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碧い月、似ている二人 3

続きです!

あとがきの何だか中二チックなアレはそうですねなんちゃって次回予告です。元ネタ知ってる人は怒り狂うかも・・・・・・


 魔力強奪犯の写真が正明へと送られて来た。

 その姿は以前の貧相な仮面と最低限のアーマーなんて安いものじゃない、動き易さに重きを置いているがパワードスーツだ。確実に後ろ盾となる第三者が存在していると考察するのは当然だろう。

 正明はデバイスを閉じると、自分と色違いの仮面を着けた真紀に向き直る。


「真紀、なんで三神翔太郎を助けたの?」


 真紀は彼に向き直ると、白い仮面を外す。

 その顔は曇りの無い真っ直ぐな瞳をしていた。


「あの人は、力と戦っているから。狂っている自分と戦っている。私やお兄ちゃん、志雄さん、加々美さん、京子さん、アイリスさん、宗次郎さん、八雲さん、そして巧さんと同じ様に」

「真紀、聴いてくれ・・・・・・僕達、いや、真紀以外は良い奴じゃない。人殺しなんだ、この姿を見ろよまるで化け物だ」

「化け物じゃない! お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ! 優しくて、誰よりも弱かったけど、誰にも敗けなかったお兄ちゃんのままだよ!」

「翔太郎の姿に俺やみんなを重ねるな。奴と俺達は違う、俺達は他人の為に戦ったりしない。真紀、俺は君と一緒にいる・・・・・・ずっとお兄ちゃんのままだ。でも、俺も仲間達も化け物なんだ」


 真紀が大粒の涙を流す。

 正明の黒い仮面にヒビが入って崩れ落ちる。正明も同じように涙を流していた。


「私は、他人を助けたい。お兄ちゃん達みたいに! お兄ちゃんが化け物なら私も同じ化け物だよ!」

「違うんだよ! 俺は人を殺している! 真紀は俺達と一緒に戦ったらダメだ!」

「救いようない屑なんていくらでも殺せるよ! 私も、お兄ちゃん達と行く!」

「そんなふざけたこと二度と口にするな‼‼」


 正明は本気で怒鳴った。妹の口から人を殺したいなんて言葉は聴きたくないと言う思いがそうさせたのだ。今の正明はどんな人間でも震え上がるような鋭い眼つきで妹を睨み付けていた。


