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成長型魔法使いと死神の飼い猫  作者: 稲狭などか
悪魔が死神と出会う時編
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第五話 勇者である

偉人は人格者か?

そんなことはあり得ない、そんな人間は歴史の中に存在しない。

人間は醜悪だ。結果を残せたかどうかだ。


「奥で何が起きているんだ!? この放送に何の意味があったんだ!?」


 俺は最下層のエリアへと飛行しながら隣を飛ぶ美樹へと叫んだ。


「何処からどう見ても挑発よ! 多分だけど、この放送で世の中の反応は変わるはずよ。死神の飼い猫が持つカリスマは凄まじいものがあるわ・・・・・・殺しは死神の飼い猫が粛清するから、過激な運動は起こらないと思うけど、世の中の殆どは魔法の才を持っていない人間よ。そんな連中が一斉に声を挙げたらって考えたことある!?」


 世論を動かす気なのか? そんなモノはいくらでも政府に握りつぶされる。だが、その思想は決して消える物じゃない。俺にはよくわかる、優等と劣等に切り分けられて見下されながら育った人間の気持ちが。親しい人間と歩いているだけで後ろ指を指されて、自由に気持ちを伝えあうことが出来ない。

 飼い猫は、正しいのか?


「それは、良い事じゃ無いのか? 少なくとも、差別が無くなるだろ」

「良い訳ないでしょ? 奴が言っていたことが現実になるわよ? 自分よりもはるかに劣る人間に生意気な口を利かれたら単純にムカつくでしょ? 殺人が多発するかもね、それが膨れ上がれば内戦にまで話が飛躍するかも」


 美樹の言葉に後を追ってくる軍人達も首を縦に振っている。

 だが、戦いは・・・・・・そう言う事か。


「そう言う事か、これが奴の宣戦布告。そうなる未来を予測して・・・・・・国と戦うつもりかよ」

「正確には、セフィラ全員ね。国のお偉いさんの武器はアンタ達の様な規格外の魔法使い、死神の飼い猫もお偉いさんは喉から手が出るほど欲しがっていた」

「その話は聞いている。奴は話を聞き入れることは無かった。脅しの為に殺しを働こうとした役人は、生きたまま張りつけられて、焼かれた」


 だが、何かが奇妙だ。

 まるで、これも何かの作戦の内の様な気がして、俺はパワードスーツのブースターを吹かしてスピードを上げる。

 かなり後ろの方だが、追いかけてきてくれている真紀の力をまた借りる事になるな。



「ふ、ふふっ・・・・・・僕はね、弱いんだよ」


 笑顔の男に正明はそう言うと仮面を被り直す。


「だからさ、仲間が必要だったんだ。この顔にも、結構助けてもらったよ可愛いと得な事が多くてね。常に怯えていたよ、打つ手が無くなれば殺される。死にたくない、まだ、死ねないって」


 その言葉に男の表情が曇る。


「君は、強いじゃないか? この俺に寵愛される資格を持って、更には身体に魔力が無いのに即死魔法を体得するなんて」

「解ってないな。僕は、打つ手が無くなると泣き叫んで命乞いをするような奴さ・・・・・・子猫より臆病な奴が、なんで笑っているんだろうね?」


 その瞬間に男の身体に魔法で構成された徹甲弾が撃ち込まれた。

 正明はすぐに空の小瓶を男の傷口に突き刺すようにめり込ませると、術式を発動させる。その小瓶は蒼い光を放つと大爆発を引き起こした。


「はははっ! 殺す方法はいくらでも思いつく・・・・・・が、これだけじゃ死なないのは解るよ」


 正明は後ろで滑空砲を構えている遠山タケルをちらりと見る。その隣には驚愕の表情を浮かべる華音の姿もある。いきなり隣の男が滑空砲を人間にぶっ放したのだから当然だが、それとは別に彼女は正明の頭上を見ていた。

 

