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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
新オーダー設立編
21/289

新装備と幼馴染みの憂鬱 2

続きです。少しでもお楽しみ頂けたら幸いでございます!

猫になりたいね!(迫真)

2


 隊長室に戻った俺は美樹の姿に思わず言葉を失った。

 赤い装甲が手足に装着され、背中には翼にも見えるブースターユニットが取り付けられている。腕と脚の装甲は様々な武装を内包しているのか普通のパワードスーツよりも多く設計されており、彼女の傍らには巨大なライフルのような銃が浮かび上がっている。

 頭部には龍の角をモチーフにしたんだろうな、アンテナが側頭部に存在しているのがワンポイントだ。

 それにしても、そのハイレグはどうにかならなかったのか?

 美樹は顔を赤くして自分のへそから下と胸を隠して俺を睨み付けている。水着の様ではあるが、ディテールからそれが普通の水着ではなく装備の一つと見てとれる。それでも装甲の無い脚の付け根部分や、肩にはどうしても目が行ってしまう。

 

「どうです? 最初の試着では私の下着が巻き込まれてなんか変になってしまったのですが、全裸ならこうもぴったりに!」

「恥ずかしいのよ! 何よこのエロ装備!」

「しかし、攻撃や機動力を上げるならこれが一番なんです。男性用の開発も師匠が考えてましたけど、キモいし女の子かなーこの装備はとか言ってましたね」

「でも、こんな・・・・・・し、翔太郎。これ、どう?」

「正式採用だ。パワードスーツを一から作るよりもコストパフォーマンスも良いだろう?」

「コラぁ! 絶対別の目的でしょ!」

「俺は真面目だ。別に、意外と着痩せするんだなーとかは思ってないぞ?」


 その言葉に美樹はライフルを手に取ると俺へと向ける。


「ふ、ふふ、なら攻撃のテストもしないとね? 隊長?」

「あー、そう来る?」


 俺は顔にヘルメットを装着しながらさりげなく移動して、隊長室の窓から急いで飛び出す。その背後から高濃度に圧縮された魔力弾が俺の身体をかすめて言った。

 マジか! 拳銃なんてオモチャに見えるレベルだぞ!


「待てぇ! スケベ野郎!」

「おいおい! 威力半端ないって!」


 学園の運動場の上空で俺は飛び回りながら決闘用のフィールドを開く。

 この範囲なら自由に訓練出来るだろう。


「これ、結構良いわね。身体の重さも装備の重さもほとんど感じないし、ライフルも威力を調整出来て、パワーMAXなら立派な兵器ね」

「それを射つな!」


 俺はそう言うが、楽しくなったのかさっきの羞恥心もなく美樹は楽しそうに飛び回り、俺を追撃してくる。

 立派な機動力だ。しかし、正直俺の魔力量なら簡単に機動力もスピードも追い越してしまいそうだ。ここは、大人になって互角より下のスピードに抑えて付き合ってやるか。

 その時だった。運動場の外から俺を見上げる人影があった。


「魔理?」


 心配そうな顔で俺を見ている。後ろから銃撃がある度に肩を振るわせているな。

 仕方ない、安心させてやるか。


「美樹! 待て、少し」

「問答無用! ってあれ?」


 ん? なんだ? いきなり失速したぞ?


「これって、魔力切れ!? きゃあ!」

「美樹!」


 魔力切れで落下を始めた美樹へと俺は急旋回して抱き止める。計らずもお姫様抱っこをしてしまったが、そのまま魔理の前に着地する。


「魔力の量がまだ実戦向きじゃないな。機動力と攻撃で優れてても魔力切れで自爆だ」

「自分で着地ぐらい出来たわよ!」


 俺は「はいはい」と言うと彼女を降ろして魔理へと顔を向ける。そこにはもの悲し気な顔をしてスカートの裾を握っている姿があった。


「どうした? 大丈夫、さっきのは新装備の試運転だから喧嘩じゃないぞ?」

「あ、うん・・・・・・ごめんね? 勘違いしちゃって」

「魔理は、午後の時間は何してた? 珍しいな、運動場にいるなんて」

「なんでも、ない。ごめん、もう行くね」


 そう言うと、魔理は走り去ってしまった。

 どうしたんだ? なんで、泣きそうな顔してんだよ。



 伊達正明は劣等クラスの寂れた噴水庭園で呆然としていた。

 人外化施術を匂わせる身体能力を持った男、見抜かれていた即死魔法、振り出しに戻った技術流通の犯人。

 技術は昔からある物だが、正明達が追っている連中の技術は更に最悪だ。

 魔力の移植。

 通常ならそれは不可能だ。魔力を他人の身体に入れる事はそれ事態が攻撃で、術式に流し込むならまだ解るが、生身の身体はそうはいかない。拒否反応を起こして死ぬだろう。

 しかし、それが出来ると言うのだ。

 仮にそれが可能ならば人間に魔力量での先天性の差は、消えて無くなるだろう。それは差別の終わりではなく、弱者から強者への攻撃へと発展するのは目に見えている。

 そうなれば犯罪は激化、ギルドの独占市場は更にその影響力を広げる結果となる。

 そうなれば御仕舞いだ。市場はギルドが支配し、虐げられた歴史を理由に力無い人々が罪の無い人々を殺すだろう。そうなると、正明も大量殺戮を行う覚悟とその人々に殺される覚悟を決めなければならない。


