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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
新オーダー設立編
23/289

新装備と幼馴染みの憂鬱 4

中折れ帽子の男はウィンターソルジャーが元ネタです。

悪い奴のアクションシーンってヒーローよりも燃える。お待たせいたしました!

4


 いちごと魔理はベンチに座って少しの沈黙の後に話始めた。最初に話しかけたのは魔理だったが、その行為にいちごはびっくりしたような表情を一瞬だけした。優等クラスが友好的に接して来たことに驚いているのだろう。

 だが、いちごも肝がすわっているだけあり直ぐに薄く笑みを浮かべた。

 その隙に正明と真紀は魔理の腕を抜けて地面に降りた。


「あっ、帰るの?」

「にゃー」(サヨナラ)

「みゃー」(また来るよ)


 返事を返して正明と真紀は二人が見えなくなった所で猫化を解除して人間に戻る。


「どうしたの? こんなところに来て」

「お兄ちゃんの匂いがしたから」

「え? 僕そんなに匂いする?」

「私が猫になってればなんと無く解るよ? お兄ちゃんあまり猫にならないから能力の実感ないでしょ?」

「あー、なるほど。でも、目の力は僕の方が上だよ? 彼女は魔理とか、言ったね」


 正明は遠目で魔理をスキャンする。

 魔法使いとして文句なしの魔力量に加えて非常に質の良い魔力だ。体質にも恵まれている、優等クラスに席を置いているのだから勉強も人一倍出来る方なのだろう。だが、彼女の力はお世辞にも戦闘には使えないと言わざるを得ないと正明は感じていた。

 正明の左目、真紀の右目は対象の身体を本人以上に隅々まで見る事が出来る。身体の魔力の流れのパターンからその魔法使いの得手不得手も正明程の経験があれば理解できる。魔理の身体は転移魔法、強化魔法、回復魔法に向いているようだ、お節介を言うならば将来は医術の道に行って才能を開花させれば良い医者になるだろう。


「ふーん、十分に天才だね。そんな彼女が、恋の悩みか・・・・・・良いね、甘酸っぱくて」

「お兄ちゃんも、華音お姉ちゃんとはどうなの? 進展とかあった?」


 ニヤニヤと笑う真紀は正明のほっぺを摘まんでそう言うが、正明の顔は少し寂し気に伏せると一言だけ。


「さぁ、どうだろうね」


 とだけ言った。真紀はほっぺを離すと、「ごめんなさい」と謝った。兄と華音は複雑な関係だという事を思い出したのだ。

 正明は笑顔で真紀の頭を撫でると、ゲート開く。


「彼女の恋は真紀といちごちゃんに任せるよ。授業は?」

「劣等クラスも終わったよ? 昨日の夜に殺人事件が起きたから、早く帰るようにだって。お兄ちゃん達が原因だよ?」

「そうだったね。もし、中折れ帽子を被って紫色の瞳を持つ男を見たら・・・・・・どんな手を使っても逃げろ」


 正明は真紀にそう言うとゲートをくぐって何処へともなく消えて行った。

 残された真紀は兄が鋭い顔つきだったことからただ事ではないと心に留めた後に、いちごと魔理の前へと歩いて行った。

 魔理は少し驚いた表情をして。


「あなたは・・・・・・翔が、事件現場であなたを見たって」

「ん? 野次馬しに行ったんだよ。危険だよね、もうしないよ。あっ、私達は初対面だね! 私は伊達・・・・・・・・・・・・真紀って言うの」


 魔理は首を傾げて真紀が間を置いた理由を考えて、彼女の名前を復唱する。


「ダテマキ?」

「言わないで、結構気にしているの・・・・・・食べ物みたいだって、お姉ちゃんみたいなカッコイイ名前がよかった」

「あっ、いや! バカにした訳じゃないよ! ただ、少し間が開いたから気になっただけで!」


 魔理の言葉に真紀は直ぐに機嫌を直してニコッと笑い、右手を差し出す。


「ありがとう、よろしくね!」

「私は杉崎魔理。よろしくね、真紀。なんか、名前似てるね」

「そうだね!」


 その様子をいちごも見ていたが、彼女はいまだに真紀と正明の区別がついていない様で、右目や胸の膨らみやらを確認している。


「優等クラスの人にも優しい人はいるんだね」

「私も初めはビックリしたわよ、優等クラスの人がこの噴水庭園にいるから」


 自分たちの蒼いリボンを撫でながらいちごと真紀はそう言うが、魔理は関係ないと言わんばかりに


「魔法が強いか弱いかなんて関係ないよ。強力な力を持っていても、友達が自由に作れないなんて嫌だから!」


 そう紅いネクタイを撫でながらそう言った魔理は元気な表情でサムズアップをする。

 いちごと真紀は同じようにサムズアップで答える。

 真紀はその笑顔の後ろにある先程の彼女の悲しみや、悩みに寄り添いたいと感じ始めていた。お節介だし、余計なお世話だし、独善的だし、この気持ちも相手を思っているとは言えないのだろう。だが、それでも真紀は放ってはおけなかった。