「飼い猫さま! 大丈夫ですか!?」

「双葉か、見ていたのか?」

「いえ! この部屋には入れなかったので! いきなり結界が消えたのは何か理由が!?」


 正明は素顔を見られていない事を確認すると、八雲を見る。

 彼は倒れた状態でサムズアッブをする。示し会わせた訳ではないが、彼が張っていた侵入を妨害する結界を解除したのだ。


「放送を見せる訳にはいかないからね。邪魔するでしょ? でも、奴は」

「ふふっ、懐かしい・・・・・・遥か昔に、彼女にもこうされたよ。嬉しい、君はやっぱり彼女だ!」


 男が勢いよく起き上がる。彼の身体には重度の裂傷が起こるはずなのだが、急速に回復している様だ。魔法の産物なのだろうが、正明はその治り方に見覚えがあった。

 折れた骨、裂けた内臓、切れた血管が定位置に戻るように修復されて行く。

 ポーションの治り方と同じだが、奴は薬を使った気配は無い。


「・・・・・・成程、お前が元祖か」

「ん? この魔法を真似したのか? 凄い、流石は彼女と同じ君だ!」

「僕には出来ないよ、紹介しようか? 友人の」


 正明は軽い調子で小瓶を空中に放ると、小瓶は浮かんでいた透明な膜に入り込んだ。


「魔医学の兎、本名は言えないからご理解を」


 小瓶が入ったのはアイリスの固有能力であるシャボン玉だ。

 彼女のシャボン玉は、浮遊していくつも作り出せる特殊反応炉だ。その中に正明は小瓶に詰まっていたポーションを投げ込んだのだ。男が使いこなす回復魔法がポーションに組み込まれた術式と酷似しているのならば、反対の効力を持つ力を精製できると言う仮説だ。

 正明は小声で良く解らない言葉を呟く。正確にはポーションに使われている魔法の詠唱を逆再生した言葉を呟いているのだ。


「これは、特殊反応炉? へぇ、凄いね」

「ロール・プレイ・ゲーム」


 特殊反応炉は蒼い魔法陣となり、男の回復魔法を阻害した。その瞬間に正明の背後から志雄が飛び上がると男の顔面を殴り飛ばし、その先から走って来た加々美の速度を乗せた飛び膝蹴りと合わせて八雲の手斧がぶち当てられた。


「な、成程・・・・・・魔王が、パーティープレイね」


 更に、浮き上がった身体を宗次郎が矢で貫いて床に縫い付けられた彼に京子の薙刀が叩き付けられた。


「これでも死なない様ですね」

「タフ過ぎ! 人間じゃないでしょ!?」


 息を切らしながら志雄と加々美が男を睨み付ける。正明は両手を開くと、そこに二つのユニットを召喚するとそれを自分の頭上に投げ付ける。

 すると、それを簡単な仮面を着けた巧がキャッチしてドッキングすると紫電を放出する銃へと姿を変える。銃から放出されるエネルギーで耐空した状態で彼女は倒れる男に凄まじい威力の弾丸を発射する。


「撤退! ターゲットは!?」

「確保済み」


 アイリスはそう言うとグルグル巻きにされたおっさんを正明へとみせると霧の中へと放り込もうとするが、その時だった。


「飼い猫! そこまでだ! 話してもらうぞ、この茶番はなんだ!?」


 白に紅のラインが入ったパワードスーツ。まるで中世の騎士の様な装備に身を包んだ三神翔太郎がフロアに突入してきた。その後ろには軍人、警察までいる。


「抵抗はしない事ね! アンタたちの切り札は破壊したわ! 逆転は出来ないわよ!」


 北条美樹がライフルを構えて叫ぶ。

 

「それは、どうかな? 覚悟を決めろよ、正義の味方」


 正明は仮面の下で半泣きだが、声だけは毅然とした態度で全員を威圧した。

 それを見た仲間達は頭を抱えてハッキリとため息を吐いているのを正明は聴いた。


「悪いって!」

「帰ったら覚えてろ!」


 みんなを代表して宗次郎が叫ぶとほぼ同時に正明と翔太郎が激突した。

勇気ある人間は沢山いた

優しい人は大勢いた

強い人間もかなりいた

自分を犠牲にする者は英雄だった

だが、侮辱された


冷たい時代の亡骸に蝋燭を灯せ


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