「嘘だよね? そんな事、出来るわけない。でも、ギルドが絡むと話が違う、何処だ? トップ10じゃないのは確かだ。でもその下のギルドにその力は無いよ」


 独り言を呟く彼だが、誰かが来る気配を感じて慌てて猫に姿を変えるとベンチに丸まる。

 やって来たのは優等クラスの生徒だった。

 ショートカットに目がパッチリと大きな女の子だ。確か、翔太郎の幼馴染みだったと正明は考える。

 彼女は猫になった正明の隣に腰かけた。


「ん?」


 正明の存在に気付いた彼女は少し落ち込み気味な顔を少し明るくして、手を伸ばしてきた。


「猫ちゃん、何処から来たの? 子猫だね、お母さんは?」

「みゃー」(お母さんいないよ)


 正明は大人しく撫でられていると、逃げないと思ったのか彼女が抱き上げて来た。


「毛並みが凄く綺麗。飼い猫だね、よしよし逃げないね?」

「みにゃー」(眠くなるでしょうが)

「あぁ・・・・・・癒されるなぁ。可愛い」


 膝の上にのせられ頭や背中をマッサージするように撫でられた正明は大きな欠伸をして眠気と戦っていた。


「なんでだろう? いつも一緒だったのに」

「みゃ?」(は?)

「私ね、昔から好きな人がいてね。彼は少し面倒臭がりだけど、根は正義感が強くて、誰よりも優しい人なんだけど」

「うなぁー」(誰かわかったー)

「今は少し遠くにいる気がして、怖いの。昔から一緒にいる私より少しの時間でも一緒に戦える人が良いのかなって、あはは・・・・・・嫉妬してるのかなぁ」

「みー」(大変)


 適当に相づちを打っていたが、正明は自分の頭に水滴が落ちてきている事に気付くと顔を彼女へと向ける。

 そこには大粒の涙を流す一人の女の子がいた。


「嫌だなぁ、こんなの・・・・・・嫌だよ」

「なぁーお?」(そうだよな)


 正明には彼女が抱いている感情が何となくだが解ってしまった。力に恵まれずに生まれた彼は他人の感情を表情や仕草を見て大体を当ててしまう事が出来る。そうでもしなければ生きて行けなかったのだ。

 彼女は自分の恋心がよく知らない人間への嫉妬で醜く歪んで行くのを感じているのだろう。大切な真心が自分の欲望で汚なくなっていき、それを止められない事が恐ろしい。

 そして、それは好きな人が完全に自分から離れれば汚れた欲望へと変わる事を彼女は無意識のうちに察している。


(可哀想に、その気持ちに寄り添うことも助けることも出来ないけど、話は猫として聴いてあげよう)


 心の中で正明がそう呟いた時に、もう一匹の白い子猫が彼女の足元に現れた。


「みー、みー」

「え? もう一匹? ふふ、この黒い子にそっくり。この子は左目が蒼いけど、この白い子は右目だね」

「みー、みー」


 彼女の足元で鳴く白い子猫も抱き上げられ、正明の隣に置かれる。正明はこの白い子猫の招待は言われなくてもわかっている。

 妹の真紀だ。


「可愛い、ちょっと寂しかったの、もう少し抱っこさせてね?」

「みゃー」

「にゃーぁ」


 正明は隣の真紀へ視線を移すと、真紀は正明の顔に頭を擦り付けてくる。


「甘えてるの? 兄弟なのかな?」


 癒されてはいるようたがやはり不安や悲しみは強いのだろう。彼女は再び泣き始めた。抱き締める力が少し強くなるのを感じて正明は彼女の手を軽く舐める。せめてもの「元気を出して」の意思表示だった。

 泣きじゃくる彼女に抱えられていると、もう一人の人影が庭園へ入ってくる。

 その人影は真紀と正明の友人の野崎いちごと言う少女だった。

不穏な気配と少女の恋

重く深く苦い絶望と甘く何処か舌を痺れさせる酸っぱい恋心

人の思いが何かの形を作り出す

その事を理解するは、同じく甘酸っぱい名前の彼女

答えは出せずとも、出会いに無意味などない

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