プロローグ
第二章スタートです!
暇なら読んで見てください!
*
夜の空気を肺に吸い込んだ伊達正明はビルの屋上に腰掛けて街を眺めていた。
サファイアブルーに輝く左目、小柄で細身の体形に前髪には一房だけ蒼いメッシュが入り、顔つきはその名前には似合わずに少女のものだが、何処となく黒猫のような可愛らしさと、少しの鋭い威厳を内包した顔つきをしている。
夜は嫌な空気だと彼はいつも思う。都会の空気は淀んでいる、魔法は環境を汚さないから海は美しく澄んでいるし空気が汚れている訳ではない。だが、それでも正明には空気が淀んでいるように感じてならない。
それを彼は人間の欲望だと感じていた。
下衆な欲望が空気に溶け込んでいるのだろうか? それは解らないが、この街の空気は人の心に荒んだものを運び込んでくる。
それを感じながら彼はビルの下で何か起きている事に気付くとビルから飛び降りた。
風を切りながら仮面を顔に装着し魔法陣を両手に展開して減速しビルの正面入口前に蒼い魔力の粒子を撒き散らしながら着地する。その姿はまるで突如召喚された魔物の様に映った。
「計算通り」
彼がそう言う先にはマスクを装着した連中が10人、銃を持ってビルの中へと突入する直前の様子で立っていた。空から現れた彼を手前の2人が撃ち殺そうと構えると、引き金を引くよりも早く彼らの頭を光の矢が貫いた。
それを同時に正明は足元に霧を発生させると、そこから撃ちだされる様に鬼の仮面を着けて黒い軍服のコートを来た志雄が飛び出して来て正明に魔法を放とうとしていた男の胸にエネルギーの収束された右の拳を叩き付ける。すると、志雄と正明を除いた全てのモノが半径10mの範囲で浮き上がった。
「第三船長」
「おkってね!」
正明の背後から狼を模した仮面を着けた加々美がアクロバティックに彼の身体を飛び越えながら透明化を解除しながら現れた。
彼女は掌にクナイを召喚すると浮かび上がる男達の首へとめがけて投げ付ける。
だが、2人しか仕留められずに残りの五人は魔法防壁で攻撃を防ぎながら火炎魔法を正明達へと放ってくる。それを推進力に無重力から抜け出したのだ。連中は銃ではなく、魔法での勝負に持って行かないと勝てないと踏んだのだろうが、正明は連中の背後にゲートを開く。
その中から大鎌を持ったうさ耳パーカーのアイリスが躍り出るとそれを真っ先に逃げていた男に突き刺すと素早く腰の試験管と鎌に取り付けてあるユニットに差し込む。すると、鎌の刃が怪しい緑色に輝いて刺された男は少し苦しむと灰の様になって身体が崩れ落ちた。
「くっ! 化け物が!」
生き残った男達は焦っているが、重力の束縛から逃れると切り返すようにゲートからガトリングガンの様な魔具を召喚して正明達を射撃する。
どうやら弾丸が爆発魔法の集合体の様だ。一撃でも人間は木っ端微塵だろう。
だが、それらの弾丸は正明達の前に入って来た八雲の張る防御魔法に全て防がれてしまう。分厚い上に八雲の固有能力である魔法の不完全化で威力も術式のクオリティーも半減されているのだ。
正明はそのガトリングガンの弾丸を分解して魔力にしてしまうと自分の身体の周りに浮かせる。
「マジか! クソ! 対魔導重機用の兵器だぞ⁉ なんで防がれるんだよ!」
「あっぶね、うちの壁役がいないと死んでたよ」
男の声に加々美がボソッとそう言うと人差し指を何かを引き上げるように動かすと、連中の近くにある地面から鎖が飛び出してガトリングガンのを絡めとると近くにいたアイリスがその隙に銃に火球を撃ちだして破壊してしまう。
アイリスはそのまま転がるようにして正明の方へと下がる。志雄は重力の力場を消すと拳を合わせて力をチャージし始める。
その動作に男達は慌てて魔法と銃を志雄へと向けるが、あっという間にタワーシールドと槍を構えた兵士たちに囲まれて身動きが取れなくなってしまった。
「さて、お話聞こうかな?」
兵士たちの後ろから姿を現した狐面の京子がそう言うと男達は銃から手離さないが、抵抗はしなくなった。
