼女達も一緒に襲われた様なんだ。魔理ちゃんは、真紀ちゃんをかばったらしい」
「そうだったのか、なんでこんな事に」
「紫色の瞳をした男」
俺は目を見開いていた。
それは、まさに俺が探していた犯罪者だった。
「この男に襲われた。最悪な状況だったらしい、奇襲だったそうだ。女の子三人を狙うのに不意まで突くなんて」
「そいつは何処に逃げた」
「知らない。俺はこれからコイツを追う、お前は引き続いてみんなを1つにしてくれ」
「それはもうすました。これからオーダーはこの男を標的にして行動する!」
俺はそう言うと拳を強く、強く握りしめた。
*
「これで最後ですか?」
「そう、もう終わり・・・・・・少し勝手が違ったね」
燃えた建物の中で志雄とアイリスはのんきに雑談をしていた。
彼女達の足元にはおびただしい数の死体が転がっている。これらは、全員がギルドの構成員だ。罪の無い人間は無傷で逃がしたが、裏の社会に足を突っ込んだ連中は志雄とアイリスが壊滅させていた。
裏で例の新型魔具を探していた連中だ。宗次郎と正明が持ち帰ったデータで場所を割り出してアイリスと志雄が襲撃したのだ。正確には魔具の事を尋ねた瞬間に二人が殺されそうになったから返り討ちにしたと言った方が正確だろう。
戦闘の中で数人の幹部に話を聴いたが、魔具は実在していてそれを手に入れるために動いていたらしい。
問題は実現不可能な魔具はデモンストレーションが行われた様だ。
実際に紫の瞳をした男が魔力を抽出し、自分の身体に打ち込んで強力な魔法を湯水の如く放ったそうだ。それに食いついたギルドは多くあり、トップ10のギルドに情報が渡らないように要人や信用ならない奴を殺していたのだと言う。
既に複数のギルドがお互いの足を引っ張り合って壊滅している。
「さて、今回の騒動・・・・・・紫の瞳をした男が根幹ですね。そして、魔力を他人に譲渡する魔具を使った存在はその男1人だけ。何だか、胡散臭い話ですね」
「かなり、ね」
丸眼鏡の位置を治してアイリスはデバイスで手に入れた情報を仲間全員に送る。
志雄は頭の上に落ちて来た瓦礫をキャッチすると、崩れた出入り口に放り投げて帰り道を作る。そこでアイリスが小さな声で呟く。
「正明は、もう、真相を知っているかも」
ギルドも二人で殲滅可能な程の弱小ギルドだったことも彼女達には引っかかっていた。
上位ランキングに名を連ねるギルドは意外とクリーンな商売をしている事が多い。子会社を開いて表の世界にも進出している所もあるぐらいだ。
とは言っても害を及ぼしそうなギルドは一年前の戦いで、ブレイブと共に壊滅させたのだが。
弱小ギルドを煽るのは、あからさまに裏で何かをやらせたいとでも言わんばかりだ。
「とにかく、帰りましょう。はぁ、なんか疲れました」
「同感、良い薬あるけど」
「結構です、また虹色の変な薬でしょう?」
「塗り薬、なんていうか・・・・・・マッサージオイル見たく使う、疲労回復用の」
「それは気になりますね。それなら欲しいです」
「納豆の香り」
「オチをつける貴女が大好きです」
そんな事を言いながら建物を出た二人だが、目の前には武装を施したギルド構成員達が殺気立って銃を構えていた。
倒した構成員は護衛用であって本隊では無かったのだろう。
「そのオイルですが、他の香りは?」
「マスカットとか、あとはプリンなんて、変わり種も」
「それお願いします」
「おーけー」
志雄とアイリスは魔装を召喚して気だるげにそう呟いた。
怪しき影を猫が踏んづける
小さき力に牙を向くはとある過去の残像
紫煙を吹かす彼女の瞳が静かに輝く
怒りと疑惑の中で、彼は肩を叩かれた




