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エピローグ

兄弟達編は終了。

主人公が言ったほどチートではないですけどもうね、某格闘漫画の主人公の親父レベルで成長するのでご安心を、次章ではほぼチートになってます。


「よぉ、兄弟」

「やぁ、兄弟」


 魔力強奪犯は薄い笑いを浮かべて神井巧を見ていた。彼の身体に一切の拘束は無い、武器は取り上げられているが魔法の使用は全く制限を受けていなかった。

 彼の周りには正明をはじめとして、他のメンバーも真紀と八雲を除いて集まっていた。その時に船の甲板に霧が発生し、そこから八雲が大の字で落ちて来たので、これでほぼ全員だ。

 しかし、肝の座った奴だと正明は感心する。

 もしかしたらこの状況でも全員に勝てる事が出来ると踏んでいるのだろうか? 正明はそう考えると注意深く彼を観察する。


「お前の親父は何だ?」


 巧が前置きも無くそう言うと、魔力強奪犯は一層笑みを深くした。


「逆に聴くけどよ? お前、知ってるだろ? 俺のスキルを見て、ピンとこねぇはずがねぇ」

「チッ、クソ野郎。お前も同じようだな、何人いるんだ? オレ達のような連中」

「さぁな? ただ、あの三神? 翔太郎って言ったガキだが、あれは特別だな。警告しておいてやるよ、早く始末しろ。アイツが俺やお前みたいに精神汚染に飲まれたら、誰にも手が付けられねぇ・・・・・・兄弟達は抹殺される。次はアイツになっちまうぞ」

「その前に策を考えている。死ぬのはお前とオレの父親だけだ」


 含み笑いをした魔力強奪犯は巧を指差す。


「本当に兄弟なのにな。皮肉なものだ、あの色恋親父め」

「そうだな、母親は殺したようだな」

「あぁ、とんだ屑だった。男に寄りかからないと生きてられないカスだったから殺した」

「オレは殺されたぜ、親父にな。騙されたと悟ってオレを逃がしてくれたんだろうな? だからオレはお前の様に壊れてはいない。もう用済みだな、兄弟」

「ふん、それよりもお前だ! 飼い猫! お前は一体なんだ⁉ 俺達の血族じゃない癖に瞳を輝かせる事が出来るなんて、俺は知らねぇ!」


 正明はその言葉に左目を光らせる。


「僕はお前達と近い。でも、遠い存在の血族だ。でも不思議な事に俺の血族は1つの時代に1人ずつしか存在してない。僕・・・・・・俺はお前たちの天敵だ」

「は! そうかな? もう1人いただろ? お前と同じ顔の」

「俺達は2人で1人。でも、いずれ夜は明ける」

「何を言っているんだ? お前」

「3~4年で1人になるってことだよ。まぁ、お前には関係ない」


 正明は両手を後ろに回す。


「解らねぇが、兄弟達が動き始めたのは確かだ。ここで死ぬ奴らは間抜けだ、お前らの様に!」


 魔力強奪犯はポケットに手を突っ込んだ状態で糸と言うよりはロープをメンバー全員の身体を縛り上げる。そこからポンプで水を吸い上げるようにしてみんなの魔力が奪われていく。

 そして魔力強奪犯は直ぐさま上位魔法を組み上げると生み出した魔力の弾丸を正明へと撃ち放つ。

 隠し玉を持っていた訳だが、それを想定していないWELT・SO・HEILENではない。


「甘いですね」

「は?」


 魔力強奪犯の真横に志雄が現れ、奴の顔面を殴りつける。

 それでも冷静に魔法を精製する魔力強奪犯だが、直ぐに彼は床に這いつくばった。志雄の固有能力である重力操作が効いたのだろう。

 正明に飛んでいた上位魔法は八雲が完璧に防いでいた。


「なんだって⁉ どういう事だ⁉ 2人いるのか? なぜ!」

「私の使い魔のハンゾーなのだー、うへぇ・・・・・・だるい」


 魔力を吸い取られて京子はその場でぐったりとしているが、ハンゾーの術式を解くと縛られている志雄と八雲は葉っぱに変わって消滅する。


「バレると思ったけど、強化魔法をガン掛けして、正解」


 アイリスもそう言うと、そのまま寝てしまう。


「ここは俺達の本拠地だ。そもそも、俺と同じ事が出来るお前をなんの策も無しに取り囲む訳ないだろ」


 正明は残酷な瞳を這いつくばる魔力強奪犯に向ける。

 巧は正明に魔力を分けてもらって回復している。宗次郎と加々美もそのまま大の字で寝ているが、正明は全員を魔力を与えて蘇生する。

 そして、正明は魔法を掌に出現させるとアイリスも同じように展開していた魔法陣と重ねる。

 重複魔法による火炎魔法の強化だ。


「志雄~、よろしく」

「熱いので嫌です」

「もう撃った」


 志雄と魔力強奪犯に放たれた蒼い火球は志雄の右腕に掴まれると彼女は押しつぶす様に魔力強奪犯を殴りつけてド派手な爆発が起きた。

 彼女の魔力と正明とアイリスの魔力が合わせられた重い一撃だ。防御魔法なんて紙切れの様に役にも立たない威力だろう。

 動けなくなった魔力強奪犯に正明はゆっくりと歩み寄る。

 小瓶を掌に浮かせると彼の奪った魔力や、仲間達の魔力を吸い取って行く。


「さようなら、魔力強奪犯」


 正明は彼が何かを言う前に顔面を鷲掴みにする。

 その瞬間に彼の命は、魂ごと粉々に砕かれた。


「さて、そろそろ餌にかかった豚が来るかな?」


 数時間後・・・


「僕は彼女になる! これまでどれだけ手を汚したと思っている! 僕も座るんだ! あの円卓に!」


 北条の父親はそう叫びながらトレライ・ズ・ヒカイントを出るため、とある大きな橋を車で渡っていた。その周りには装甲車とも呼べるような車を護衛にして連れているが、それの中身はギルドに売り捌く為の兵器の数々だ。