「っ! う、うぅ・・・・・・うわあああああ!」


 真紀はその場でへたり込むと、子供の様に大きな声で泣き始める。

 正明は彼女にこの世界に入って欲しくない。

 妹だけは人間として真っ当な人生を、良き人と出会ってその笑顔を人殺しの兄へではなく優しく思いやりのある人に向けて欲しい。

 兄が歩めなかった道を、正明は仲間達を奈落へと引きずり込んだ、沢山殺した、罪ある連中、時には親しい子供の親。罪なき人々の人生を狂わせた。

 そして、これからも狂わせ続ける。


「お兄ちゃん・・・・・・嫌だ、嫌だ! もう嫌だ、お兄ちゃんもいなくなるの? お父さんやお母さんみたいに!」

「いなくなったりしない。でも、君は別の道を行くんだ。殺しどころか、ケンカもろくに出来ない優しい君なら、僕達とは違う人生を送れる」


 正明は泣きじゃくる妹の頭を撫でる。その顔はいつもの正明の兄としての優しい顔に戻っていた。

 真紀はそれでも納得した顔はしてくれない。


「私達は、家族だよね?」

「家族だよ。でも、お兄ちゃんは間違えちゃったんだ・・・・・・もう引き返せない」


 正明は霧を発生させる。

 学校はまだ終わっていないが、真紀をWELT・SO・HEILENに連れて行く。真紀の精神状態は身体の不調とダイレクトに関係して来る。


「一つ頼みたいんだ、翔太郎君を見守ってくれないかな? 彼が危なくなったら助けてあげて。真紀の固有能力なら彼の力を抑え込めるから」


 真紀は黙ってうなずく。

 そんな彼女の額に正明はキスをする。真紀も同じように正明の額にキスをする。仲直りの合図だ。


「執事長、メイド長」

「「ここに、正明様」」

「真紀をお願い。行ってくる」


 正明は再び霧を発生させ、その中へと歩いて消える。その背中を真紀は濡れた右目で見つめていた。


「ねぇ、執事長」

「はい、真紀様」

「お兄ちゃんは、一緒にいるけど別の道って・・・・・・二人で一人なのに、違うって」

「真紀様、その答えはお兄様方の背中を見てお考えを・・・・・・真紀様なら、罪人なんぞ殺さずに別の視点で皆様を見ることが出来るはずです」

「・・・・・・執事長、私に戦い方教えて? 人殺しにはならないけど守られてばかりじゃ嫌だ」

「はっはっは、勇ましい方だ! それはメイド長にお任せいたしましょう。私だと、真紀様のおみ足で気絶するまで踏まれたい欲求に勝てそうにありませんので」


 笑顔でそう言う執事長はメイド長に甲板から海に放り込まれた。



 正明は仲間達が待つ場所に転移する。隠れ家的な酒場だが、今は全く使われいない場所だ。シャッター通りの一角にある臨時の会議室代わりの場所だ。

 そこには巧と志雄、そして宗次郎がいた。


「真紀ちゃんとケンカしたな? また手伝わせてって言われたのか?」


 宗次郎が心配そう顔で正明の頭を撫でて来る。


「うん、いつかは彼女は僕から離れないといけない。それに、みんなも真紀を殺人犯にしたい?」

「絶対嫌だぁぁぁぁぁ! あの子は汚れない天使なんじゃあああああ! 俺の癒し、可愛い妹分! もう俺なんか風呂まで見守りたいぐらいだ!」


 正明はその言葉を聴くと宗次郎の顔面に大き目の瓶を叩き付ける。その顔は殺意に満ちている。

 宗次郎は全くの無傷だが、そのままカウンターの裏へとひっくり返って行く。


「風呂? 真紀の全裸をそのクソみたいな目玉で見たなら俺は見過ごせないな」

「胸があって、下半身の装備がない所以外は正明だね」


 背後からの声に正明はため息を吐く。


「加々美、合法だからって」

「うへへへ、洗いっことかする仲だぜ! 寝る時に頭と腰を撫でると気持ちいいのか寝ちゃうんだよねあの子」

「腰なんか撫でやがって」

「お兄ちゃんも知らんのかえ?」

「知らないよ! 妹の身体を撫で回す屑な事はしないよ!」

「おでこにチューはするのに?」

「それは良いの、子供のころからしてるから。それに見た目的に汚くも無いし」

「ナルシストだね、でも一理あるよ。百合みたいで興奮する!」

「溶けろスケベ狼」


 正明はため息を吐く。

 先ほどまで真面目に妹を諭していたのに、今はまるで違う心模様となった事で逆に冷静になった様だ。仲間達はこれを狙ってお茶らけているのだろう。


「さて、本題に入りますよ?」


 志雄が軌道を修正すると、デバイスから何枚かの写真を空中に浮かべる。

 そこには先程見ていた魔力強奪犯の姿と、一人の女子高生の顔。一年前から何かと因縁のある奴、北条美樹の顔だ。


「この二人、お互いの事は知らないようですが・・・・・・彼女の実家は彼の北条グループ、パワードスーツが実用化されるにあたって多額の投資を行った大手魔具メーカーのトップです。上手く改造されていますが、魔力強奪犯の持つパワードスーツは北条グループのモノですね」


 カウンターから出て来た宗次郎はそれに合わせてデバイスを振るともう一つの資料を並べた。それは北条グループの生産しているパワードスーツの生産状況のリストだ。

 正明はそれをちらりと見るが、直ぐにその資料に自分のデバイスら情報を飛ばす。

 すると、生産状況と合わせて取り寄せられた原材料の入手ルートと使用状況を合わせたデータが一つになる。その画面にはシンプルに、調度パワードスーツ一つ分の材料のズレが見て取れた。


「ビンゴ! 正明も抜け目ないね!」

「千里眼は便利だね」

「八雲が会社に入り込んでいるから簡単に盗み取れたが」

「僕はアナログだけど、周りから洗ったよ。僕は時間が無かったからメイドと執事達を使ったんだけどね」


 正明は魔力強奪犯と二度目の対峙の際に、奴の顔にダメージを与えていた。だが、それでも奴は死ななかった。奴自身の成長かとも正明は感じていたが、見た目は変わらずとも装備が強化されていたのだ。そもそも奴が簡素ではあるがパワードスーツを着ていたことが引っかかっていた。

 だから彼はWELT・SO・HEILENの使用人を動かして探っていたのだ。パワードスーツに関わりのある企業の主な入手経路と、その使用状況。


「そして、北条美樹ですが。その父親と、魔力強奪犯の癒着が疑われますね」

「オレはとしても同じ意見だ。ハンゾーを使用人に化けさせて屋敷に放ったが、奴の思想や思考は歪んでいる。どうやら、死神の飼い猫が原因らしいが」

「は?」


 巧の言葉に正明は意味不明と言わんばかりの顔をする。

 北条グループの総帥なんか知り合いではない。


「数年前、自分を狙った殺し屋を一撃で殺したお前を異常な程気に入っていた。自分の思想にして、それを娘に押し付けるぐらいな」

「殺し屋? 数年前・・・・・・あぁ! あの僕をガン見してきた変態親父か! いきなり僕の靴を舐めて来たんだよ、すっごく気持ち悪かった!」

「靴を舐めた? くっ」

「なんだが、(美しい! 君は何者だ! 私も連れて行ってくれ、君になりたい!)って言って来たんだ。ヤダって言ったら靴を舐めて来て、そこから足にすがり付いて来たから気絶させて逃げたんだ。そうか、北条グループのトップだったんだ」