 自分を善人の様に感じたい訳ではない、放って置けば何かが壊れる様な。

 危険な雰囲気を嗅ぎ取ったからだ。

 杉崎魔理は優しかった頃の、両親にいじめられていた頃の、無力で泣き虫だったが、魂に輝きと激情を秘めて眠っていた正明に何処かが似ているのだ。

 心の奥に、ドラゴンの様な怪物が眠っているタイプの人間。


「ねぇ、遊びに行こうよ! 劣等クラスも授業が無いから」

「え?」

「もっと魔理ちゃんを知りたいの」


 真紀は彼女の手を引いていた。



 真紀と別れて2時間後、正明は街角のとある事務所にいた。

 顔には仮面を被って、腰にはホルスターをつけた姿で、床に仰向けに倒れる中年の男を右足で踏みつけている。

 周り一帯は血まみれで、スーツ姿で武器となる魔具を握り締めたスーツの男女が息絶えていた。首を切り裂かれた者、強烈な衝撃によって内臓が破裂しておびただしい血を吐いて息絶えた者、中には焼け死んだような人間もいる。

 それらを見下す様に事務所の机に座っている加々美の姿があった。彼女は生き残った男を眺めている。


「本当の事を言えば許してやる。ここが仲介だと知っている、あの殺し屋どもの依頼主は誰だ? あと、(魔力を人間に譲渡する魔具)の事を知っていれば教えるんだ」


 中年の男は殺しや、汚い仕事の依頼を仲介する仕事をしていた男だ。かなりのやり手であり、関係の無い一般人までも隠蔽やアリバイ工作などに必要なら殺している様な奴だった。

 死んだ人間達も黒い噂しか聴かないメンツだった。

 正明は小瓶を右手に浮かせて男にチラつかせる。


「な、なんなんだよ! その魔具は! 何種類も魔法を撃ちやがった、それに俺の魔力を吸い取ったのか⁉ ふざけんな、ありかよ! そんなのありかよ! 中身、それは魔力じゃねぇか!」

「ほう? 見ただけで魔力と解るか? 魔力は光の粒子、術式を通り抜ける時も同じく光のようにみえる。液体にもなれるって知っているのは、一部の奴らだけ」


 男は口を慌てて塞ぐが、もう遅い。

 正明は小瓶の蓋を取る。


「ありがとう、嘘じゃないな。どうやら、魔力は液体にされている様だな。そして、お前は知っているか? 他人の魔力を身体に入れられた人間は、拒否反応を示して死ぬ」

「わかった! わかったよ! 紫色の瞳をした男がそうなんだ! (魔力を他人に譲渡する魔具)の流通元はそいつなんだ! その男がどうやってその魔具を作ったかなんてわからない、でもその男を捕まえれば生成方法を掴めるって」

「興味深いな。なんでお前が、そんな事まで知っているんだろうな?」

「えっ、そ、それは仲介したから」

「仕事の理由を仲介に話すかよ。お前達、この件には仲介としての仕事はしてないな?」


 正明は少し考えると、男の執務机に衝撃波を撃ち込んで中に入っていた書類を外に出すと自分の目の前まで引き寄せて左目でスキャンしてその情報をデバイスに映して、遠くにいるアイリスに送る。

 そして、男の顔を恐ろしい仮面で覗き込む。


「お前らのボスは・・・・・・ギルドか?」

「そ、そんな訳!」


 正明は無言で小瓶の魔力を男の顔に垂らした。

 男は必死に身体の中に魔力が入らないようにしている。正明は小瓶を軽く振るとさらに魔力をかけようとする。


「そうだ! ギルドだ! ギルドが俺達の元締めだ! そこから命令された! 殺し屋を仲介した体で紫色の瞳をした男をさらえって!」

「そうか、わかった。確実な証拠はここにはないな? 事務所に置くわけない。隠し部屋も何も無いのは観ればわかる」


 正明はそれだけ言うと、震えたデバイスを開く。


「俺だ、そうか・・・・・・見つけたか術式を奪え。あぁ、心臓だ顔は傷つけるな」

「な、何の話だ!」

「お前が隠したギルドの依頼書、その術式を見つけた。お前も外道だな、奥さんに持たせるなんて」


 その言葉に男は顔面を真っ青にして必死に動こうとするが、正明に魔力を吸いつくされた上で更に魔法で封じ込められている。動こうとするたびに正明の右足から力が分散していくように彼はガクガクと腕を持ち上げようとしては床に伏せるの繰り返しだ。