 裏の流通を支配しているギルドの中でも上位で5番目の序列になるWELT・SO・HEILENとの取引が成功すれば再び富を築き上げる事も、裏とのつながりを持てば晴れて彼女とも対等だ。彼は内心はうきうき気分だった。

 鼻歌でも歌おうとした時に前方の車が突然停車した。

 その後はアッと言う間だった。

 装甲車は次々と粉々に破壊され、中には空き缶の様にぐしゃと潰れる物もあり、光の矢に運転席を撃ち抜かれたものもある。凄まじい力を持つ魔法使い集団の襲撃だ。

 まるで打ち合わせでもされていたかのように彼を守る者は全滅した。


「な、何事だ⁉」

「何処に逃げようって言うのかな?」


 ガシャン! と彼が乗っている車のボンネットに誰かが着地した。それと同時に運転手は襲撃者に拳銃で撃ち殺された。

 その後に車の天井は何か、強い力で剥がされる。

 そして彼の視界に飛び込んで来たのは月を背に立つ1人の少女だった。

 大きな目だが、少し鋭い。前髪を一房だけ蒼いメッシュにして、全体的に細身で肌は色白でまるで滑らかなボーンチャイナの様だ。それだけでも十分すぎるほどに美しい少女だったが一番彼が目を引いたのはその左目だった。

 海よりも深く、空よりも遠くにあるかのように蒼い瞳。


「あ、あぁ・・・・・・それが、君の素顔!」


 彼は身体の奥が熱くなるのを感じだ。

 それは強烈な独占欲と色情、そして強すぎる憧れだった。


「言ったよね? 貴方は座れないって」

「あああー‼ 私だけの君!」


 彼は我慢できなかったのだろう、弾かれる様に立ち上がって死神の飼い猫を抱擁しようと両腕を広げる。が、途端に身体が動かなくなった。

 縛られている訳ではない。


「オレのスキルを下らないものに使わせんなよ、おっさん」


 彼女の傍らに立つのはあの男の様に赤い瞳をした、ハットをかぶった女だった。手には電子タバコと言われる妙な形の魔具を持っている。


「夜に逝きたいって言ってたな、連れて行ってやるよ。妄想でもしてろ、たった独りでずーっとな」


 死神の飼い猫はそれだけ言うと、彼の手を払った。

 それだけで、彼は凍った時間の中であっけなく・・・・・・死んだ。



 魔力強奪犯の行方は掴めないまま数週間が過ぎた。俺の方はと言うと、奴の取り逃がしで由希子からは大目玉を喰らって、それから行方を捜索するために竜王の剣部隊の捜索活動に強制的に参加させられたりとかでここ数週間は休む暇がなかった。

 だが、最悪な事ばかりでもない。

 アレから俺のスキルには発作が起きていない。少しイライラした程度で暴走していて、感情の高鳴りだけでも精神安定剤が必要だった俺とはまるで別人の様だ。

 あと、美樹が帰って来た。家が無くなって、父親が蒸発したようで俺の家にそのまま転がり込んで来やがった。俺が自由に出来る空間は減るわ、毎日開かれる勉強会は退屈だし、魔理ともつまらない事で張り合ったりてな。でも、彼女は以前よりもスッキリした顔をいる。

 俺の暴走するだけの力でも、女の子を1人でも笑顔に出来たのは事実だ。

 正義の味方とか、白馬の王子様みたいな綺麗なエンディングには出来なかったが、思ったほど悪くない。


「翔太郎! この書類穴だらけじゃない! しっかりしなさいよ!」

「まだチェックしてねぇよ! お前は慣れてるかもしれないけどよ、俺はまだ勝手が解らねぇよ!」


 そして、俺は本格的にオーダー隊長の地位に付く事になった。

 美樹は俺がトップにいた方が隊員達はまとまるって言っていたが、そんな事は無いと思う。変わった事と言えば女性隊員が増えたことぐらいだ。

 俺は美樹に指摘された書類を確認していると、放送が隊長室に入る。

 

(オーダー、学区内での乱闘騒ぎあり。現場の情報を送信した、現場に急行されたし)


 通信魔法を発動して俺は送られて来た情報を見ると、書類をおいて両腕に手甲と身体にパワードスーツをまとう。


「はぁ、向かうの?」

「息抜きさ、美樹は?」

「行くわよ、私がいないと始まらないでしょ?」


 俺は隊長室の扉を開くと、優秀な副隊長と共に駆けだした。

人間は矮小だと男は呟いた

そうじゃないと一人の男は拳を握った

もう一人の女は、「そうだな」と言った

男は独りでも強かった、女は独りでは頼りなかった

だが、最後に女は言った「だから、みんなで戦うのさ」

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