 志雄が無言でその男の顔をデバイスを振って出してくる。

 その顔を見ると、正明は全身の毛を逆立てる。


「足洗ってくる・・・・・・」

「いやっほおおおい!」

「いてっ!」


 正明が逃げようとするが、狼の姿になった加々美に押さえつけられてしまう。


「この、変態男の娘大好き薄い本皆勤賞おじさんが、今回の事件の裏で何やかんやとヤッているのは有り得るよね~」

「加々美、重い」

「ガブっ」

「ぎゃー! いたぁ!」


 頭を噛まれた正明はジタバタと暴れるが、事実今の加々美はかなり体躯のある狼になっているため事実重いのだ。その陰で、巧が苦しそうに壁にもたれかかる。

 宗次郎がカウンターに腰かけてその場にあった飲み物を手に取るとそれを巧へと投げ渡す。彼女はそれを受け取ると、少し笑ってそれを飲む。

 中身はアイリスが作った霊薬だ。


「悪い」

「礼はいらねぇよ。キツそうな顔してるからだ、タバコ切れたのか?」

「切れた、最悪な気分だったが少し落ち着いた」


 巧の瞳は紅く光っていた。

 その様子を見た正明は懐からタバコのカートリッジを取り出すと、加々美は身体をどかす。


「大丈夫?」

「ありがとう、早くして欲しいな・・・・・・くっそ」


 懐から魔導式のタバコを取り出すと、正明から投げ渡されたカートリッジをそれにはめると口に加えて吸い始めた。どうやらスキルによる発作は収まったのだろう。

 ミントのような香りが辺りに漂う。落ち着いたのだろう、巧は話し始める。


「なぁ、魔力強奪犯は北条美樹って奴の親父とつるんでいて、パワードスーツを貰って大立ち回り、しかも段々と強くなっている。オレの落ち着きがなくなったのも、もしかしたら翔太郎かそいつが」


 巧は魔力強奪犯や翔太郎と同じ神の血統、兄弟達の一人だ。

 彼女には兄弟達のスキルの覚醒や、能力の向上が解るらしい。

 正明はテーブル近くのソファに座り、小瓶を八本投げて空中に浮かべると一言。


「ゲームしない?」


 仲間達はその言葉に全員が意外そうな顔をする。

 宗次郎と志雄は情報をデバイスに仕舞い込んで、デバイスでここに居ない八雲、アイリス、京子に通信魔法を飛ばす。


「京子ですか? ゲームをするので(虚ろい)に来てください。アイリスと一緒に」

「よう、八雲! 聴いたか? 虚ろいに来てくれ、ゲームするから集合!」


 正明はニヤリと笑うとゲートを通って来た八雲、アイリス、京子に小瓶を投げ渡す。


「やっと完成した試作魔法術式のお披露目会兼事件の核心に迫っちゃおう大作戦開始!」



「お帰り、待っていた。君の事は今さっき知ったばかりだ・・・・・・そして、報告があってね。君には殆ど関係無い事か、何せ面も思えてないんだろ?」


 翔太郎を家に呼ぶ前の夜にそいつはそう言って屋敷のベランダで月明かりを浴びていた。凶兆と呼ばれる碧い月明かりを背にして、私を見つめるその瞳は気高い紅い光を放っていた。


「手荒な事をしたが、立場的に俺達は敵同士だった。親父は俺が帰って来た事に不満だったが」


 アンタ誰よ。

 私はそう言って魔法陣を向けた。それでも奴は身構えるような事はしなかった。


「負けたお前も親父は嫌っているだろうな。いや? 逃げ出したお袋に似ているお前を恨んでいるだけか。小さな男だが、俺には良いパトロンだな・・・・・・死神の飼い猫を捕まえて見せると、言ったら興奮して承諾してくれたよ」


 その言葉に私は違和感を覚えた。

 親父? お父様の事? お袋って、お母様? 私が幼い頃に離婚したと聞いていた。


「あぁ、そうだ。報告だったな、お袋がくたばった」


 は?


「は? じゃねーよ。俺と、お前を産んだあの淫売女がくたばったんだよ」


 何を言っているの? アンタは、何者よ!


「始めまして、美樹。俺の妹」


 強さの象徴であるはずの紅い瞳が、私の心臓を一瞬だけ確かに止めた。

 まるで氷の手で鷲掴みにされたように、私はその場を動けなかった。そうしていると、男の手から糸が飛び出して私を縛りつけると強引に私の身体は奴の目の前まで引き寄せられる。


「くたばったのは、語弊があったね。お前の母親は、俺が殺した」


 冷たい声に私は無意識に、翔太郎を思い浮かべていた。

 翔太郎も同じ目をしていたけど、こんな奴とは違う。確かに凶暴化するけど、熱を帯びた人間らしい感情の暴発だった彼とは違って冷たい殺意。

 その奥にあるのは何処までもまっさらな殺意だった。


「し、翔太郎」


 今は、彼に会いたい。

 でもお父様が、コイツが、私を縛りつける。

傲慢な顔はまやかし、彼女に継がれたものは何もない。

冷たい雨を蒸発させる程の激情は、曲がる事のない矛盾を孕んだ鉱物

童の遊戯が如く気まぐれで、彼が立ち上がる。

フェーズ1、完了・・・・・・


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