「妻は一般人だ! 貴様、犯罪者しか殺さないんじゃないのか! 恥を知れ、結局はお前達は人殺しだ! 汚らわしい化け物め!」

「人殺しに綺麗も汚いもあるか。それに、お前の妻は人間を1人殺しているだろ?」

「何のことだ! 彼女は誰も殺してない!」

「遊びで出来た子を殺したろ?」

「アレはおろしただけだ! 何の罪がある!」

「1人は堕ろし、もう1人は秘密裏に安楽死させている。彼女が10代の頃の記録だ。当時から金持ちのお前は気にかけていたんだな」


 正明は仮面の上から顔を抑えて含み笑いをする。その姿は死を宣告しに来た絶望の様に冷たく不気味な声だった。


「中には抜き差しならないのもあるだろうな。金が無いとか、陵辱されたとか色々あるよな。陵辱されたなら仕方ない、責めるが、殺すことは無いだろう。でもな、アイツは遊びだろ? 金が無いなら今の時代、代わりに育てたいと言う人間は五万といる。だが、邪魔って理由で二人殺した」

「彼女に罪は無い!」

「知るか、奴はお前と一緒に、身勝手に子供を殺した・・・・・・理由はそれだけで十分だ」


 正明はそう言うと、デバイスに言い放つ。


「女を殺せ」

「止めろ!」


 デバイスから悲鳴と何かが貫かれる音、そして重たいものが床に倒れ込む鈍い音が聞こえる。

 

(完了した。心臓を射抜いた、一瞬も苦しんでいない。彼女は即死だ)

「人間としての尊厳は与えてやろう。防腐の魔法をかけてやれ、せめて遺族の葬儀までには腐らない様にな」


 正明はデバイスの先にいる宗次郎にそう言うと通信を切る。

 男は涙を流し、鬼の様な形相で正明を睨み付けていた。


「イカれた野郎め! 畜生が! 殺してやる! 彼女は真面目に生きるって!」

「お前の人生に組み込まれた時点で、真面目でも潔白でもない。世迷言を言うな、子供を殺した事実は消えない」


 正明は冷たくそう言うと手元にショットガンの様な魔具を召喚する。


「くそぉ! 畜生! 死ね、くたばれ! 死神の飼い猫ぉ!」

「まだ夜は明けないよ」


 正明は男が何かを言う前に顔面を狙い、引き金を引く。

 ゴドン! と大きな音がして男は動かなくなった。


「悪党に顔は要らない」


 正明は右足を離すと、銃を捨てる。銃は光の粒子となって消えた。

 加々美は机から降りると、事務所の書類を術式に変換してデバイスに映した。速い話、コピーしていたのだ。


「さて、どうする? ギルドだってさ」

「はぁ、使い捨ての雑魚が死んだ所ギルドは動かないだろうが、今度は直接叩きに行くだろうな」

「で? 狙いは何なの?」

「紫色の瞳をした男。奴を俺達も追わないといけない、お前達からは見えなかった様だが、アイツの紫の瞳は人外化施術の可能性が高い。俺も迷ったし考えたけどアイツの瞳は人間の物じゃない。現時点ではアイツしか見ていないが、何人もいるかもしれない。魔具もそうだが、人外化施術の存在がバレる方が遥かに最悪だ」


 正明はそう言うと霧の中へと消えて行く。加々美もその後ろに付いて行くが、彼女は内心穏やかではなかった。

 昼食の後にいきなり招集されたのだ。

 八雲と宗次郎は動いていたようだが、正明は思ったよりも冷静だった事が不気味だった。

 正明は確信が無いと思っている事をあまりに口にしないのだ。



「美樹、この中折れ帽子の男なんだが」

「あぁ、昨晩の事件で目撃された男ね」

「それなんだが、誘拐事件の資料の中にもこの男がいるぞ?」

「なんですって?」

「ほら、紫色の瞳をした男って」

「違うじゃない、もっとしっかり見なさいよ」

「いや、この男と中折れ帽子の男の特徴が似ているんだよ。身長とか、性別、それに紫色の瞳をした男の腰には中折れ帽子が付けられていたって」

「そうね・・・・・・でも、私達の学区じゃないわね」

「あぁ、だがその地域のこの学園で言う優等クラスの人間が狙われている」

「そうね、敵が多いのね」

「追ってみる価値はある。もし、この二人が同一人物なら・・・・・・この学区内に来ているかもしれない」

歯車が重々しい音を響かせながら時を動かす。

眼前に見えるのは過去の遺恨

汚れて見えるはあの瞳か、それか? どれなのか?

紅い瞳がワルキューレを駆る

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