エピローグ
計画有りき
*
正明は夜のビルで殺人犯を二、三人程始末してから血まみれの部屋にある窓から街の光を見ていた。何か思うことがある訳でもないが、猫耳パーカーに仕込んでいた集音魔法で複数人の人間が自分を取り囲んでいる事に気が付いたのだ。
と言っても恐れる必要はない。
戦闘能力はエリートクラスではあるが、此処からは丸見えでありはるか後方にいる宗次郎に指令を送っている。合図一つで連中は死ぬだろう。だが、油断している訳ではない正明は腰の小瓶にカウンターの魔法を発動させて待ち構えている。
その心配と警戒は杞憂で終わる。
「死神の飼い猫ですね? 始めまして、政府直属部隊であるケンプファーと言います」
転移魔法で突如として現れた複数人の機械的なフルフェイスのヘルメットをした男達が正明を取り囲む。だが、その手には最低限度の武装しか持っていない。有事の際には牽制しながら逃げる為の武器だろう。
話しかけて来た男の声には感情は無いが、薬と魔法で恐怖をかみ殺しているのだろう。正明は仕草や声色のわずかなブレでそれを推測すると魔法陣を仕舞う。
「何? 僕はそろそろ帰ってお風呂入りたいんだけど?」
威圧感の無い女の子の声で正明はそう言うと来ているシャツをパタパタと仰ぐが、彼は汗でなく血で濡れている。
「総理からの伝言です。死神の飼い猫、貴女を再度セフィラの一人とする事を此処に提示する。セフィラとなった暁には貴女の殺しを合法として扱い、有事の際には軍事力としての力添えを望むとの事です」
「お寿司食べ放題も付けてくれないとヤダ、僕は猫だからね。サーモンが好き、それだけお腹いっぱい食べたらドン引きされた・・・・・・僕はもう一人でしかお寿司食べに行かない」
おどけで正明はバカにするようにそう言うと目を開けたまま死んでいる男を踏み台にしてテーブルに腰掛けると腰から青白い尻尾を出す。その姿は神秘的で、まるで猫が人間の姿を借りた様に映る。
「そんなもの、いくらでも自由に出来ますよ。それに、貴女の望むモノを手に入れる為の手助けにもなれますよ? それを蹴る程の愚か者ではないはず」
「愚かだよ。人殺してもそれを踏み台にしたり、その横で食い物の話する俺が賢く見えるのかよ? だとしたらテメェらは賢いが目は腐ってんな」
声が低くなる。
まるで猫科の猛獣が威嚇しているかのような威圧感がケンプファーの面々を包んだ。
「受けてくれますか? 死神の飼い猫」
「・・・・・・そうだな。話し合いの場を設けろ、官邸の1つや2つあるだろ? 居酒屋でも良いぜ?」
「それをお望みで?」
「俺が望んでいる物はテメェらにはわかんねーよ。でも・・・・・・甘いものは欲しいかな?」
声がふと元に戻る。
正明はそう言うと霧の中へと消えて行った。日時は勝手に指定して床へと熱で刻んで行った。
(1週間後のこの時間に)
夜風が吹いた
約束が通り抜けた
彼女は微笑んだ
嘘つき