「ただの強盗じゃないのは解っている。お前達は誰に仕えている? 吐けば逃がしてやる」
正明はそれだけ言うと、男達に魔法陣を向ける。
仲間達は周りを警戒しているが、その話に興味があるのだろう。
周りの人々はその戦いの様子をデバイスで撮影していたり、通信魔法で警察を呼んでいたりなど様々だが質問程度なら出来る。
「俺達が何か? 唯の強盗だ! それがなんだよ!」
「ホテルに強盗か? 銀行を襲え。相手は誰だ? 対魔導重機用兵器を持って来る程の相手がここに居るって事だろ?」
「そこまで当ててんなら、解ってんじゃないのか⁉」
「探ってたのは敵対している連中だ。そしたらお前達が雇われて、このホテルに向かっていたそこを抑えたんだが・・・・・・実は狙っているのは物だと思ってたんだ」
「は?」
正明は頭を掻いて困った仕草を取る。
実は正明達が追っていたのは「魔力を他人に譲渡出来る魔具」を流通させている連中。そいつらが犯罪者に魔具を撃ったことで殺人が起きて、その裏に兄弟達の影を見たからだ。
正明はこの男達がブツを売りに来た連中と勘違いしたのだ。
こいつらは取引をするのには仰々しい上に、強力な兵器まで持ってきていた。それに、男達は一人一人が殺し屋と呼んでも差し支えない判断力を持っている。
確実に誰かを殺しに来ていた。
「だから、お前達は売人だろ? でも、殺し屋でもある」
「あぁ」
「今回は、運びじゃなくて? 殺し?」
「完全にお前らの所為で失敗だぜ、クソッたれ!」
「わかった、ごめんな? で、誰を殺そうとしていたんだ?」
その時だった、話していた男が正明の視界から消えた。その代りに中折れ帽を深く被った男が現れた。
男は中折れ帽子に踏み潰された様だ、首の骨が折れている所を見るともう助からないだろう。
「死神の飼い猫・・・・・・スペクターズ」
低い、くぐもった声で男はそれだけ言うと上着の袖から大口径の拳銃を引き抜くと、残っていた男達諸共京子の使い魔を全滅させた。
死に際に男の一人が、「ターゲットだ」と言ったからこの男がそれだろう。
「お前らも死ね」
「お前もな!」
男は正明の顔面へと強烈な魔力弾を放つが、正明は仮面の左半分を吹き飛ばされながらカウンター気味に左腕を男へと突き出す。すると、男は銃を盾にした。即死魔法によって拳銃が死んだことで崩れ去って行く。
正明は左目の恐怖心を与える固有能力を相手にぶつけるが、男は焦る様子も怯えもしないで体制を変えると正明の腹部に掌底を撃ち込んでくる。
正明は防御魔法でダメージをなくすが派手に吹き飛ばされてしまう。が、空中で彼は両手から鎖を伸ばして男の身体を縛りつけると身体ごとぶつかり、銃を召喚して玉切れになるまで顔面へと魔力弾を放つ。
「はぁ、はぁ・・・・・・体中が痛い」
動かなくなった男から離れて正明は拳銃を投げ捨てる。
だが、直後に隣にいた志雄と男が拳をぶつけ合う音が響く。正明は振り返って魔法陣を身体の周りに展開して構えるが、直後に志雄が投げ飛ばされて彼は彼女の身体の下敷きにされた。
「ぐえっ!」
「すみません! あの男、凄い力です!」
正明は志雄の身体を踏み台にして迫って来る男の心臓付近に電気で生成したボールを投げつけ、その隙を付いて加々美が奴の首にクナイを突き刺して、アイリスが毒に満ちた鎌で切り付け、京子も薙刀で袈裟斬りにするが男は倒れる気配も無い。
タフすぎる。
男が大剣を召喚して振りかざすが、八雲がその一撃を正面から斧で受け止めるが膝を付いてやっと耐えたと言った感じだ。
「貴様等には、借りがある・・・・・・からな!」
その言葉を正明が聴いた時にサイレンの音が近づいて来る。
「ちっ、また会おう」
男はそう言うとゲートの中に姿を消した。
正明達も急いで霧の中に退却した。
警察とオーダーが到着した時には10人の男達の死体が転がるだけだった。
勇者は目覚めた
それと同時に悪意が目覚めた
弱者が歩む世界が少しずつ溶かされていく
そして、鎧は消え去った




